雑誌「ネムキ」2009年7月号に「怪盗アルセーヌ・ルパン 八点鐘」掲載

JET氏による漫画化。今回は事件6「斧を持つ貴婦人」。
次号予告に第7話。

朝日新聞出版 最新刊行物:雑誌:ネムキ:ネムキ 2009年7月号
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=10480

フランスの固有名詞って難しいのかな。ルールチュは、そういう名前だと思えばいいけれど、フェリシエンヌがページめくるとフェリシアになっていたり、他にもあれこれおかしい。「クールブボワ」が「ワールブボウ」になってたりする。ちょっとしたまちがいさがしだ(笑)

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春野まこと「アルセーヌ・ルパン 緑の目の少女」

ポプラ社、2009年
アルセーヌ・ルパン 緑の目の少女 :春野 まこと,モーリス・ルブラン,南 洋一郎 | ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=86870040

□目次
緑の目の少女(14)


今風で読みやすくてよいと思うのだけれども、このシリーズはここでひとまず終わりらしい。

検索結果 | ポプラ社:『コミック版ルパン&ホームズ』での検索結果
http://www.poplar.co.jp/shop/kensaku.php?seriescode=8687&one_word=%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E7%89%88%E3%83%AB%E3%83%91%E3%83%B3%EF%BC%86%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA

この解説だったか、1冊前のだったか忘れたけれど、解説書がないから仕方がないとはいえ、理解されてない節がある。ルパンシリーズは電報の時代でもあり、電話の時代でもある。そういう科学技術の発展が感じられるところがよいのだ。


ポプラ社文庫「怪盗ルパン」シリーズ

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ルパンシリーズの初期翻訳

すべてを確認したわけではないので、誤りがあるかもしれない。

明治末から大正初めにかけて翻訳されたルパンシリーズは以下のとおりである。すべて英訳からの重訳と思われる。

No邦題翻訳者ルパンの名前備考原作
A泥棒の泥棒森下流仏楼有田ありた龍造りゅうぞう「サンデー」1909年(明治42)黒真珠(1-8)
B予告の大盗馬岳隠士
(堺利彦)
渡辺わたなべ金兵衛きんべえ
(単行本では
渡辺金弥)
「サンデー」1910-1911年(明治43-44)
万里洞、1911年(明治44)
(単行本では清風草堂主人名義)
戯曲アルセーヌ・ルパン(3)
ノベライズ版
C春日燈籠清風草堂主人
(安成貞雄)
有村ありむら龍雄たつお「やまと新聞」1912年(大正1)ユダヤのランプ(2-2)
D金髪美人清風草堂主人
(安成貞雄)
有村ありむら龍雄たつお明治出版社、1913年(大正2)金髪婦人(2-1)
E古城の秘密三津木春影仙間せんま龍賢りゅうけん武侠世界社、1912-1913年(大正1-2)813(5)
F大宝窟王三津木春影隼白はやしろ鉄光てっこう中興館書店、1912-1913年(大正1-2)奇岩城(4)
G金剛石三津木春影隼白はやしろ鉄光てっこう(中興館書店?)、1913年(大正2)金髪婦人(2-1)


A:泥棒の泥棒
副題がつき「巴里探偵奇譚・泥棒の泥棒」と紹介されている。ルパンシリーズ最初の翻訳(翻案)とされる。「黒真珠」の抄訳だが、筋自体は変わっていない。「有田龍造」がアルセーヌ・ルパンをもじったものであることに、異論はないだろうが、翻訳者の「森下流仏楼」の読み方および正体については確定していないようだ。安成貞雄ではないかという説、森下雨村ではないかという説。りゅうふつろうと読む説、るぶろうと読む説がある。

B:予告の大盗
馬岳隠士は堺利彦のペンネーム。「馬ヶ岳」という山の名前が由来らしい。ルパンの名前は「渡辺金兵衛」という、似ても似つかない名前になってしまった。

C、D:春日燈籠。金髪美人
「金髪美人」では奥付に安成貞雄の名があり、また、弟安成二郎の証言からも、「春日燈籠」「金髪美人」の訳者清風草堂主人は安成貞雄で間違いないと思われる。清風草堂主人というのは複数の人が使った共同ペンネームで、近代デジタルライブラリーに収録されている「露西亜探偵物語」では、中表紙に「サンデー記者 清風草堂主人編著」とあり、奥付に宮田暢の名前がある。この場合は、宮田暢が訳したのだろう。

E、F、G:古城の秘密、大宝窟王、金剛石
三津木春影の「古城の秘密」や「大宝窟王」に関しては、読者の証言が残っている(読んだと回想されている)ようだ。


作中では名前が変わっているが、「金髪美人」の序文では主人公の名前をそのまま音写している(「SFマガジン」2007年10月号に全文掲載)。序文の日付は大正元年11月で、上田敏が「アルセエヌ・リユパン」に言及したのは大正2年の末である。ほかに発見されなければ最初の例となるだろう。

其中にあって、斬然として頭角を抜くもの三人あり、コナン・ドイルのシャーロツク・ホームズ、モーリス・ルブランのアルセーン・リユーパン、チェスタートンの長老ブラウン是れなり。

しかし、序文でアルセーヌ・ルパンを褒めているものの、本書自体の原著者名を明記していない(中表紙が確認できないので未確定)ため、ルブランの作品であるとの認識は薄かったように思われる。作中に出てくるショルメスの名前は、シャーロック・ホームズである。「春日燈籠」では堀田三郎。


原作者の名前を明らかにして翻訳しているのは、この中では「古城の秘密」が最初だろう。中表紙に「仏国 モリス・ルブラン氏原著」とあり、また、押川春浪の序文に曰く、

本書は原名を『八一三』と称し、仏国の大家・モリス・ルブランの最近の著作に係る物、三津木君の軽快にして行届いた訳筆は遺憾なく其結構雄大の面目を踊らせている。

固有名詞を日本風に改めない翻訳は、後藤末雄・鵜末島保訳「変装紳士」(朝野書店、1916(大正5)年)での「リュパン」が最初らしい。(未見)


□参考文献・参考サイト
・伊藤秀雄『明治の探偵小説』双葉文庫、2002年
・長谷部史親『欧米推理小説翻訳史』双葉文庫、2007年
・安成二郎「探偵小説昔ばなし」(「宝石」1953年4月号)
・横田順彌「近代日本奇想小説史第63回 『ホシナ大探偵』と『呉田博士』ほか」(「SFマガジン」2007年10月号)
・森下一仁「〈新青年〉以前――若き日の森下雨村」
http://www2.ocn.ne.jp/~nukunuku/MyPage/USON0501.HTM
・新「アリス」訳解(リンク切れ)
 (「森下雨村と永代静雄」「《イーグル》のホームズ初期翻訳」というページを参考にした)
・国立国会図書館 NDL-OPAC:仏蘭西物語(近代デジタルタイブラリーへのリンクあり)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000512669/jpn
□関連記事
上田敏のルブラン言及

□2009/07/04
一部加筆

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雑誌「Agora」2009年6月号 特集記事「ルパンの住処へ」

ルパンの住処へ
P10-18(カラー9P)
文/ペリー荻野、撮影/松永学

この雑誌はJALカード会員誌で、一般書店では売っていないが、JALプラザに行くとカード会員でなくても買えた。

ノルマンディー特集。
のっけからエギーユと断崖が。右上の橋があって人がいるので、大きさのほどがよく分かる。いつ見ても、そのすごさに見とれてしまう。

エトルタの風景、エトルタにあるルパン記念館、セーヌ河、ジュミエージュ修道院など、写真が多く使われていて、文章はルブランのこと、エトルタのことなどが書かれていて内容もおろそかではない。ルブランのお孫さんのコメントも載っている。ラストページに写っている写真の奥に見えているのがアモンの門。


今回の記事ではポプラ社の南洋一郎版がベースになっているようだけど、ポプラ社版の「奇巖城」には「奇巖城」は出てこなかったりする。逆に、エギーユが「針の形」をしているというのは、ポプラ社版ぐらいでしか出てこない。あれは針の形ではなく、エギーユそのものだからエギーユなのだ。

それと、オペレッタって何かよく分かってないのだけど、2008年に上演されたオペレッタは1930年初演のもので、ルブランが1908年に観劇したのはオペレッタではなく普通の舞台ではないかと。また、アテネと付いていても同じ劇場とは限らない。


フランスでオペレッタ「銀行家アルセーヌ・ルパン」が上演予定(続報)
モーリス・ルブラン「戯曲アルセーヌ・ルパン」入手のこと

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雑誌「STUDIO VOICE」2009年7月号に「奇巌城」の朗読CDが付録

この号は相対性理論というバンドの特集で、付録のCDに、ボーカルの朗読が収録されている。作品は3つ。

「森の神」夢野久作
「奇巌城 アルセーヌ・ルパン」モーリス・ルブラン
「山のコドモ」岡本かの子

「奇巌城」は青空文庫版の朗読のようだ。「ルパンの再現」の章。再現は再び現れるの意味。

STUDIO VOICE ONLINE
http://www.studiovoice.jp/
雑誌「STUDIO VOICE」VOL.403 - 特集 相対性理論
http://www.fashionnews.jp/magazine/studiovoice/detail.php/245/

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創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」入手のこと

期間限定カバーを購入。偕成社アルセーヌ=ルパン全集やハヤカワ文庫などとは収録作品が違っていて、2作品と引き替えに、他社では「ルパンの告白」に収録されている「彷徨する死霊」が収録されている。この方の翻訳はあまり面白味がないなあと感じることもあるのだけど、「アルセーヌ」が「アルセーヌ」なところが好き。これは本当に重要ポイントだ。


 ぼくはしばらくじっとしていた。悲しいと同時に、しんみりした気分だった。それから、ためいきをついた。ガニマールはおどろいた。
「とにかく、まっとうな人間でないというのは困ったものじゃ……」(P26)

この口調だとガニマールが言ったことになるんでしょうが、本来ルパンが言ったセリフと解釈するほうが妥当でしょう。(このセリフが後々の作品で効いてくる)

「おい! おまえは、権助や太郎兵衛がこんな芝居を打てると思っていたのかい? 少なくともアルセーヌ・リュパン級でなくちゃやれないことだぜ(略)」(P173)

フランスに権助や太郎兵衛がおりますかいな(笑) 昭和の日本でも珍しかったろう。原文にあるのは「デュラン」「デュポン」というフランスではありふれた姓です。

「ディエップまで。ついでに、夜半の汽車で着くアンドロル夫妻と、彼らの娘とを迎えてつれてきます」(P214)

原文チェックはしていないけれど、解釈の誤りなんでしょう。後で出てくる娘さんはアンドロル夫妻の子ではありません。

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雑誌「Agora」2009年6月号に「ルパンの住処へ」掲載

JALカード会員誌の「Agora」2009年6月号に、「ルパンの住処へ」という特集記事が載っているようです。フランス・ノルマンディーを特集した記事のようです。

ロードスターとTMAXとミステリィな日常 奇巌城ってホントにあったの!
http://pie-pato-akira.blog.ocn.ne.jp/roadstertmax/2009/06/post_964c.html

『Agora』6月号アンケート
https://cr.jal.co.jp/question/jalcr/agora_2009Jun/agora_2009Jun.cgi
株式会社JALブランドコミュニケーション - 媒体ガイド - アゴラ
http://www.jalbrand.co.jp/adv/agora.html


調べてみたところ、「Agora」は当月中であればJALプラザ(有楽町、梅田)でも買えるという情報がありました。(未確定)

□2009/06/14追記
取り急ぎJALプラザで入手してきました。

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オーディオブック「怪盗ルパン対名探偵ホームズ」が制作中らしい

オーディオ・ドラマを聴くことが無いので、製品化されたときに気づかないかもしれないため、メモとして残しておきます。「怪盗ルパン対名探偵ホームズ」の読み収録が奥なわれたそうです。

今日の風 「怪盗ルパン 対 名探偵ホームズ 」収録@テアトルエコー
http://mishibach.exblog.jp/11164952/

原作 モーリス・ルブラン
脚色 雁田 昇
演出 岩澤 敏
音楽 三柴 めぐみ

安原義人さんのガニマール警部らしいです。(この一点だけで欲しいかも)


参考までに、同じくテアトル・エコーが制作に関わった作品である「どんぐりと山猫」の情報です。大体半年くらい掛かるということでしょうか。
今日の風 宮沢賢治 本読み・収録
http://mishibach.exblog.jp/8037108
【楽天ダウンロード】『注文の多い料理店』 『どんぐりと山猫』
http://dl.rakuten.co.jp/prod/800426956.html
宮沢賢治『『注文の多い料理店』 『どんぐりと山猫』』 | 試聴/ダウンロード | 音楽ダウンロード【OnGen】
http://www.ongen.net/search_detail_album/album_id/al0000182294/


ルパンシリーズからすでに2点オーディオブック化されているのは知っていますが、青空文庫の朗読なので今一つ期待できません。(「奇巌城」の翻訳は質が良くない)
【楽天ダウンロード】探偵小説アルセーヌルパン
http://dl.rakuten.co.jp/prod/800329351.html
【楽天ダウンロード】奇巌城 アルセーヌ・ルパン
http://dl.rakuten.co.jp/prod/800374090.html

「探偵小説アルセーヌルパン」(内容は「白鳥の首のエディス(6-7)」)は朗読を無料で公開なさっているところがあるので、そちらのほうがお勧め。
河野清人の思いつきボイス!:アルセーヌ・ルパン
http://www.voiceblog.jp/kiyo22/car7.html


青空文庫「探偵小説アルセーヌ・ルパン」の朗読版

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タイトルを変えてみた

また気分転換に「アルセーヌ・ルパン」ページタイトルを変えてみた。題して「龍蟠-Lupin-虎踞」。読みから言えば「Lupin-虎踞」とか。うーん、文字化けに見える(笑) 踞って滅多に見かけない文字だし、画数多い漢字とアルファベットの組み合わせがどうにも…。いずれにしても「りゅぱんこきょ」と読ませたい。これは小酒井不木の翻案物「蜀江の錦」でのルパンの名前から発想をいただいてます。
小酒井不木「ルパン物語」

「龍蟠虎踞」は「りょうばんこきょ」または「りゅうばんこきょ」と読みます。意味は次の通り。(「新漢語林」より)

【竜盤虎踞・竜蟠虎踞】(リョウバンコキョ/リュウバンコキョ)
竜がわだかまりとらがうずくまる。
 〔1〕 地勢のけわしいさま。
 〔2〕 英雄が一方にたてこもって勢力をふるうさま。

【竜盤・竜蟠】(リョウバン)
 〔1〕 竜がわだかまりひそむ。竜がとぐろを巻いている。
 〔2〕 転じて、英雄・豪傑が志を得ないで世にかくれているたとえ。
 〔3〕 地形が重なり曲がってけわしいたとえ。
 〔4〕 樹木の枝がわだかまり曲がった形容。
 〔5〕 草書の筆勢の形容。

【虎踞】(コキョ)
 〔1〕 とらのようにうずくまる。
 〔2〕 地勢が雄大なことの形容。
 〔3〕 怪石の形容。


なかなか面白い意味がありますね。面白いと言えばこの言葉にはこういう意味も。(「広辞苑 第六版」より)

わだかまる【蟠る】
たぶらかして自分の物にする。着服する。横領する。

余談。人から見れば強大な力を持っているので「勢力を振るう」に繋がるけれど、龍は天を翔けるものなので、本来の場所には無い=「世に隠れている」となるのでしょう。ここから余談で、川を登りきった鯉が龍になるのが「登龍門」。だからこどもの日にはこいのぼり。思えば鯉が空を泳ぐなんてファンタジック。


ここまでは言葉遊びとして、
じゃあ、アルセーヌ・ルパンを一文字で表すなら?
(ノ∀`)アチャー
かな。割と本気(笑)
初期のルパンは無邪気な邪気(矛盾する言い回し)とでもいいたいものを持っている。自分のやっていること、自分の住む世界を疑いもしていない。時代は移ろいゆくもの。若さもはかない。

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「TCA PRESS」のサイトで「A/L -怪盗ルパンの青春-」の壁紙を配布中

宝塚歌劇のフリーペーパー「TCA PRESS」のサイトで、2007年に宝塚で上演された「A/L -怪盗ルパンの青春-」の壁紙がダウンロードできます。ダウンロードにはフリーペーパーに載っているパスワードが必要です。2009年6月14日まで。

TCA PRESS|宝塚歌劇を映像と音楽で楽しむ方法を提案するフリーペーパー
http://www.tca-pictures.net/press/index.html

主演でラウル役だった大和さんは6月~7月頭の公演をもって退団なさいます。今年冒頭に知って驚いたのですが、もう退団公演なのですね。

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春野まこと「アルセーヌ・ルパン 奇怪な乗客/さまよう死神」

ポプラ社、2009年
アルセーヌ・ルパン 奇怪な乗客/さまよう死神 春野 まこと,モーリス・ルブラン,南 洋一郎 ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=86870030


□目次
奇怪な乗客…謎の旅行者(1-4)
さまよう死神…さまよう死霊(6-6)

面白くはあったんだけど、この2作ともキャッチーじゃないタイトルというかぴんとこないな。言葉からしても内容からしても。

この漫画版ではどちらもルブランが登場する。手元にないので確実ではないけれど、ポプラ社文庫版でも出てくる印象はない。聞き手というより解説を必要とする役がいないところがルパンシリーズの特性だと思うので、登場させるのは良し悪しがあると思う。その関係で解説で「ハートの7(1-6)」のネタバレをしているし。解説より漫画で読みたい。


検索結果 | ポプラ社:コミック版ルパン&ホームズ
http://www.poplar.co.jp/shop/kensaku.php?seriescode=8687

ポプラ社文庫「怪盗ルパン」シリーズ

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雑誌「ドラゴンエイジ」2009年5月号に漫画「影のレ・ヴォルゥ~仮面怪盗リュパン~」掲載

富士見書房
http://www.fujimishobo.co.jp/comic/

影のレ・ヴォルゥ~仮面怪盗リュパン~
作画:松本規之 原案・設定協力:渋川六歩

オリジナルらしい?

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1932年の映画「アルセーヌ・ルパン」 2

フルサイズを発見。

Arsene Lupin - AOL ビデオ
http://video.aol.jp/video-detail/arsne-lupin/526256295

元動画はここ
John Barrymore さんが投稿した動画 Arsene Lupin - MySpace Video
http://vids.myspace.com/index.cfm?fuseaction=vids.individual&videoid=53257774

1932年の映画「アルセーヌ・ルパン」

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創元推理文庫「怪盗紳士リュパン」の文庫創刊50周年記念限定カバー

2009年4月から1年間限定だそうです。店頭には3月下旬から並ぶそう。

東京創元社|文庫創刊50周年記念 期間限定カバー
http://www.tsogen.co.jp/wadai/2009_limited.html

うーん、西炯子さん嫌いじゃないけどどっかバランスおかしい。


□2009/04/18
コミックナタリー - 鶴田謙二と西炯子が文庫の表紙を描き下ろし
http://natalie.mu/comic/news/show/id/15390

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ショルメスの復讐(その3)

※以下の文章は「奇岩城(4)」「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」の内容に触れています。※


「奇岩城」については、どうしても翻訳の問題に触れざるをえない。先に引用したハヤカワ文庫版のP281ー282は、ヴァルメラと言う名の説明が省略されていないのはいいのだけど、一目惚れだったとするのは、好きだから助けた(そうでなければ助けなかった)と受け取られかねないのが…。ルパンがすべてを擲ってもいいと思うほどの女性なのだから利己的な印象を避けているはず。

冒頭で引用したシーンも、翻訳によりずれがある。

ここでホームズは、うかつなことをしてしまった。復讐の状態に酔っていたので、ルパンの悪事をあばきたててから、レーモンドのおどろき悲しむようすを、意地わるく見やったのである。この一瞬のすきに乗じたルパンは、すかさず発砲した。(偕成社アルセーヌ=ルパン全集「奇岩城」P340)

ホームズはそこでミスを犯した。復讐心にかられるあまり、レイモンドのほうにちらりと目をやってしまったのだ。自分が暴きたてた話に、彼女がさぞかしショッックを受けただろうと思って。ルパンはその隙を見逃さず、すばやく銃を撃った。(ハヤカワ文庫「奇岩城」P316)

Sholmes eut un tort. Emporte par son desir de vengeance, il regarda Raymonde, que ces revelations frappaient d'horreur. Lupin profita de l'imprudence. D'un mouvement rapide, il fit feu.

原文には「意地わるく」に相当する副詞句は見当たらないし、ショルメスが何を思ったかは書かれていない。復讐ということと、レイモンドを見る行為がつながらないと感覚的に思ってしまったのじゃないかと思う。


偕成社版では、ショルメスの行為を「意地わるく」と受け取ったとしたら、それはボートルレが受け取ったことになけれど、ボートルレはどちらの味方でもない。ハヤカワ文庫版では、ほかのシーンではボートルレが見たショルメスや、報道などで伝え聞いたショルメスしか出ていないのに、ここでショルメスの内面が分かるのはおかしい。夫婦である以上どちらかがダメージを負うともう片方も負ってしまうことは避けられないが、復讐はあくまで(レイモンドが聞いている事を前提として)ルパンに向けられた物と考えるべきだと思う。

しかしそういう御託は抜きにしても、ショルメスが底意地悪そうに思えてしまうのが嫌だ。ハヤカワ文庫版も偕成社版も大いに参考にさせてもらっているけれど、人に薦めたくないと思うのにはこれで十分。他に薦められる翻訳があればよいのだけれど、現状ではないと言わざるを得ない(このシーンを一旦脇においてもやはり不満がある)。「奇岩城」は一部省略された短縮版のテキストを元に翻訳されているものが多く、本来のテキストから翻訳されていると思われるのは岩波少年文庫版、ハヤカワ文庫版、偕成社版の3つしかない為だ。私自身は岩波少年文庫版と集英社文庫版(底本は短縮版)が好きだけれど、でもやはり足し引きのない翻訳が読みたい。


「奇岩城」は一人称小説ではないが、ボートルレが視点人物となっていて、ボートルレが知らないこと、興味がないことの情報がきわめて少ない(例外は冒頭と会見の場面で、冒頭シーンは捜査資料を元に再現できる。「奇岩城」は関連資料やボートルレの証言を元に「わたし」が書いたと仮定すると分かり易いと思う)。ボートルレを視点にすえたのは、ルパンの心情を最後まで隠しておきたかったからだ。ボートルレからは、ルパン、ヒロイン、ショルメスの3人の心情は見えない。ルパンもヒロインの気持ちは分からない。しかも永久に分からなくなってしまう。結局冒険を棄てきれなかったルパンへの戒めであったはずなのに、「813(5)」でも同じ轍を踏んでいるところがルパンらしい。


前→ショルメスの復讐(その2)

※以上の文章は「奇岩城(4)」「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」の内容に触れています。※

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ショルメスの復讐(その2)

※以下の文章は「奇岩城(4)」「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」の内容に触れています。※


ルパンがレイモンドに名前を隠していたと断定して言うのは難しいけれど、それが伺えるシーンがある。

「まったく、君のおかげなんだよ、ねえ、ボートルレ君。もちろん、レイモンドとわたしとは、最初出会った日から愛し合っていたんだよ。完全無欠にね……レイモンドの誘拐も監禁も、うそ八百、お芝居だったのさ。それも、みんな、わたしたちが愛し合っていたからなんだ……しかし彼女は、わたしも同じだったが、偶然に左右されるような一時的なはかない関係でふたりがむすばれることをゆるせなかったのだ。だから、ルパンにとっては、事態は解決できないものだった。しかし、わたしがルイ・ヴァルメラにもどれば、解決できないものでもない。そこでわたしが思いついたのは、君は追跡の手をゆるめず、あのエギーユの城館を見つけることまでしてしまったから、ここはひとつ君の強情なところを利用してやれ、ということだったのだ」
「それにぼくのあほうなところも利用してやろうと……」
「とんでもない! あれにひっかからないやつがいるものかね?」(岩波少年文庫P340)

「ヴァルメラに戻れば」となっているのが重要だと思う。このルパンのセリフは原文では次のようになっている。

- Oui, grace a vous, mon cher ami. Certainement, Raymonde et moi, nous nous sommes aimes le premier jour. Parfaitement, mon petit... L'enlevement de Raymonde, sa captivfte, des blagues, tout cela: nous nous aimions... Mais elle, pas plus que moi, d'ailleurs, quand nous fumes libres de nous aimer, nous n'avons pu admettre qu'il s'etablit entre nous un de ces liens passagers qui sont a la merci du hasard. La situation etait donc insoluble pour Lupin. Mais elle ne l'etait pas si je redevenais le Louis Valmeras que je n'ai pas cesse d'etre depuis le jour de mon enfance. C'est alors que j'eus l'idee, puisque vous ne lachiez pas prise et que vous aviez trouve ce chateau de l'Aiguille, de profiter de votre obstination.

フランス語はよく分からないが、ヴァルメラという名前に掛かる部分「que je n'ai pas cesse d'etre depuis le jour de mon enfance」があるが、ここを活かして訳しているのは見た限りハヤカワ文庫しかない。(横にそれるけれど、ボートルレのことをmon cher ami<私の親友>にmon petit<私のおちびさん>呼びしている。えらくご機嫌らしい。)

「本当に、きみのおかげだよ。そうとも、レイモンドとわたしは、お互いひと目で恋に落ちたんだ。心から愛し合ったのさ……彼女を誘拐したのも、閉じ込めておいたのも、みんな偽装だったんだ。わたしたちは、本当に愛し合っていたんだから……けれどいくら自由に愛し合えても、二人の関係がなりゆきまかせのはかないものになるのは、わたしもレイモンドも耐え切れなかった。ルパンにとってはどうしようもないことだが、ルイ・ヴァルメラに戻れば話は違う。子供のとき以来ずっと、ヴァルメラとして暮らしてきたんでね。そこでわたしは思いついたんだ。きみは追跡の手をゆるめず、ついに<<針の城>>を見つけ出した。だからその粘り強さを、逆に利用してやろうってね」(ハヤカワ文庫「奇岩城」P281ー282)


この場にいるのがボートルレだけなら「ヴァルメラになってしまえば」と言っても構わなかったはずだ。わざわざ「ヴァルメラに戻れば」といい、子供の頃からずっとヴァルメラだったと言っているのはそばでレイモンドが聞いているからだ。ヴァルメラという名前が偽名であることをレイモンド隠すのは当然のことで、ルパンが名乗っているのが偽りの名前なら、レイモンドも偽りの名前を負っていることになるからだ。自分が名乗っている名前は夫の名前ではない。本来の名前の主は死んだか、失踪したか…普通に生きてきた女性にとっては恐ろしい事実だろう。そのうえ夫に嘘をつかれていたこと自体ショックだと思う。

だからショルメスは二人が聞いている場面で暴露したのだ。ルパンが嘘つきで、他人の名を騙って生きているというのはルパンにとってもショルメスにとっても当たり前のことなのであえて言う意味はない。ボートルレの前でも同じこと。ルパンの傍らにいる老女が長年の共犯者だという事実も、衝撃を受けるのはレイモンドしかいない。ショルメスの復讐は、ルパンの計画を壊し、今度こそ警察に連行することが目的だったのだろうと思う。


ルパンがショルメスの暴露で「おしまい」だという気持ちになったのだろう、ヴィクトワールのことを名前で呼んでいる。その前シーンではfemme(女、女の人)と言っている。レイモンドとショルメスの手前、名前を呼ぶわけにも、母と呼ぶわけにもいかない。

そのとき、大きなさけび声が空気をつんざいた。レイモンドが泣き声で言った。
「お母さまよ……声でわかります……」
ルパンはレイモンドにとびつき、はげしい情熱にかられて彼女を引っぱりながら、言った。
「いこう……にげよう……おまえから先に……」
しかし、すぐさま狼狽し、うろたえながら、彼は足をとめた。
「いや、それはできない……卑劣だ……ゆるしてくれ……レイモンド……あそこに、かわいそうな母がいるんだ……ここで待ってておくれ……ボートルレ君、レイモンドのそばにいてやってくれたまえ」(岩波少年文庫P376-377)

この「かわいそうな母」もpauvre femmeとなっている。同じ女性、つまりヴィクトワールのことを、レイモンドはta mere(あなたの母)と認識している、


ルパンにとってヴィクトワールは下にも置かぬ扱いで敬うべき母親ではなく、命令下し有無を言わさず従わせることができる手下だ。ヴァルメラが本名でヴィクトワールが母親だとレイモンドに思わせていたことは確かだけれど、それをそのまま口にしていたかは別でヴァルメラは子供の頃から~と言っているように、どこか逃げ道を作っていた。しかし嘘は嘘であり、嘘の上に築かれた結婚が長続きするはずもなく、まして「レイモンドに見つめられても、顔を赤らめずにすむ」未来など来るわけがない。

「(略)エギーユ・クルーズとは、つまり冒険そのものなのだ。だから、それがわたしのものであるかぎり、わたしは冒険家なんだ。エギーユ・クルーズを返してしまえば、いっさいの過去はわたしから切りはなされ、そして未来が始まるのだ。たとえレイモンドに見つめられても、わたしが顔を赤らめないですむ、平和と幸福にみちた未来がはじまるのだ……」(岩波少年文庫P354。引用時に一部表記を変更)

別人に成りすましたのも、ボートルレを騙してまでも結婚にこぎつけたのも、レギーユ・クルーズを棄てようとしたのもすべてレイモンドのため。そこにルパンのどこかずれた感覚がある。


前→ショルメスの復讐(その1)
次→ショルメスの復讐(その3)

※以上の文章は「奇岩城(4)」「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」の内容に触れています。※

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ショルメスの復讐(その1) - 奇岩城(4)

※以下の文章は「奇岩城(4)」「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」の内容に触れています。※


「奇岩城」の中盤でルパンに恥を書かされたショルメスは、ラストでヴィクトワールを捕らえ、ルパンを家の前で待ち構える。

ホームズがせせら笑った。
「これに手を出す権利はないと言うんだろう? さあ、さあ、じょうだんはもうたくさんだ! おまえはヴァルメラという名でもルパンという名でもない。どれもこれも、ぬすんできた名前だ。シャルムラースという名をぬすんだと同じことだ。おまえが自分の母親だと言っているこの女は、おまえの育ての親で、古くからの共犯者の、ヴィクトワールだ……」
このとき、ホームズがへまをやった。復讐したい欲望に夢中になり、思わずレイモンドをちらと見てしまったからだ。レイモンドは、ホームズの暴露した事実におびえてしまったのだった。ルパンはこの一瞬のすきを逃さなかった。目にもとまらぬ速さで発砲した。(「へま」に傍点。岩波少年文庫「奇岩城」P379ー380)


ここで復讐とは何を指すのか、どうして復讐したい欲望がレイモンドを見ることに繋がるのか、一見分かりにくい。結論から言ってしまうと、直前のセリフに大いに関係すると思う。「ヴァルメラもルパンもすべて盗んできた名前であり、母親だと言っている女は古くからの共犯者だ」ということは、ルパンがレイモンドに隠していた事実だと思う。このセリフは、ルパンに言ったものであり、レイモンドに聞こえるように言ったものなのだ。


次→ショルメスの復讐(その2)

※以上の文章は「奇岩城(4)」「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」の内容に触れています。※

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「三十棺桶島」の漫画化が進行中らしい

フランスの漫画家が「三十棺桶島(10)」の漫画を執筆中のようです。2010年の出版予定があるとか。120ページあって、かなり原作に忠実そうです。

L'ile aux Trente Cercueils(フランス語)
http://lizano.canalblog.com/archives/2007/08/27/5654281.html
mise a jour de debut fevrier 2009. - marc lizano(フランス語)
http://lizano.canalblog.com/archives/2009/02/06/5621153.html


「三十棺桶島(10)」は映画の企画もあります。
「三十棺桶島」が映画化か


□2009/06/13
Riff Rebという漫画家の手によるピエール・マッコルラン原作「金星号航海記」の漫画が出版されたようです。「三十棺桶島」も同じレーベルから出版予定です。他に予定されているタイトルは、白鯨(メルヴィル)、モヒカン族の最後(クーパー)、賭博者(ドストエフスキー)、不思議の国のアリス(キャロル)など。

A bord de l’etoile Matutine Mediapart(フランス語)
http://www.mediapart.fr/club/edition/comic-strip/article/300509/bord-de-l-etoile-matutine
Soleil Prod. - Focus...(フランス語)
http://www.soleilprod.com/focus%7C13%7CNoctambule_une_nouvelle_collection_voit_le_jour_
出版予告のPDF(フランス語)
http://www.soleilprod.com/public/noctambule/noctambulepreviews.pdf

「金星号航海記」は国書刊行会から邦訳が出版されています。
国書刊行会:文学の冒険 Comtemporary Writers
http://www.kokusho.co.jp/series/bouken3.htm
オンライン書店 本やタウン 本 恋する潜水艦/ピエール・マッコルラン、大野多加志
http://www.honya-town.co.jp/hst/HTdispatch?nips_cd=9973584600

マッコルランは「人でなしの女」という映画の脚本を担当したようです。この映画にはルブランの妹ジョルジェット・ルブランが出演しています。
ピエール・マッコルラン のプロフィール - allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=22865

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演劇ユニットio「バーネット探偵社」感想

演目は「水は流れる」と「偶然の女神」(って言ってたと思う)。上演時間は1時間10分くらい。


前にも上演したことがあっての再演版らしい。原作は「バーネット探偵社」中の短編「滴る水(15-1)」と「偶然の奇跡(15-6)」。セット替えがないように工夫されていた。

ベシューがあほかわいかった。バーネットは普通に不遜な奴だった。難しい役柄だと思うのだけど、指先にも気を使って演じているのが分かった。だけどセリフとちっちゃいけませんやね。他の役者さんもこの点ちょっと残念だったな。でもバーネットとカゼヴォンとの対面も緊張感があったし、新鮮で面白かった。


「バーネット探偵社」上演予定

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雑誌「レクチュール・プール・トゥース」

「レクチュール・プール・トゥース」が、フランス国会図書館のCallicaに収録されているのを発見。「バーネット探偵社」中の短編「十二枚の株券(15-5)」と「偶然の奇跡(15-6)」を読むことができる。

Catalogue Bn-Opale Plus - Notice bibliographique - Lectures pour tous (Paris)(フランス語)
http://catalogue.bnf.fr/ark:/12148/cb32805602k/PUBLIC
BnF - Lectures pour tous (Paris). 1898-1971. (gallica)(フランス語)
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/cb32805602k/date
Gallica consultation Lectures pour tous (Paris) - 1898-1971 (gallica2)(フランス語)
http://gallica2.bnf.fr/ark:/12148/cb32805602k/date


□関連作品

発行日作品No.作品名補足備考
1927.1015-1滴る水Gallica未公開
1927.1115-5十二枚の株券
1928.0115-6偶然の奇跡
1936.03-闇の中の男(未邦訳)ピエール・L・パロ作。「赤い数珠」を元にした3幕の戯曲。1935年9月初演
1936.04-闇の中の男(未邦訳)同上Gallica未公開
1936.05-闇の中の男(未邦訳)同上Gallica未公開
1936.06-闇の中の男(未邦訳)同上Gallica未公開


「レクチュール・プール・トゥース」は1898年創刊のアシェット社発行の雑誌で、1939年(※)に雑誌「ジュ・セ・トゥ」(ルパンシリーズの初出誌)を吸収している。雑誌名は「みんなの読み物」というくらいの意味だろうか。

※前年に「ジュ・セ・トゥ」創刊者のピエール・ラフィットが亡くなっている。
Pierre Lafitte - Wikipedia
http://fr.wikipedia.org/wiki/Pierre_Lafitte


雑誌「ジュ・セ・トゥ」について
雑誌「ジュ・セ・トゥ」目録

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「バーネット探偵社」上演予定

詳細はよく分からないのですが、こんな情報がありました。

舞台告知です|TEAMラフ~ラフな人々~
http://ameblo.jp/team-laugh/entry-10197095708.html

演劇ユニットio Present's 2nd Stage
「バーネット探偵社」
原作/モーリス・ルブラン
脚本/西田幸平

●日時
2月
14日(土)14時/18時
15日(日)13時/17時

●会場
しもきた空間リバティ


しもきた空間リバティ|スケジュール2009.2
http://www.liberty-feel.co.jp/cgi-bin/kuukann/sche/schedule.cgi?ShowYear=2009&ShowMonth=2


最近ちょこちょこと演劇の情報がありますね。

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春野まこと「アルセーヌ・ルパン 怪盗紳士」

ポプラ社、2009年
アルセーヌ・ルパン 怪盗紳士 春野 まこと,モーリス・ルブラン,南 洋一郎 ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=86870010

□目次
大ニュース・ルパン捕わる…アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)
悪魔男爵の盗難事件…獄中のアルセーヌ・ルパン(1-2)
ルパンの脱走…アルセーヌ・ルパンの脱走(1-3)

ポプラ社から発売の「コミック版 ルパン&ホームズ」と題するシリーズの第1冊目。ハードカバーでしっかりした作り。「アルセーヌ・ルパンの世界」として、用語辞典、年表、解説、参考文献が付いている。ポプラ版南洋一郎作が原作だけれど、参考文献には偕成社アルセーヌ・ルパン全集と岩崎書店アルセーヌ・ルパン名作集の名前も挙がっている。

表紙は不安だったけど、読んでみるととっつきにくくない絵だと思う。ただ見かけ若くて年齢が読めない。

年表はポプラ社独自のエピソードもはいっているかも。ガニマールと決闘ってどこに? 年代自体は通例のものからはずれるものではない(ベシュー三部作の後半2つは第1次世界大戦前とするか後とするか両説ありうるので)。「古塔の地下室」って「古塔の地下牢」よね。


以下続刊予定
刊行予定 コミック ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/korekara/comic/index.html
検索結果 | ポプラ社:コミック版ルパン&ホームズ
http://www.poplar.co.jp/shop/kensaku.php?seriescode=8687

ポプラ社文庫「怪盗ルパン」シリーズ

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二階堂黎人「カーの復讐」

講談社ミステリーランド、2005年11月
BOOK倶楽部:カーの復讐
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=270577X

□概要
エコー・ド・フランスの編集長を務めるルパンは、「ホルスの眼」という古代エジプトのメダリオンを狙うが、メダリオン発掘者の城で殺人事件に遭遇する。

□メモ
正式名称は「カーの復讐」だが、カバーの箱には「怪盗ルパン カーの復讐」とある。ジュドウィ保安部長はデュドゥイか。

□感想
総じて翻案物ルパンの雰囲気がよく出てたと思う。しかし謎解きのシーンはいただけなかった。どうして人を集めてその前で暴くのかが分からない。それはルパンのやり方ではないし、裁かれるべき犯人のように思えなかった。

文章は少しとっつきにくいけれど、同氏の作「ルパンの慈善」より読みやすかった。この事件は「ハートの7」よりあとで「金髪婦人」より前あたりか。

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「令嬢たちの部屋」の伝説

「令嬢たちの部屋」を詠ったモーパッサンの詩があるらしい。荒々しい波が打つ崖の岩。令嬢たちの部屋と言う名前。そういうところが想像力を刺激するのかも。

モーパッサン 他詩編
http://www.litterature.jp/maupassant/poeme/autres.poemes.html#legende
空洞の針 - えとるた日記
http://d.hatena.ne.jp/etretat1850/20081124#p1


この「令嬢たちの部屋」については以前調べようと思って中途になってしまって…。
昔ある姉妹が領主よって囚われの身となってしまった(というような伝説があるらしい。悪い領主の名前はフレフォセ砦のフレフォセ。

histoire-d-etretat(フランス語)
http://www.etretat-info.com/divers/histoire-d-etretat.htm
Office de Tourisme d'Etretat - Legendes(フランス語)
http://www.etretat.net/office_de_tourisme_etretat/pages/culturelle_etretat_lege


モーパッサンとエトルタ
「奇岩城」探求(その12) 100年前

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森元さとる「mystery classics 甦る名探偵達」アルセーヌ・ルパン編

古典ミステリーを紹介するシリーズで、アルセーヌ・ルパン物を中心に収録した単行本が発売されている。解説は日下三蔵氏。

巻数タイトル作品No.底本
1赤い絹の肩掛け6-5創元推理文庫「ルパンの告白」
バカラの勝負15-3偕成社アルセーヌ・ルパン全集「バーネット探偵社」
テレーズとジェルメーヌ12-3偕成社アルセーヌ・ルパン全集「八点鐘」
2太陽の戯れ6-1創元推理文庫「ルパンの告白」
十二枚の株券15-5偕成社アルセーヌ・ルパン全集「バーネット探偵社」
3白鳥の首のエディス6-7創元推理文庫「ルパンの告白」
雪の上の足あと12-7偕成社アルセーヌ・ルパン全集「八点鐘」


<すべての収録作品>

  • 1巻
    1. 赤い絹の肩掛け
    2. バカラの勝負
    3. テレーズとジェルメーヌ
    4. 七人のきこり
      ヘスキス・プリチャード(探偵:ノヴェンバー・ジョー)
  • 2巻
    1. 太陽の戯れ
    2. ライオンの微笑
      トマス・W・ハンシュー(探偵:四十面相のクリーク)
    3. 十二枚の株券
    4. ノトランプ
      ガストン・ルルー
  • 3巻
    1. 白鳥の首のエディス
    2. 雪の上の足あと
    3. ポンティング氏のアリバイ
      オースチン・フリーマン(探偵:ソーンダイク博士)
    4. オスカー・ブロズキー事件
      オースチン・フリーマン(探偵:ソーンダイク博士)


<既刊>
mystery classics 甦る名探偵達|講談社コミックプラス
http://kc.kodansha.co.jp/content/top.php/1000002500
mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(1) 森元さとる 講談社
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=370985X
mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(2) 森元さとる 講談社
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=3711250
mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(3) 森元さとる 講談社
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=371179X

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漫画「アルセーヌ・ルパン 緑の目の少女」発売予定

ポプラ社から刊行の「コミック版 ルパン&ホームズ」。ルパンもの3冊目のタイトルは「緑の目の少女」だそうです。2009年2月発売予定で、作画は春野まこと氏。

刊行予定 コミック ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/korekara/comic/index.html


漫画「アルセーヌ・ルパン 怪盗紳士」発売予定

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森元さとる「ミステリー・クラシックス」アルセーヌ・ルパン編(3)発売予定

「マガジンGREAT」連載の漫画で、ルパンものを集めた3冊目が発売予定。おそらくルパンもの2作と、他作家の作品が2作収録されると思います。

mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(3)|講談社コミックプラス
http://kc.kodansha.co.jp/product/top.php/1234605697
発売日:2009年01月16日発売予定

Amazon.co.jp: mystery classics甦る名探偵達 アルセーヌ・ル (3) (月刊マガジンコミックス) 森元 さとる 本
http://www.amazon.co.jp/dp/406371179X


マガジンGREATのサイトがリニューアルされたようです。
月マガGREAT|講談社コミックプラス
http://kc.kodansha.co.jp/great

<既刊>
mystery classics 甦る名探偵達|講談社コミックプラス
http://kc.kodansha.co.jp/content/top.php/1000002500
試し読み|mystery classics 甦る名探偵達|講談社コミックプラス
http://kc.kodansha.co.jp/trial_reading/trial_list.php/1000002500

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「怪盗ルパン・満州奇岩城篇」上演予定

2009年3月11日~16日に「怪盗ルパン・満州奇岩城篇~川島芳子と少年探偵団~」が上演予定だそうです。数年前に初演された舞台の再演です。

月蝕歌劇団
http://page.freett.com/gessyoku/

怪盗ルパン・満州奇岩城篇
~川島芳子と少年探偵団~

作・演出◎高取英 音楽◎J・A・シーザー
3月11日(水)→3月16日(月)
ザムザ阿佐谷

ザムザ阿佐谷はラピュタ阿佐ヶ谷という映画館の建物にある劇場です。(ラピュタにはヶがついてザムザにはつかないとはややこしい)
SAMSA ASAGAYA
http://www.laputa-jp.com/zamza/main/index.html

今回の公演は第6回杉並演劇祭参加作品だそうです。
杉並区文化・交流協会:第6回杉並演劇祭の出演者とエッセイの募集情報
http://www.sugibun.com/event/suginamiengekisai_6.html


数年前の初演について触れているページ
名張人外境番犬情報
http://www.e-net.or.jp/user/stako/BA/banken-2001.html
m @ s t e r v i s i o n stage reviews
http://www.ne.jp/asahi/hp/mastervision/stage.html
唐沢俊一ホームページ 日記 2001年 05月 28日(月曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010528000000.html

いろいろなネタが織り交ぜられているようでちょっと気になる。


□2009/01/31
公式サイトにポスター用イラストが掲載されています。

□2009/02/01
月蝕歌劇団 09年3月連続公演第2弾『怪盗ルパン・満州奇岩城篇―川島芳子と少年探偵団―』/第6回杉並演劇祭参加作品
http://www.laputa-jp.com/zdata/data/samsa/090311.html

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1938年の映画「帰ってきたアルセーヌ・ルパン」(仮題)

予告編を発見。
YouTube - Arsene Lupin Returns - Original Trailer 1938(映像は英語)
http://jp.youtube.com/watch?v=FRJ-mI3giuw

この映画は日本では公開されていないようだ。アルセーヌ・ルパンというキャラクターを借りたオリジナル作品で、ある日盗難現場ですでに死んだとされていたアルセーヌ・ルパンのサインが発見され、FBIの捜査官が犯人を追うという話。
Arsene Lupin Returns (1938)(英語)
http://www.imdb.com/title/tt0029884/
Arsene Lupin Returns(英語)
http://www.doctormacro1.info/Movie%20Summaries/A/Arsene%20Lupin%20Returns.htm
Arsene Lupin Returns - Trailer - Cast - Showtimes - NYTimes.com(英語)
http://movies.nytimes.com/movie/83992/Arsene-Lupin-Returns/overview
Jamd - Arsene Lupin Returns(英語)
http://www.jamd.com/image/g/3267432
Arsene Lupin Returns (1938) Overview(英語)
http://www.tcm.com/tcmdb/title.jsp?stid=1201


YouTubeの映像の最初に現われるロゴに、TCMとあるが、これはアメリカの、クラシック映画の専門チャンネルらしい。1932年の映画「アルセーヌ・ルパン」ともども何度か放映されたことがあるようだ。羨ましい。

TCM Turner Classic Movies(英語)
http://www.tcm.com/
Turner Classic Movies - Wikipedia, the free encyclopedia(英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/Turner_Classic_Movies
ターナー・ブロードキャスティング・システム - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0


1932年の映画の一部が見られる
Arsene Lupin (1932) - John Barrymore(映像は英語)
http://jp.youtube.com/watch?v=fLCWkAzxolU

Arsene Lupin (1932)(英語)
http://www.imdb.com/title/tt0022639/
Arsene Lupin (1932) Overview(英語)
http://www.tcm.com/tcmdb/title.jsp?stid=24


1932年の映画「アルセーヌ・ルパン」

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矢作俊彦「悲劇週間 SEMANA TRAGICA」文庫化

文藝春秋|悲劇週間(矢作 俊彦)
http://www.bunshun.co.jp/book_db/7/69/10/9784167691035.shtml
Amazon.co.jp: 悲劇週間―SEMANA TRAGICA (文春文庫) 矢作 俊彦 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4167691035

文庫化されたら買ってもいいかなと思ってたのだけど、大台越え…(1000円)。
前に読んだときは最初のあたり分かりにくくて、途中からすいすい読めて、ラストのあたりまた分かりにくくなった、という印象だった。1910年代のメキシコという普段なじみのない時代がメインなので馴染みにくいというのがあるかもしれない。

詩人の堀口大學が主人公。ルパンシリーズの翻訳も手がけた人でもある。
作中でてくるある人物は要注目かなと。その名前を名乗っている意味を考えるとじーんとくる。生き様とか心中とか分かるわけではないのだけど。

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雑誌「ネムキ」2009年1月号に「怪盗アルセーヌ・ルパン 八点鐘」掲載

JET氏による漫画化。今回は事件5「ジャン=ルイの場合」。
次号は休載。

朝日新聞出版 最新刊行物:雑誌:ネムキ
http://publications.asahi.com/ecs/21.shtml
朝日新聞出版 最新刊行物:雑誌:ネムキ:ネムキ 2009年1月号
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=10006


メリハリに欠けて分かりにくいなあ。もともとセリフが多くて動きが無いから漫画化しにくくはあるんだよね。

これは私の原作解釈なのだけど、公爵が目指しているのは真実を明らかにすることではない。事件に関わった女性にとって最も利益になることは何か、その女性が幸せになるにはどうすればよいかを見極めること。それはヒロインがそう望んでいるから。彼女は満足、自分も役得で一挙両得(天性のたらしって感じね)。最終的にはヒロイン自身の幸せ回復があって、作中で彼女が初めて笑った訳で、そこに説得力がないとどうしようもない気がする。

今回の女性はいのち(生きる気力)の危機にあって、しかも救わなければならない命は二つあるときたら猶予はない。それに真相を明らかにしてしまうと必ずどちらかが不幸になってしまう。そこを踏まえないと単なる無茶話に終わってしまう。無理無茶は承知なのだから疑われないうちにジャン=ルイをパリに連れ出さないと作戦完了にならない。

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小酒井不木「ルパン物語」

「女性」1925年1月号に掲載されたアルセーヌ・ルパン論(評)である。まとまったアルセーヌ・ルパン論は珍しいので載せてみた。

小酒井不木「ルパン物語」

「いつもはシルク・ハットに折目正しい最新流行のスモーキングを着、綺麗に剃られた顔に片眼鏡という、すらりとした姿の紳士が」とあるが、ルパンシリーズにはあまり容姿や服装に関する記述がなく、表紙絵やジュール・クラルティの序文によるものと思われる。(しかしシルクハットには燕尾服かモーニングコートらしい? 混同したのかも)

わがアルセエヌ・リユパンこそは、旧式散弾銃で武装する代りにピストルで武装し天鵞絨ビロード浪漫的ローマンチックな衣服をる代りに端正なスモオキングを著た、フラ・ディアヴォロである。(「序」ジュウル・クラルティ、「アルセエヌ・リユパン」佐佐木茂索・高橋邦太郎訳、改造社、1929年)

燕尾服となっている訳(保篠龍緒訳、「名探偵読本7 怪盗ルパン」パシフィカ所収)もあるけれど、おそらくスモーキング(smoking)だろう。燕尾服(白ネクタイ)ではなくタキシード(黒ネクタイ)のこと。スモーキングを着ている記述があるのは「赤い絹の肩掛け(6-5)」の犯人と、「特捜班ヴィクトール(19)」のマルコス・アヴィストぐらい。


「ルパンの面目は、ルパンが、アルセーヌ・ルパンとして活動する前記の小説の中に描き尽されて居る」というのに賛成。「前記の小説」とは「怪盗紳士ルパン(1)」から「813(5)」まで(戯曲抜き)のこと。

なお、不木は1928年に「蜀江の錦」という「白鳥の首のエディス(6-7)」の翻案をものしている。そこでのルパンの名前は龍蟠(リュパン)。蟠竜!かっこいい。竜蟠虎踞という四文字熟語もある。(一瞬もじれないか考えたけど、コキョってコキュに似てて危険)

 怪盗龍蟠リュパンの冒険談を申し上げます。
 シルクハットにモーニングという、瀟洒にしてしかも堂々たる服装いでたち。これが龍蟠の巴里パリーを闊歩する姿なのです。が、いつも龍蟠がこうした紳士風をして居ると思っては大間違い、その巧みな変装術によって、彼は自由自在に、それこそ思いもよらぬ人間になり切ってしまいます。『神出鬼没』という言葉がありますが、この形容詞ばかりは、真に龍蟠のためにこしらえたといってもよろしい。(小酒井不木「蜀江の錦」、小酒井不木探偵小説全集第2巻、本の友社、1992年)

「蜀江の錦」の冒頭。こういうのはTPOだから、昼間街を歩くとしたらモーニングということなのだろう。


以上の引用はいずれも、漢字、仮名遣いを現代のものに改め、ルビはわかりにくい個所のみ残した。

□参考サイト
奈落の井戸:小酒井不木研究サイト
http://homepage1.nifty.com/mole-uni/

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無料のオンライン百科事典「Yahoo!百科事典」が公開

Yahoo!で無料の百科事典が公開されたようです。
Yahoo!百科事典 - 無料のオンライン百科事典
http://100.yahoo.co.jp/
ヤフー、小学館の百科事典を無料で閲覧できる「Yahoo!百科事典」を開始:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081127/320234/


とりあえず調べてみるでしょ。

ルブラン - Yahoo!百科事典
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%83%AB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%EF%BC%88Maurice%20Leblanc%EF%BC%89/

アロック・ショルムHerlock Shormes

誰やねん。

あまりに突っ込みたくなったのでつい…。Herlock Sholmesです。読みは、エルロック・ショルメスとかヘルロック・ショルムスとかいっぱいありますが。


アルセーヌ・ルパン - Yahoo!百科事典
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%8C%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%91%E3%83%B3/

パリ警視庁の総監

これもNG。警視総監はドロームという人物だと思います。(結果的にネタバレにならなくていいのか?)


ウィキペディアもそうだけれど、一つの記事のみを鵜呑みにするのはよくないので、参照元が増えるのはありがたいです。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/


そういえばラルースが無料の百科事典を公開していたはずと思い出しました。
仏老舗書店がウィキペディアに対抗 無料サイト開設 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080514/erp0805140945002-n1.htm
LAROUSSE.fr(フランス語)
http://www.larousse.fr/
Encyclopedie Contributive Larousse(フランス語)
http://www.larousse.fr/encyclopedie/


鉄人28号も載っている。記名と無記名の違いは何だろう。
鉄人28号 - Yahoo!百科事典
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E9%89%84%E4%BA%BA%EF%BC%92%EF%BC%98%E5%8F%B7/

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漫画「アルセーヌ・ルパン 怪盗紳士」発売予定

ポプラ社の「ブンブン」という雑誌で、「アルセーヌ・ルパン 怪盗紳士」という漫画が掲載されたようです。また、同社から同じタイトルのコミックが2008年12月20日に発売予定となっています。

11月号-12月号に載ったのは「アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)」のようです。
月刊コミック ブンブン2008.11月号 ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=78598110
月刊コミック ブンブン2008.12月号 ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=78598120


アルセーヌ・ルパン 怪盗紳士 - livedoor BOOKS 新刊予約 コミック 児童 ポプラ社 ブンブンC
http://books.livedoor.com/item/2607030
アルセーヌ・ルパン 怪盗紳士 ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/korekara/comic/003065.html

コミック版 ルパン&ホームズ(1)
アルセーヌ・ルパン
怪盗紳士
モーリス・ルブラン,南 洋一郎/原作|春野 まこと/まんが

「コミック版 ルパン&ホームズ」というシリーズになっているようで、「怪盗紳士」は1、「シャーロック・ホームズ 緋色の研究」は2とナンバリングされています。
刊行予定 コミック ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/korekara/comic/index.html


□2008/12/27
ポプラ社のサイトでは「1月6日(火)配本予定」のなっているので発売は年明けのようです。また、ルパンもの2冊目の情報も上がっていますが、2009年1月19日発売予定という情報もあります。(しかし、短編2編でこの値段って…)
アルセーヌ・ルパン 奇怪な乗客/うろつく死神 ポプラ社
http://www.poplar.co.jp/korekara/comic/003168.html
ブックス ルーエ コミック発売予定表 2009年度版  上中下旬
http://www.books-ruhe.co.jp/hatubaiyotei/comic/2009/joucyouge/01.htm
アルセーヌ・ルパン 奇怪な乗客/うろつく死神 - livedoor BOOKS 新刊予約
http://books.livedoor.com/item/3010233

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偕成社アルセーヌ=ルパン全集「バーネット探偵社」入手のこと

再読にあたっては新潮文庫版を読んでいて、原作が少々変わっている上に堀口訳が乗っかってなかなかのインパクトなのでしばらく寝かせていた。(新潮文庫も面白いけど)

バーネットは隙がない。ルパンシリーズの中では1番かも。かっこいいというより変人(語弊があるかもしれない…)。再読するまで漠然と持っていたルパンのイメージに近い、というか、私が読んだルパンはこうだった、というのはジム・バーネットがベースなのかもしれない。ルパンシリーズを読み返して分かったのだけど、予測していた以上に自分の中では偕成社版の影響が大きいみたいだ。(実際偕成社「バーネット探偵社」は家にあったことが判明。これは新たに買ったものだけど)

これはアルセーヌ・ルパンかという命題があるが、別人格と考えることもできるし、内面は変わっていないとも思う。やっぱりルパンだ、という部分がある。変わったように見えるのは時代と言う背景があるからで、これは平和な時代のルパンという感じがする。


□2008/12/11
これを書こうと思っていたのを忘れていた。

彼女はそこに風変わりな人物を見出した。長身で、肩はいかつく、がっちりした体格だが、すれて雨傘の繻子地みたいに光る、緑に変色した黒のフロック・コートを着込んでいる。(新潮文庫「バーネット探偵社」P8)

この長身というのが疑問で。

そこにはちょっとかわった風采の男が立っていた。腰のくびれたすらりとしたからだつきだが、肩はがっちりして、いかにも頑強そうに見える。黒のフロック・コートを着ているのだが、これが雨傘の絹地みたいにてかてか光って変色しているのだ。(偕成社全集「バーネット探偵社」P10)

Elle y trouva un individu bizarre, bien pris comme taille, carre d'epaules, solide d'aspect, mais vetu d'une redingote noire, ou plutot verdatre, dont l'etoffe luisait comme la soie d'un parapluie.

意味は取れないんだけど、長身とは書いていない、のかな。基本的に中背(taille moyenne)なので。

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怪盗ルパン「コリアスタロの秘宝を奪え!」上演予定

ノーコンタクツという劇団が怪盗ルパン「コリアスタロの秘宝を奪え!」という芝居を上演予定だそうです。

no-contactsHP
http://www.geocities.jp/yuka_m31737/
NEWS
http://www.geocities.jp/yuka_m31737/mysite1/sub4.html

怪盗ルパン「コリアスタロの秘宝を奪え!」
2009年2月6~8日
中野ウエストエンドスタジオ


□2009/02/14
主人公はルパン五世だったようです。

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韓国映画「M(エム)」にバー<ルパン>登場

CINEMA TOPICS ONLINE:M - 映画作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=9451

人気ベストセラー作家ハン・ミヌ(カン・ドンウォン)は、ウネ(コン・ヒョジン)との結婚を控え、スランプ状態だった。不眠症に悩まされ、誰かに見られているような神経過敏に陥った彼は、ある日、夢遊病のように路地裏のバー<ルパン>のドアを開く。そこで彼は、紫の服の少女ミミ(イ・ヨニ)と出逢った。数日後、久しぶりに帰郷したミノは、ミミが初恋の相手だったと思い出すが、彼女のゆくえを知る者は、誰もいなかった……。

調べたらやっぱりLupinのルパンみたいだ。銀座のバー「ルパン」がモデルらしい(ロケではない)。太宰治も通った場所ということで、作家が集まるバーとしてイメージしたらしい。


ドンホリな日★Part1 - カン・ドンウォンについていきます☆
http://blog.goo.ne.jp/zuiryu118/e/aac96da8fe60b379b80d10c279de2efd

※「M」パンフレットより   インタビュー|イ・ミョンセ監督

-ミヌが記憶の断片を掴む路地裏のバーの名前が<ルパン>とは意味深いですね(笑)

<ルパン>は、現世と彼の世の中の中間と言えます。また、夢の空間でもあります。しかし、それよりも重要な理由は、私が好きな作家、太宰治の行きつけの店の名前だということです。それで、バーの名前を<ルパン>にしました。もちろん<ルパン>という言葉のミステリアスな雰囲気も重要な要因のひとつです。

こちらの予告編でバー<ルパン>が少し映っています。
M(エム) 上映作品 韓流シネマ・フェスティバル ラブ&ヒューマン
http://www.cinemart.co.jp/han-fes2008/au_movie/20080712002123.html

モデルとなった銀座のバー<ルパン>
Bar Lupin Ginza
http://www.lupin.co.jp/
ルパン 「文豪たちが愛した止まり木は健在」 - 銀座今昔ストーリー - ファイブエル
http://www.5-life.net/magazine/article-190-2.html


□2009/01/10
シネマート六本木などで公開中のようです。
「M(エム)」 記憶と現実の間 さまよう作家の魂・映画の森
http://www.cinema.janjan.jp/0812/0812180717/1.php
M(エム)│カン・ドンウォン主演で贈る、幻想的な映像美で綴るミステリー・メロドラマ
http://www.cinemart.co.jp/movie_official/m-movie/

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雑誌「ミステリマガジン」2009年1月号 フランスのミステリ雑誌

□世界のミステリ雑誌 各国のミステリ雑誌大紹介
高野優「フランス」

各国のミステリ雑誌を紹介する企画のフランス編。
小見出しは以下の通り
・現在刊行中の雑誌
・アメリカに起源を持つ雑誌たち
・フランス生まれのミステリ雑誌

フランスで現在刊行されているミステリ雑誌には
「813」
「タン・ノワール」
「ルール・ポラール」
「レ・ポラロフィル・トランキル」
があるらしい。「813」を中心にミステリ雑誌の歴史について紹介されている。


「813」は季刊で「推理文学の友 813協会」が出している。この会については、以前「813・推理文学友の会」として当ブログで取り上げたことがあるが(→トロフェ813賞)、設立の状況や、その後の経緯が詳しい。協会名と雑誌名の由来はもちろんアルセーヌ・ルパンシリーズの作品から。読み方はユイサントレイズ=八百十三と紹介されている。(なお、ユイサントレイズはHuit cent treizeと綴る)
813 (revue) - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/813_(revue)
813, l'association des amis de la litterature policiere.(公式サイト。フランス語)
http://www.813.fr/

「タン・ノワール(Temps noir)」は「ノワールの時」という意味で、年1回の刊行。
Temps noir - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Temps_noir

「ルール・ポラール(L'ours polar)」は「探偵しろクマ」(って可愛い)。推理小説を意味する俗語である「ポラール(polar)」と「白クマ(L'ours polaire)」をもじったもの。隔月刊。
※クマ(ours)のsは発音すると指摘を頂きましたので、「ルールス・ポラール」が正しいと思われます。
L'Ours polar - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/L%27Ours_polar

「レ・ポラロフィル・トランキル」(「静かなるミステリマニアたち」。Les polarophiles tranquilles。ミステリマガジンの記事ではoが抜けてる)は年1回から3回の刊行。公式サイトにバックナンバーあり。
Les Polarophiles tranquilles - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Les_Polarophiles_tranquilles
Les Polarophiles Tranquilles(公式サイト。フランス語)
http://polarophile.free.fr/


ほかに、アメリカ生まれの「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」のフランス版「エラリイ・クイーン・ミステール・マガジンヌ」やフランス生まれの「ポラール」(いずれも休刊)などが、それぞれバックナンバーの表紙や目次を交えて紹介されている。

ノワールに関するリンク集
http://luj.g.ribbon.to/html/link.html

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腕ひしぎ(その5)

最後に、Bのページからレニエ=デュボワ戦の模様を紹介する。この試合の模様は元々レ=ニエの著書「柔術の秘密」(1905年刊行)に収録されたものらしい。以下は自動翻訳を元にしたもの。なお、フランス式ボクシングは足も使う。

「始め」の合図で、リングの反対の角を取った2人の選手はすばやく向かい合って動き、数秒間警戒を保ちながら、互いから2ヤード(約1.8メートル)の場所で止まりました。
最初にローキックで攻撃したのはジョルジュ・デュボワでした。 それはすぐに、相手の上で跳ねてそのウエストを差押えたレ=ニエによって回避されました。 彼が左手でデュボワの背中の筋肉を絞っている間、右のももの下に置かれたひざの打撃で、彼は後者を揺らしました。 デュボワはあおむけにどしんと落ちました。
レ=ニエは彼に続いて倒れ込み、のどを締め、デュボワの右手を差押えることができました。 そして、彼の背中に自分を引き渡して、彼は、頚動脈を絞るためにデュボワの首の上に脚を通しました。 これが完了していて、彼は乱暴に敵の腕の関節に対して引きました。 腕を脱臼できるほどのこの拘束がそのような痛みを引き起こしたので、デュボワは、1秒の何分の1の間抵抗しようとした後に、ひどい叫び声をあげて負けました。


彼は柔術のひどい固め技の1つ「腕ひしぎ」によって破られました。 試合は26秒続き、実際の戦いはたった6秒でした。
デュボワが大声で叫ぶのを聞くとすぐにレ=ニエが緩めた、このひどい拘束からジョルジュ・デュボワが開放されたとき、彼は立ち上がって柔術王者と握手しました。だれもが2人の選手に群がりました。
デュボワは「もっと上手くやりたかった」と言いました。「しかし、私が拘束から逃れるのは不可能だった。そのまま続いたなら、私の腕は藁のように折れただろう」


□参考文献
・吉田郁子「世界にかけた七色の帯 フランス柔道の父川石酒造之助伝」駿河台出版社、2004年
駿河台出版社:世界にかけた七色の帯
http://www.e-surugadai.com/cgi-local/suruga/disp_desc.cgi?type=other&isbn=4-411
Amazon.co.jp: 世界にかけた七色の帯―フランス柔道の父川石酒造之助伝 吉田 郁子 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4411003589
・井上俊「武道の誕生」吉川弘文館、 2004年
・Emile Andre "100 Coups de jiu-jitsu" Flammarion, 1906
※ルパンシリーズの研究書
Jacques Derouard "Dictionnaire Arsene Lupin" Belles Lettres, 2001
でもレニエ=デュボワ戦が取り上げられているようだ。「Google ブック検索」で引っかかっただけなので詳細分からず。


□余談
「プレス」の記事には試合を観戦したモトノとタツケという二人の日本人の名前が出てくる。
検索してみると写真が見つかった。モトノ・イチロー氏と息子セイイチ、タツケ・S氏とアマリ・Z氏、モトノ夫人の3枚の写真がある。
10 1904 JAPAN PARIS ITCHIRO TATSUKE AMARI MOTONO PRINT
http://www.old-print.com/cgi-bin/item/LIL0904142

モトノ親子は本野一郎(もとのいちろう)と盛一(せいいち)だろう。本野は1901年12月からフランスに駐在していた。
本野一郎 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E9%87%8E%E4%B8%80%E9%83%8E
本野一郎
http://www.law.kyushu-u.ac.jp/~shichinohe/minpo/(67)_motono_ichiro.htm

タツケとアマリがTatsuke, ShishitaとAmari, Zojiと同一人物なら、田付七太(たつけしちた)と甘利造次のことかもしれない。
Min. Plen. Y Embajadores del Servicio Diplomatico Extranjero
http://archivo.minrel.cl/webrree.nsf/PagLisMinPlenEmbServDiplExtranj?OpenPage&Start=301&Count=1000&ExpandView&Click=
文官高等試験合格者一覧(田付七太・ブラジル大使)
http://homepage1.nifty.com/kitabatake/rekishi25.2.html
神戸大学 電子図書館システム:移民の国南米に日本商品の大市場(甘利造次・前ペルー領事)
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=10016074&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1


前→腕ひしぎ(その4)

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腕ひしぎ(その4)

気になっていた情報はほぼ分かったが、そうでないのが腕ひしぎは「udi-shi-ghi」かという点。こればかりは一次資料を当たらなければならないが、どうしようもない。フランス語の場合「e」は「ウ」と読むので避けたのかも知れない。フランス国立図書館のガリカで2005年10月27日付の新聞を調べたが、「フィガロ」紙と「プレス」紙でアーム・ロックという技名が見えるが、日本語の技名は出ていなかった。

面白いのが「プレス」の見出しである(記事前半部記事後半部)。レ=ニエが日本人であるかのように見える。「プレス」では一面で扱い、ボクシングより柔術の名前が先に来ているのも独特だ。

柔術とボクシング
日本式勝利

午後のセンセーショナルな試合
教師デュボワ対日本人レ=ニエ
《アーム・ロック》技

1893年に刊行された天神真楊流の極意書では、同じ漢字(腕挫)で「ウデシキ」と読ませている。Bのサイトの「Ude-shighi」表記は「うでひしぎ」と「うでしき」との折衷のような感じもする。

近代デジタルライブラリー:天神真楊流柔術極意教授図解:140頁
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40075953&VOL_NUM=00000&KOMA=67&ITYPE=0
国立国会図書館 NDL-OPAC(書誌 詳細表示 ):天神真楊流柔術極意教授図解
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000493376/jpn
ソフトマインド - livedoor Wiki(ウィキ):天神真楊流柔術極意教授図解の目次
http://wiki.livedoor.jp/pg_gifu_dojoo/d/%c5%b7%bf%c0%bf%bf%cd%cc%ce%ae%bd%c0%bd%d1%b6%cb%b0%d5%b6%b5%bc%f8%bf%de%b2%f2%a4%ce%cc%dc%bc%a1


もう一点。ルパンがかけた技は「腕ひしぎ」か。これは柔道は全くの門外漢なので分からない。ルブランの描写が簡潔で、翻訳により解釈が違うのがまた混乱する。レ=ニエが使ったのは寝技で、ルパンは立ったまま使っているからレ=ニエの「腕ひしぎ」とは違うことは分かる。所謂時事ネタというやつで、どんな形の技であれ、「柔術」であり「腕ひしぎ」であることが肝心だったのだと思う。読者はレニエ=デュボワ戦を知っているわけだから、四角四面に技を披露する必要はないわけだ。

前半期のルパンシリーズの魅力の一つは、ベル・エポックと呼ばれる時代との同時代性にある。「アルセーヌ・ルパンの脱走(1-3)」の発生を1900年頃と解釈するのは後の作品との兼ね合いで、むしろ初期短編は「今からほんのちょっと未来」を見据えて書かれていたのではないかと思っている。たとえば第1作でルパンは執筆当時にはまだ就航していない船の上に登場した(→未来の船・プロヴァンス号)。「ジュウジツが知られていなかった時代」というのは、今まさに柔術が脚光を浴びようとしている様を捉えた言葉だとも言える。

あるいは、

立ったまま、本来は寝技でかける”腕ひしぎ”を極めているあたり、ルパンも並の人間ではない。立ち技で極める”腕ひしぎ”もあることにはあり、最近でいうと、PRIDEで、桜庭がヘンゾ・グレイシーの腕を折ってしまったあの技が近いかもしれない。(夢枕獏の格闘塾第48回「ルパン対ホームズ その2」毎日新聞夕刊2006年4月11日。単行本「薀蓄好きのための格闘噺」に収録)

との意見もあるので、立ち技でもアリなのだろう。柔術の教師をやっていたことになっているのだから、ルパンが技を考案したと主張することもできる。


前→腕ひしぎ(その3)
次→腕ひしぎ(その5)

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腕ひしぎ(その3)

新たなスポーツとして脚光を浴びた柔術は、その後まもなく見捨てられてしまう。警察や軍隊の訓練の中と、見世物興行で細々と生き残ることになる。

しかし警察と軍隊においてジウジツへの関心はいき続けた。一九〇五年パリ警視総監は市内の犯罪が増え逮捕が困難になってきたのを憂慮して、警官にジウジツを習わせることを決定した。これは警官の活動に自転車及び潜水服が取り入れられたことに続く、社会の養成に基づいた決定であり期待も大きかった。ジウジツを体得している警官は強い、という観念が広まったのが何よりの収穫だった。(同P24)

これで、わざわざルパンが「オルフェーブル河岸」(パリ警視庁)を持ち出してきた理由が分かる。警察への採用に関しては次のような記録が残っているらしい。日本側の働きかけと、柔術の知名度が上がったこととが作用して採用される運びになったのだろう。

一九〇一年のパリの警察関係の記録によると、東京の検事総長がパリの警視庁を訪問した際に、フランスの警官の中にあまり体格が優れない者もいるのを見て、日本の警察で活用している技を披露して、フランスでも試みるように勧めた、とある。(同P20)

そして、

レ=ニエがロンドンで習った教師は天神真楊流であり、この頃のフランスにはまだ嘉納治五郎の柔道は普及していなかった。(同P25)

これも知りたかった。当時、有名無名の日本人が海を渡り、そのなかには古い柔術を伝える者もいたのだ。天神真楊流は嘉納治五郎が最初に入門し、講道館柔道の元になった柔術の一つである。腕ひしぎは天神真楊流から柔道に取り入れられた。

嘉納の最初の訪仏は1889年のマルセイユで、フランスにはすでに柔道を見聞した者もいたと思われるが、このときのムーブメントは柔術だった。嘉納の初期の訪仏がフランス柔道にどのような影響を与えたか詳しく分からないらしい。しかし、嘉納が教育者で、英語・ドイツ語が堪能、フランス語も理解できた文武両道の人だとは初めて知った(以前も目にしていたわけだが、意識して読まないと頭に入らないものである)。1906年にジウジツは優れた護身術だが本物のスポーツではないと宣言したクーベルタンは、嘉納に出会って柔道の有効さを認めることとなる。嘉納は1909年に国際オリンピック委員会の委員に選ばれている。

この後、フランスの柔道普及には低迷期が続き、再び柔道が花開こうとするのは1930年代のようだ。ラルースの辞書にはjiu-jitsuが1906年(Nouveau Larousse supplement)に、judoが1931年に採用されているらしい。フランスに渡った川石酒造之助は1935年に道場を開いた。その機を知ってか知らずか、ルパンシリーズでも柔術の言葉が再浮上する。1934年発表の「カリオストロの復讐(20)」においてである(以前の記事→ルパン:柔術)。柔術は他に「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」で登場する。(1908年初演。ただし、二次作品に近いと考える)


前→腕ひしぎ(その2)
次→腕ひしぎ(その4)

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腕ひしぎ(その2)

「世界にかけた七色の帯」によれば、当時、イギリスでバルトン=ライト(バートン・ライト)によって柔術を元にバルティツBartitsuが考案された。バルティツ・クラブに出向き、柔術の有効性を知ったフランス人にエドモン・デポネがいる。以下、なかなか知る機会のない内容だと思うので、少々長く引用する。(見やすくするため段落ごとに空行を入れた)

柔術の有効性を知ったデポネはパリに戻ると、グレコ・ローマン型のレスリング教師エルネスト・レニエに話を持ちかけ、デポネの出資で柔術の道場を開設する事にした。デポネがパリの目抜き通りシャンゼリゼに近いポンティウ街五十五番地に場所を定め、盛んな宣伝を繰り広げている間に、レニエはロンドンで柔術の拾得に励んだ。一九〇五年の秋、レスリング教師が柔術教師となって帰ってきてからは、さらに大がかりな宣伝で「日本式武術」の有効性を売り込んだ。あまりに派手な宣伝がレスリングやボクシングの教師たちの反感を買い、まもなくボクシング教師のジョルジュ・デュボワが試合を申し込んできた。デュボワは四〇歳、ボクシングを教え恐るべきボクサーとしても知られ、フェンシング教師でもあり、重量挙げでも一流という猛者である。身長一・六八メートル、体重七五キロ。一方レ=ニエ(ジウジツ教師になってからレニエは名前を日本人風にレ=ニエと分けて書いていた)は三十六歳で身長一・六五メートル、体重六三キロ。両者とも小柄な方で、体重においてややデュボワが勝っていた。デュボワは雑誌『体育』に寄稿して、「全く平然と我々の間接をひねりにヨーロッパにやてくる日本人」を皮肉り、ギリシャ、ローマ時代から二千年にわたって学んできた正統な格闘技が今や東洋の怪しげな技によってねじ伏せられようとしている、と憤慨する。


デュボウの挑戦はたちまちスポーツ新聞に大きく取り上げられ、パリじゅうの話題になる。試合の規則は簡単で「噛みつくこと、眼をつぶすこと、下腹部を傷つけること以外はすべて許される」というもの。場所の選定に苦労して何度か延期になったあげく、試合は一九〇五年十月二十六日、場所はパリの西九キロにある郊外の町クールブヴォワのヴェドリーヌ自動車工場の敷地内と決定した。前評判が高く、パリ市内では混乱が予想されるとして警察の許可がとれなかったのだ。試合は公園ではなく専門家だけが入場を許された。スポーツ新聞紙『野外生活La Vie au grand air』の写真が残っているが、一二メートル四方に網を張って作った広々としたリングを囲んで試合をのぞき込んでいる観客は、みなシルクハットか山高帽で正装した紳士たちで、そのなかに毛皮の襟巻きをした女性がちらほら。戦っているレ=ニエも上着を着ており、デュボワはジャケットに赤い手袋といういでたちであった。試合の経過を伝える自動車とスポーツの専門紙『自動車L'Aout』の記事によると「そこには五百人を越える招待客がいた! パリじゅうの著名なスポーツマンはみな顔を揃えている。ボクシングの花形選手が自動車レースの第一人者と並び、有名なフェンシング選手たちもリングのまわりにひしめき、スポーツ記者たちが全員勢揃いしていた……」という状況であった。


結果はあっけなく終わる。レ=ニエがデュボワを「腕ひしぎ」で押さえ込んで六秒で勝った。


「今や『ジウジツ』という言葉はまるで勝利のラッパのようにパリのいたるところで鳴り響いている。街でも、新聞紙上でも、ミュージックホールでも」とある新聞は報じた。レ=ニエのクラブにはパリの上流社会の人士が次々と登録した。(「世界にかけた七色の帯」P21ー22)

ボクシングの猛者をたった6秒で倒した。柔術(ジウジツと発音されていた)とレニエ=デュボワ戦の決め技「腕ひしぎ」は最新流行の話題だったのである。しかも、「今や『ジウジツ』という言葉はまるで勝利のラッパのようにパリのいたるところで鳴り響いている。街でも、新聞紙上でも、ミュージックホールでも」と報じたある新聞とは、Aのページに拠れば1906年1月14日付の「le sport Universel illustre」紙と思われるが、「アルセーヌ・ルパンの脱走(1-3)」が掲載された「ジュ・セ・トゥ」12号の発行日は1906年1月15日なのだ。作者ルブランがいかに素早く反応し時流に乗っていたかが分かる。

なお、「野外生活(La Vie au grand air)」というのは、「ジュ・セ・トゥ」と同じ出版社の雑誌、つまり、ルパンシリーズの仕掛け人ピエール・ラフィットが創刊した雑誌(山田登世子「リゾート世紀末」によればスポーツ週刊誌)で、第1号(1898年)には他社から刊行されていたルブランの「これが翼だ」が再録されている。だからレニエ=デュボワ戦の資料はすぐ手に入る状況にあったはずである。


前→腕ひしぎ(その1)
次→腕ひしぎ(その3)

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腕ひしぎ(その1) - アルセーヌ・ルパンの脱走(1-3)

アルセーヌ・ルパンは数種の格闘技を会得していることになっているが、最も早く出てくるのが柔術である。1906年に発表された「アルセーヌ・ルパンの脱走(1-3)」において、柔術の技を披露する。

またジュウジツが知られていなかった時代に、パリでこの闘技を教えたのも、またアルセーヌ・ルパンだったらしい。(「強盗紳士ルパン」ハヤカワ・ポケット・ミステリ、中村真一郎訳、P57ー58)

 それから彼は、急に腹を立てて、男の首をしめて、押し倒そうとした。彼は五十歳だったが、まだ人並み以上の力を持っていた。ところが相手は、かなりわるい条件にあるように見えた。それに、もしこの男を連行することができたら、何という手柄になることだろう!
 闘争は長くつづかなかった。アルセーヌ・ルパンはほとんど抵抗しなかった。襲いかかるとすぐに、ガニマールは手をはなした。彼の右腕は力なく、だらりとたれ下っていた。
「オルフェーブル河岸でジュウドウを習っていたら」と、ルパンは言った。「この手は日本語でウデヒシギだってことがわかるだろうよ」(同P64ー65)

原文ではジュウジュツ/ジュウドウはjiu-jitsu、ウデヒシギはudi-shi-ghiと綴られている。このうちjiu-jitsuは今でも使われる表記なので問題はない。腕ひしぎがudi-shi-ghiとなるのか、という点は、フランス語はHを発音しないので、
/u-de-hi-shi-gi/→/u-de-i-shi-gi/→/udi-shi-ghi/
となってもおかしくはないと推測することはできる(あくまで仮定として)。ただ、なぜjiu-jitsuでudi-shi-ghiなのか気になっていた。


L'arrivee du jujitsu en France(仏語)…A
http://pagesperso-orange.fr/laurent.thomas/ffjj.htm

このページで、1905年に行われたレニエとデュボワによる異種格闘戦が紹介されているが、柔術家レニエが英語でアーム・ロック(arm-lock)、日本語で腕ひしぎ(udi-shi-ghi)という技で勝ったことが紹介されている。(後で指摘するときのために、このページをAと名づけておく)

このレニエ=デュボワ戦を紹介しているブログがある。

100年前のフランスの出来事 : 柔術家vs拳闘家
http://france100.exblog.jp/3743911/

デュボワはレ・ニエに素早く懐に飛び込まれ、足固めに押さえ込まれて優勢に立たれた。レ・ニエがデュボワを地面に押さえつけ、腕をひねると、彼はこらえきれずに「止めろ!」と叫んで試合を終了させねばならなかった。

腕をひねる…確かに腕ひしぎっぽい? さらに調べてみる価値がありそうに思えた。


Early Ju-jutsu: The Challenges by Graham Noble(英語)…B
http://www.dragon-tsunami.org/Dtimes/Pages/articlee.htm
同じ腕ひしぎでも、こちらはUde-shighiとなっている。

Historique - Club de Judo / Jujitsu DOJO OLYMPIC de Lyon(仏語)…C
http://www.judoclichy92asjj.com/pages/judo-histoire-du-judo-en-france.htm
今度は十字固め(JUJI-GATAME)だ。しかし案ずるに及ばず、腕ひしぎは現在「腕ひしぎ十字固め」と呼ばれているようなので、同じ技を指すのだろう。とはいえ、当時、腕ひしぎと言っていたのか、十字固めと言っていたのでは問題が違ってくる。ところでCのページでは、フランスの柔道史をKawaishi前とKawaishi後とで分けている。この日本人の名前「川石」で検索してみると、ずばりの本が見つかった。

吉田郁子「世界にかけた七色の帯 フランス柔道の父川石酒造之助伝」駿河台出版社、2004年
この本には、私が気になっていた情報がほぼ網羅されていた。この本で参照されているミシェル・ブルッス「柔道 その歴史その成功」1996年は、Aのページの参照本と同じと思われ、Aのページの下にある画像がレ=ニエの柔術道場の宣伝ポスターであることが分かる。


次→腕ひしぎ(その2)

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青空文庫「奇巌城」の底本について

ここで言う底本は、青空文庫の入力・校訂に使用された本のことではなくリライトの元となった底本のこと。青空文庫の作品解説には英訳と見られるとあるが、私は保篠訳だと思う。

青空文庫:図書カード:奇巌城
http://www.aozora.gr.jp/cards/001121/card46187.html


章題を見れば一目瞭然。岩波少年文庫は原作に忠実な例として挙げた。
・岩波少年文庫「奇岩城」榊原晃三訳、1983年5月初版、2001年7月新版第1刷
・新学社文庫「奇巌城」保篠龍緒訳、1976年初版、1992年重版(底本は別にあって初出はもっと古いと思われる)
・青空文庫「奇巌城」(底本:「小学生全集第45巻 少年探偵譚」興文社、文藝春秋社、1928年)

No.岩波少年文庫新学社文庫青空文庫
1銃声夜半の銃声夜半の銃声
2高校生イジドール・ボートルレ怪中学生怪中学生
3死体惨死体惨死体
4対決侠少年対怪盗侠少年対怪盗
5追跡後をつけて-
6歴史上の秘密千古の秘密-
7エギーユ論奇怪な古文書-
8シーザーからルパンまで奇巌城奇巌城
9ひらけ、ゴマ!神秘の扉-
10フランス王家の財宝金波狂瀾-


小見出しまでみると更にはっきりする。

新学社文庫青空文庫
夜半の銃声夜半の銃声
-懐中電灯の怪漢-懐中電灯の曲物
-遺留品は皮帽子一個-遺留品は皮帽子一個
-負傷犯人の行方は?-負傷犯人の行方は?
-馭者の残した強迫状-馭者の残した強迫状
-怪青年記者-怪青年記者
-暗中の怪人-暗中の怪火
怪中学生怪中学生
-医学博士の誘拐-医学博士の誘拐
-偽物は偽物です-偽物は偽物です
-怪少年の明察-怪少年の明察
-ルパン? 生? 死?-ルパン?生?死?
-探偵の手がかり-探偵の手懸り
-不可思議な暗号紙片-不可思議な暗号紙片
惨死体惨死体
-令嬢は生死不明-令嬢は生死不明
-漆喰の傑作-漆喰の傑作
-神秘のあなぐら-神秘の土窟
-惨死体-解かんとする謎の記号
-謎の記号-美少年の重傷
-美少年の重傷--
侠少年対怪盗侠少年対怪盗
-真相発表近し-真相発表近し
-ルパンの再現-ルパンの再現
-侠少年対怪盗-勝つものは誰か
-勝つものは誰か-悲痛の打撃
-悲痛の打撃-悲劇の真相
-悲劇の真相-不思議な一枚の写真
後をつけて-少女の罪
-ルパンの告白-父の手紙
-不思議な一枚の写真-秘密の古城
-少女の罪-古城の主
-父の手紙-夜陰の城へ
-秘密の古城-開かれた城の門
千古の秘密-戦勝の祝
-古城の主-火中から拾い出された本
-夜陰の城へ-大尉の子孫
-開かれた城の門--
-戦勝の祝--
-エイギュイユ物語--
奇怪な古文書--
-王妃の祈祷--
-大尉の子孫--
-火中から逃れた書--
-指間の水--
-百馬力の自動車--
奇巌城奇巌城
-三角形をなす都会-三角形をなす都会
-巨人の出現-ああ奇巌城
-ああ奇巌城-神秘の扉
神秘の扉-水雷艇
-解き得たり千古の謎-意外の招待
-二百年秘密の口-意外、意外、現われたその人は
-国家的大秘密-山なす宝
-第二十五号水雷艇-怪侠盗の真面目
-意外の招待-壮烈な肉迫戦
金波狂瀾-潜航艇で海底を逃走
-意外その人は-魔の黒雲
-山なす珍宝巨財-血の雨、血の涙
-怪侠盗の真面目--
-壮烈な肉迫戦--
-潜航艇で海底を逃走--
-魔の黒雲--
-血の雨、血の涙--


比較のため、大見出しの位置を合わせてみたが、保篠訳を踏襲していることが分かる。原作には小見出しがなく、仏語原文や英訳を基にしたとは考えにくい。固有名詞についてもフランス語読みの保篠訳に準じている。見出しからも分かるとおり、大きなエピソード(もしくはイベント)の省略はなく、その分描写があっさりしていて保篠版のダイジェストというのが最も適切かもしれない。

では誰が書いたかということになると、内容や文体について比較分析する力はないが、保篠氏ではないと思う。保篠氏の子ども向けのリライト版とは違っているし(閲覧したことがあるのは講談社の世界名作全集)、原文を直接読めて小説の書ける人ならもう少し構成(見出しの使い方)を変えてもおかしくない。

菊池寛訳となっているのを見かけることがある(青空文庫やWebに掲載された古書店の目録)が、菊池にしては文章があまり上手くないように思う。やっつけ仕事だったか名義貸しだったか分からないけれども。青空文庫の作品解説は、英訳を確認したり完訳版と比較した上での記述とは思えない。菊池寛訳であることを前提に書いているのだろうが、小学生全集の原本が菊池寛訳となっているのならその表記は疑わしいと思う。


補足として固有名詞の表現について。例えば、Aiguille Creuseの音訳は翻訳により種々雑多で、エイギュイユ・クリューズと言う表記は保篠訳と同じ。ドバルも保篠訳の特徴で、ダバルと訳されるほうが多い。保篠訳とどこまで一致するかまでは確かめていないけれど。

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柴田錬三郎「怪人黒マント」

※柴田錬三郎「怪人黒マント」とルパンシリーズ「金三角(9)」の内容に触れています。※


偕成社、1950年6月

主人公の少年は、両親を亡くし日本少年団という施設で過ごしている、ある日、隣の屋敷に住む少女が誘拐されそうだと聞きつけ、待ち伏せて救う。少女もまた両親を亡くし、愛情のない男に引き取られているのだった。という話から始まるのだけど、実は「金三角(9)」の翻案。

二人とも同じ紫水晶の珠数を持っていたり、少女と一緒に住む男性が金貨のありかを白状するよう脅されたり(ストーブで足裏を焼かれる)、挙句その男が亡くなったりと、ストーリーの流れはほぼ原作のまま。ルパンの代わりに登場するのは「日本ルパン」こと東京紳士。


 東京紳士!
 この奇妙な名前の人物は、最近でこそ、新聞に書きたてられるような活躍をしませんが、昨年あたりは、十日にいっぺんぐらいの割で、「日本ルパン」だ、と新聞でさわぎたてられたものです。
 東京紳士は、日本ルパンといわれるように、探偵ではありません。探偵どころか、盗賊もやるのです。たとえば、ある大会社の社長が、さんざん悪事を犯して巨額の財産をつくっていると、東京紳士は、あらかじめ、何月何日何時に参上すると警告を発しておいて、いかなる警戒網をも突破してのりこんでゆき、金を奪って、しかも、その金を、貧しい人びとにばらまいてやる、といった調子で、胸のすくような活躍をするのでした。(P90)

 盗賊にして名探偵! 善良な市民たちの力強い味方! 現代の英雄「日本ルパン」東京紳士!(P170)


東京を舞台として少年少女の話に変えているので設定は変わっている。「金三角」は「金貨の丘」、名前については原作を流用することが出来ないので、幸夫兄さんと可奈子ということにして、兄-娘、妹-息子とクロスさせている。金貨の出所が国民政府軍と共産党軍との衝突があった南京であるあたり時代を思わせる。


東京紳士が活躍する作品は複数書かれていて、同時に借りた「スパイ第十三号」もそのひとつ。こちらはルパンシリーズとは関係なくて、原子爆弾の爆発をふせぐ新化学薬をめぐり、新科学薬の発明者の息子を守る東京紳士と助手の少年が、マダム・十三号が率いるスパイ団とゴリラ男率いるスパイ団と3つ巴の争奪戦を繰り広げる。戦闘機を操縦したり、猛虎と対峙したりとすごい活躍ぶり。

山本周五郎氏の「猫眼石殺人事件」(山本周五郎探偵小説全集2『シャーロック・ホームズ異聞』末國善己編、作品社、2007年)を読んで調べているうち、他にも「日本ルパン」ものがあるらしいというので借りてみたのだけど、「本人」に出くわすとはおっかしいなあ(笑) 借りられるうちから、一番古いものと新しいものを選んだのだけど、どうやら正解だったようだ。おそらく2作目以降独自のストーリーとキャラクターになっていったのだと思う。

ちなみに、「スパイ第十三号」で東京紳士は華麗に英語でやりとり(文章は日本語)しているが、東京紳士は英語ではトーキョー・マンというらしい。


●東京紳士ものリスト
□単行本
『怪人黒マント』偕成社、昭和25年6月
『妖魔の黄金塔』ポプラ社、昭和29年4月
『三面怪奇塔』偕成社、昭和29年6月…「少女サロン」昭和27年9月号-28年12月号
『黒衣の怪人』ポプラ社、昭和29年10月
『スパイ第13号』偕成社、昭和30年3月…「中学生の友」昭和29年1月号-12月号
こののち、偕成社の「ジュニア探偵小説」シリーズに『怪盗紳士』『スパイ13号』『三面怪奇塔』が収録されている。『スパイ13号』は『スパイ第13号』の改題、『怪盗紳士』は『怪人黒マント』の改題。

□雑誌掲載のみ
「赤い悪魔」…「中学生の友」昭和30年1月号
※この作品は「赤い怪盗」と言う題で、ホームズものに改作された(柴田錬三郎ほか著、北原尚彦編『日本版シャーロック・ホームズの災難』論創社、2007年)
「太陽はのぼる」…「小学六年生」昭和31年4月号-12月号

□参考文献・参考Web
・『柴田錬三郎選集 第18巻』所収「著作年譜」、集英社
・少年探偵小説・作家別リスト:さ行~た行
http://www2s.biglobe.ne.jp/~s-narita/new/shonen-sa-ta.htm


※柴田錬三郎「怪人黒マント」とルパンシリーズ「金三角(9)」の内容に触れています。※

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クラブ・デュ・リーヴル・ポリシエ版のルパンシリーズ

「クラブ・デュ・リーヴル・ポリシエ」は、ミステリ愛好家の手により1958-1969年に出版された推理小説の選集です。

CLP OPTA Club du Livre Policier tous les titres parus Guide d'achat sur eBay.fr
http://avis-membres.ebay.fr/CLP-OPTA-Club-du-Livre-Policier-tous-les-titres-parus_W0QQugidZ10000000002159871

これを見ると、確かに全集となっているのはアルセーヌ・ルパンシリーズだけのようです。ルパンものはほぼ網羅されていて、第1巻には、ルブランの伝記や、ジュール・クラルティの序文や、ナルスジャックの評論が収録されたようです。このうち、ナルスジャックの評論は創元推理文庫「二つの微笑を持つ女」(石川湧訳)で読めます。クラルティの序文は名探偵読本7「怪盗紳士ルパン」で読めます(「『怪紳士』序文」星野龍緒訳)。


第1巻:「アルセーヌ・ルパンの冒険」第1巻(怪盗紳士ルパン(1)、ルパンの告白(6))
第1巻(続):「アルセーヌ・ルパンの冒険」第2巻(八点鐘(12)、バーネット探偵社(15))
第4巻:ルパン対ショルメス(2)、戯曲アルセーヌ・ルパン(3)
第7巻:カリオストロ伯爵夫人(13)、奇岩城(4)、フランス国王の秘密(パスティーシュ)
第10巻:水晶の栓(7)
第12巻:813(5)
第14巻:オルヌカン城の謎(8)、金三角(9)
第15巻:三十棺桶島(10)、虎の牙(11)
第16巻:緑の目の少女(14)、謎の家(16)、バール・イ・ヴァ荘(17)
第17巻:ふたつの微笑を持つ女(18)、特捜班ヴィクトール(19)、カリオストロの復讐(20)
第32巻:綱渡りのドロテ、ジェリコ公爵
別巻2:ノー・マンズ・ランド、三つの眼


ちなみに、他の作品は次のようなものです。
第2巻:ジョン・ディクスン・カー「火刑法廷」
第3巻:エラリー・クイーン「オランダ靴の謎」
第5巻:フランセス・ノイズ・ハート「ベラミ裁判」
第6巻:ガストン・ルルー「黄色い部屋の謎」「黒衣夫人の香り」
第8巻:アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」
第9巻:トーマ・ナルスジャック「贋作展覧会」(短編集。ハヤカワポケットミステリ「贋作展覧会」は全作品の翻訳ではない)

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雑誌「ネムキ」2008年11月号に「怪盗アルセーヌ・ルパン 八点鐘」掲載

JET氏による漫画化。今回は事件4「映画の啓示」。

朝日新聞出版 最新刊行物:雑誌:ネムキ
http://publications.asahi.com/ecs/21.shtml
朝日新聞出版 最新刊行物:雑誌:ネムキ:ネムキ 2008年11月号
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=9840

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「三十棺桶島」が映画化か

「三十棺桶島(10)」の映画化の話があるようです。

映画ニュース 「変態村」監督、アルセーヌ・ルパン・シリーズの『三十棺桶島』を映画化か - allcinema
http://www.allcinema.net/prog/news_details.php?NsNum=4122
Rumor(噂)レベルの話題として扱われている。

「変態村」監督、アルセーヌ・ルパン・シリーズの『三十棺桶島』を映画化か
2008/07/08
 「変態村」のファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督は、新作「Vinyan」に続く次回作として、モーリス・ルブランによる『アルセーヌ・ルパン』シリーズの中でも伝奇色の強い異色作といわれる『三十棺桶島』(『棺桶島』)の映画化を予定していることを明らかにした模様。


French Mania News -- フランス映画最新情報:「変態村」監督、アルセーヌ・ルパン・シリーズの「三十棺桶島」を映画化か
http://frenchrose.blog88.fc2.com/blog-entry-185.html
「変態村」のあらすじだけ読むと「三十棺桶島」を選ぶのは理解できる。何てタイトルだと思ったら、原題「CALVAIRE」は殉教という意味らしい。

Interview de Fabrice du Welz(仏語、2008年4月14日付)
http://strictement-confidentiel.com/content/view/610/57/
もともと2005年ごろからテレビシリーズの話としてタイトルを挙げていたらしい。おそらく次の映画がそれになるだろうといっているようだ。

Maurice Leblanc (II) - News(英語)
http://www.imdb.com/name/nm0495728/news
Fabrice Du Welz Preps 'Coffin Island'(2008年7月7日付)
来年から製作開始できればいいのだが、と答えている。

L’ile aux 30 cercueils deception - Le Didi Club(仏語、2008年10月5日付)
http://didiklub.canalblog.com/archives/2008/10/05/10834926.html
脚本執筆中らしい。ロケ地(なのか設定なのか)はフェロー諸島になるらしい。


「三十棺桶島」は1970年代にテレビドラマ化されていて、ドゥ・ヴェルツ監督もこれを見たらしい(上記2008年10月5日付の記事)。
"Ile aux trente cercueils, L'" (1979)(英語)
http://us.imdb.com/title/tt0169519/
L'ile aux trente cercueils - Edition 2 DVD Amazon.fr(仏語)
http://www.amazon.fr/dp/B0002RK9BQ

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アルセーヌ・ルパン参考文献をアップ

ブログで触れた記事や、参考にした本などをまとめてみました.

アルセーヌ・ルパン参考文献

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サモトラケの勝利の女神 - ルパン最後の事件(21)

敵が終結した銀行から無事帰還した主人公は「勝利だ!」と叫ぶ(偕成社全集「ルパン最後の事件」P236)。それが乳母と同じ名前なものだから、乳母は何事かと驚いて飛んでくる。その乳母にさては自分の名前に飽きたな、変えろ、と言って出した名前がサモトラケである。

「湯たんぽだ、サモトラケー(ギリシアの島。サモトラケー沖海戦でギリシア海軍が勝利した地として有名)? 湯たんぽとは、すばらしいぞ! そうだ。この勝利を意味する島の名前を、おまえの苗字にくっつけたらどうかね? サモトラケーなんて、かなりいい名前だぞ!(略)」

※括弧内は割書きの訳注


サモトラケー(サモトラキ、サモトラケ)はギリシャにある島で、古代には神殿があった場所。
サモトラキ島 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A2%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AD%E5%B3%B6

お前の苗字に付けたらどうだというのは、ヴィクトワール・ド・サモトラケ(フランス語読みだとサモトラス?)と名乗ればどうか、と言っているわけである。フランス語でヴィクトワール・ド・サモトラケすなわちサモトラケのヴィクトワール(La Victoire de Samothrace)といえば、これ。

《サモトラケのニケ》 ルーヴル美術館(外部リンク)
古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術 : ヘレニズム時代のギリシア美術(前3-前1世紀):サモトラケのニケ ルーヴル美術館(外部リンク)
ルーヴルの至宝 - デカダンとラーニング!
http://blog.goo.ne.jp/phantom_o_t_o-0567/e/121e5377b68891e22a005a8cbbc737d8


ルーヴル美術館に所蔵されている3メートルは有に越す巨大な勝利の女神像である(台座を除く女神像の部分は約2.5メートル)。頭部を欠いているものの、翼を有した美しい肢体が復元されている。日本では「サモトラケのニケ」と呼ばれているが、ニケ(ニーケー)はギリシア神話の勝利の女神で、ローマ神話ではウィクトーリア(ずばり勝利を意味する)に該当する。フランス語ではヴィクトワール。まったくこの子はいくつになっても…とヴィクトワールが思ったかどうかは分からないけれど、グロッグを飲み干すしかない気持ちは分かる。

サモトラケのニケ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A2%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%B1%E3%81%AE%E3%83%8B%E3%82%B1
テオポリス:ニケ(長音表記ニーケー)
http://www.h6.dion.ne.jp/~em-em/page125.html


この男がこういう戯言を言うのは珍しくない。同じ作中でも、偽名でオートゥイユ=ロンシャン公爵(Archiduc d'Auteuil-Longchamp)だなんて名乗っている(同P64)。これは単にパリ郊外にある競馬場の名前をくっつけたもので、オートゥイユとロンシャンの競馬場は、パリの西の郊外、ブーローニュの森に隣接した東と西にある。オートゥイユは周辺の地名でもあり、高級住宅地のイメージがある土地で、この男が住んでいる場所でもあるが、。イニシャルをあわせたつもりなのかしらん。


他にヴィクトワールの名前候補として出てきた名前は「テルモピュレー」と「トルビアック」である。テルモピュレー(テルモピュライ、テルモピレー)は、古代しばしば戦場となった土地で、紀元前480年にスパルタ軍が少数でペルシアの大軍を相手に3日間善戦したことで有名。その数300対200万とも。この戦いを題材にした映画が「300(スリーハンドレッド)」で、2007年に日本公開された。
映画 300 <スリーハンドレッド> - allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=327079
テルモピュレ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%AC

トルビアックは、フランク王国の建国者であるクロヴィスがアラマン族を打ち破った場所。ヴィクトル・ユゴーはレ・ミゼラブルにおいて、アウステルリッツの戦いをトルビアックの戦いになぞらえている。二つに共通しているものは歴史的大勝利ということか。
Bataille de Tolbiac - Wikipedia(仏語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Bataille_de_Tolbiac
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第三部 マリユス
http://www.aozora.gr.jp/cards/001094/files/42602_25760.html

一つの世紀は他の世紀の模倣にすぎない。マレンゴーの戦いはピドナの戦いの模写であり、クロヴィスのトルビアックの戦いとナポレオンのアウステルリッツの戦いとは、二滴の血潮のように似通っている。


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雑誌「マガジンGREAT」2008年9月号に「雪の上の足あと(八点鐘)」の漫画を掲載

森元さとる氏による「ミステリー・クラシックス」シリーズ、今回は「八点鐘」中の短編「雪の上の足あと(6-7)」(偕成社刊)。

月刊少年マガジンWEB:マガジンGREAT
http://www.gekkanmagazine.com/great/index.html

<既刊>
講談社BOOK倶楽部:mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(1)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=370985X
講談社BOOK倶楽部:mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(2)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=3711250

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上田敏のルブラン言及

アルセーヌ・ルパンの名前を最初に紹介したのは上田敏であるということがしばしば言われるが、その内容について知ることが出来た。

「新青年」1935年3月号に木村毅「ルパン伝来録」(大衆小説随講第3回)という随筆が載っている(『「新青年」復刻版』昭和10年(第16巻)合本2、本の友社、1992年)。ここに、ルパンの名を日本に紹介した人として上田敏が挙げられており、「飛行機と文芸」と題する論文からの引用がある。

次のページによると「飛行機と文芸」の発表は1913年であるという。この時期には三津木春影の「大宝窟王」をはじめ複数の翻案作品が出版されており、翻訳よりは遅れをとっている。しかし、これらは名前を日本語風に改めたものであって、原語をそのまま音写したものとしてはもっとも早い時期のものといえるかもしれない。
上田敏 評論・その他 2-2(発表年順)
http://uraaozora.jpn.org/uedaessay2.html
「定本 上田敏全集 第7巻」編注によると、『大阪朝日新聞』大正2年11月30日、12月1日、2日、3日。


「飛行機と文芸」は新学社・近代浪漫派文庫の「土井晩翠/上田敏」に収録されている。短文ながら知識や含蓄に富んで、鋭い分析を見せていて面白かった。タイトルどおりの話で、神話時代から、ダ・ヴィンチ、ヴェルヌ、ウェルズなども扱っている。
近代浪漫派文庫 収録作品・刊行月 新学社
http://www.sing.co.jp/info/book/roman3.html

曰く、

 仏人モリス・ルブランは近頃「アルセエヌ・リュパン」という近世式の義賊を主人公にした数種の小説を書いて非常に喝采を博した。たしかマアテルリンク夫人の兄に当る人だ。此人の作「そらはねが出来た」という小説にも、自転車、自動車、飛行機等を種に随分詳しい器械学の説明を解りよく、又美しく仕遂げている。(「定本 上田敏全集 第7巻」教育出版センター、1980年、P441-442。漢字と仮名遣いは現代のものに改めた。)


マアテルリンクはメーテルリンクのこと。「マアテルリンク」と題する上田の評論が明治39年3月に発表されている(明治大学講演会の演目)ので、その繋がりで名前を知ったのかもしれない。「そら翼が出来た」というのは「Voici des ailes」というルブランの作品(未邦訳。「これが翼だ」と同じ)で、自転車を礼賛した小説だと言われている。未読なので、自動車や飛行機が登場するか定かではない。

「マアテルリンク」は近代デジタルライブラリーで読める。
国立国会図書館 NDL-OPAC:文芸講話 上田敏著
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000502248/jpn


「ルパン伝来録」にはルパンシリーズの最初の邦訳についても触れられているが、覚束ない書きぶりで未確定の情報が多いので引用は差し控えておく。英訳事情については現物を所有しているようなので確かだろうと思う。最後にルパンものでない短編「赤錆びの鍵」が掲載されている(英訳からの重訳。作品自体は同誌昭和2年夏期増刊号に「赤い鍵」という題で翻訳されている)。(以上敬称略)

□2008/09/26更新

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近代デジタルライブラリーで三津木春影「古城の秘密」提供開始

国立国会図書館の電子図書館である近代デジタルライブラリーに、8月26日の更新で、三津木春影氏の「古城の秘密」(「813(5)」の翻案)が追加されたようです。状態が悪くて、ページに欠けがあったり、部分部分の文字が読めなくなったりしています。また、国会図書館には前篇しか収録されていないようですので、後篇は別途探すしかありません。

近代デジタルライブラリー 国立国会図書館
http://kindai.ndl.go.jp/
国立国会図書館 NDL-OPAC:古城の秘密 : 武侠探偵. 前篇
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000563023/jpn

国会図書館で閲覧したマイクロフィルムでは、真っ黒で何が書いてあるのか殆ど見えなかったけれど、拡大したりパソコンで明るさを調節できるので嬉しいです。それでも文字やページの欠けについては奈何ともしがたいわけですが。(国会図書館の他に所蔵する図書館があるとの情報を頂いたのですがまだ未見です。)

国会図書館に所蔵されているのは他に「大宝窟王」(「奇岩城(4)」の翻案)と「金剛石」(「金髪婦人(2-1)」の翻案)の2作。いずれも収録作品に加わる可能性があります。ちなみに「大宝窟王」は割と状態が良いです。「金剛石」は未見。


内容から少し引用してみます。漢字と仮名遣いは現代のものに改めています。
○押川春浪の序文より

予は此処に奇怪なる本書の複雑極まりなき内容を物語る事を避ける。それは予が、尨大ぼうだいなる本書の原稿を読んだ際に、七百有余枚の最後のページまで、絶大無限の好奇心に吊られて、息も吐かれぬ面白さを感じた、同じ経験を読者に強いんとするからである。

○本文より

 曲者は卓子ていぶるの水瓶を取り、一口ゴクリと飲み、手巾はんけちしめして額の汗を拭き終わると、またもや謙助の傍に腰掛けて物柔かに
 『所でまだ我輩の名前を名乗らなかったっけね、では自分から紹介と出掛けようか。』と懐中ポッケットから一葉の名刺を取出し、『我輩は誰でもない、紳士ゼントルマン強盗の仙間せんま龍賢りゅうけんさ。』
 仙間龍賢! 神出鬼没、国内随一の大強盗! 謙助は縛られた身体からだに、強烈な電気を掛けられたようにピクリとした。

ルパンの名前は仙間龍賢となっています。アルセーヌ・リュパンを音写したようにも思えます。紳士ゼントルマン強盗なるもまたよきかな。

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三つの罪 - 813(5)

※以下の文章は「813(5)」「水晶の栓(7)」を中心に複数作品の内容に触れています。※


「813(5)」の第2部は「アルセーヌ・ルパンの三つの罪」と題されています。この三つの罪は、一般的に「殺人」とされていますが、もう少し細かく落とし込むと次の3つになります。

  1. 愛する女性を殺してしまったこと
  2. 無実の人間を死刑に追いやったこと
  3. 一人の青年を陰謀に巻き込んだ結果自殺させたこと

三つの罪に耐えられなかったルパンは生から逃避します。

しかしシリーズは続きます。「813(5)」の後に書かれた「虎の牙(11)」を読むと、ヒロインに「813(5)」のヒロインが重ねあわされている場面があり、かなり「813(5)」を意識して書かれていることが分かります。しかし「813(5)」と異なり、ルパンは愛する女性を死から救うことが出来ました。これは一つめの罪への癒しと捉えることが出来ます。

残りの罪に関しては、一見したところ言及する作品はないように見えます。しかし「水晶の栓(7)」を、無実の人間の死刑を阻止する話、一人の青年をまっとうな世界に帰す話だとすると、「813(5)」の後に書かれたわけが浮かんできます。時代設定は「813(5)」の前ですが、これもルパンの贖罪の話だと考えることが出来ます。

亡くなったもの、喪ったものに対して罪を償うことは出来ません。良心に安寧を得ようとするのならば、同等のことをして罪をあがなう他はないのです。この三つの罪に関しては、贖罪や救いが必要だったのです。作者がなぜ三つも罪を重ねさせたのかというと、並みの罪では、ルパンが誤魔化して言い逃れができてしまえるからだと思います。特に一つめのものは本当の罪人なのだから、相手が違えばそこまで良心が咎める必要なかったでしょうし、裏切られたのはルパンのほうなのです。だから一つめと、二、三つめは救済の方向が違うのだと思います。

「殺人を犯さない」ことが強調されるようになったのは「殺人」の後であることを考慮に入れなくてはならないでしょう(それまでは軽口か、実績を示すものとして出てきます)。「ルパンは人を殺さない」ということは「ルパンは人を殺す」ことと裏表にあるのです。また「水晶の栓(7)」では集団の規律としての意味も強いと思います。


この3つの作品は「虎の牙(11)」の発表が遅れたものの、執筆順(正確には初出順)では並んでいます。
「813(5)」→「ルパンの告白(6)」→「水晶の栓(7)」→「虎の牙(11)」
という順になります。「金三角(9)」「三十棺桶島(10)」は良心の側に立つものの贖罪の意味合いは見られません。メインを張っていないからというのもありますが。

ただし「813(5)」の後はどこかダークな感じで、血が流れることも少なくありません。そのうえ、悪や不正に対して容赦のなさが加わります。この寛容さを欠いたところが少し息苦しくもあります。

どこかずれのある正義と呼べる時期も「虎の牙(11)」で終わります。第一次大戦後、シリーズの仕切り直し的な作品が「カリオストロ伯爵夫人(13)」です。この作品には、いくつか象徴的な出来事があります。アルセーヌ・ルパンという名前を隠すこと。人殺しをしないこと。拳銃を持たないこと、時代から離れること。等々。シリーズ後半のルパンは、前半のルパンとはある程度切り離され、新たな道を歩くことになります。


以上はあくまでシリーズを俯瞰して各作品の立ち位置を考えたものです。これをそのまま各作品の解釈に反映できるかどうかは別な問題ですし、行動の是非を問うわけではありません。


「アルセーヌ・ルパン」作品リスト
ルパンシリーズ作品関係図


※以上の文章は「813(5)」「水晶の栓(7)」を中心に複数作品の内容に触れています。※

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横溝正史「殺人暦」

『殺人暦』春陽堂文庫、1995年
収録作品:殺人暦/三本の毛髪/丹夫人の化粧台/髑髏鬼

宝石商人の屋敷に、5人の人物と警視庁の探偵が集まった。5人にはともに新聞で殺人広告が出されている。15年前のある出来事に関わる共通した因縁があるらしい。

なんかいつもと文体が違うような。通俗的な設定を盛り込みすぎて散漫な印象がある。せめて脱出トリックが示されていれば。それより、服部新一という名前につい反応してしまう。

この「殺人暦」に登場するのは怪盗・隼白鉄光。三津木春影のルパンものの翻案作品『大宝窟王』におけるルパンの名前。事件や物語は独自のもので、所々のシーンに「813(5)」の面影がある。人物配置について原作を意識した部分があるような感じはする(原作とは違うのだけど。鉄光が明朗で、結局役に立ってないような感じがまたいい。


最初春陽堂文庫で読んだのだけど、「殺人暦」の情報を検索していて気になる情報を見つけたので角川文庫版も探してみた。

『殺人暦』角川文庫、1978年
収録作品:恐怖の部屋/殺人暦/女王蜂/死の部屋/三通の手紙/九時の女

このうち、「九時の女」はルパンシリーズのある作品が下敷きになっている。トリックやプロットが似ているというのは言い出すと限がないけれど、これは確実に言える部類だろう。急場に大金に窮していた作家が、電話で謎めいた依頼を受ける話。捻りをきかせているし、立場が弱い人物かと思ったら、晴れ晴れと解決するからにんまりしてしまった。


贋作・パスティーシュリスト

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贋作・パスティーシュリスト

読んだり確認したりしたもののメモ。分類については恣意的なもので、(X)は(A)に統合しても良いかもしれない。長編・短編の区別は単独で単行本に出来る長さかどうかに拠ったので、適切でないかもしれない。

贋作・パスティーシュリスト

贋作・パスティーシュ(A)
パスティーシュであることが明白であるもの

○贋作・パスティーシュ(B)
登場がサプライズであるもの。または、明示してはいないが関係が仄見えるもの(本人が登場しない作品も含む)

○贋作・パスティーシュ(C)
関係性が薄いもの。または、パロディ

贋作・パスティーシュ(X)
翻案。翻訳の黎明期における翻案というよりむしろパスティーシュに近いもの

○贋作・パスティーシュ(Y)
換骨奪胎。または、趣向やトリックに影響が見られるもの


ココログに新しくウェブページ機能が出来たけれど、デザインに自由が利かないところと検索避けが出来ないのがネック。ルパンシリーズは割り切って書いてるけれど、ネタバレになるようなものは出来れば検索避けしたい。ルパンの登場を明示していない作品は、先に知って読むのはまっとうな読み方ではないと思うので直にリンクしていない。

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「横溝正史探偵小説選 I」入手のこと

収録作品は以下を参照のこと
オンライン書店ビーケーワン:横溝正史探偵小説選 1 論創ミステリ叢書 35
http://www.bk1.jp/product/03032950
オンライン書店ビーケーワン:横溝正史探偵小説選 1 論創ミステリ叢書 35:作品一覧
http://www.bk1.jp/webap/user/DtlBibCollectionList.do?bibId=3032950
創作・翻案篇は「霧の夜の出来事」(P3)から「榧の木の恐怖」まで、
評論・随筆・読物篇は「ビーストンの面白さ」(P369)から「アンケートほか」まで。
最後に横井司氏による解題がついている。

帯つきで、帯の文句はこうです。

発見原稿「霧の夜の出来事」
ほか、横溝ルパン大活躍!
単行本未収録作、ここに一挙収録

「霧の夜の出来事」は未発表原稿発見ということでニュースになってましたね。単行本未収録で、児童向け以外のものを中心に収録したようです。児童向けは「II」でまとめられるようです。

さて、横溝がルパンの翻案を?!(敬称略)というので注目していた2作「ルパン大盗伝」と「海底水晶宮」。(「殺人暦」もだけど)ルパンの話し言葉がじじむさい(笑) 「海底水晶宮」はそこまででもない(若い子と○○するからね)。文章は至極読みやすい。

どの作品の翻案か別途まとめるつもりですが、どちらも原作とはかなり変えていて、暗号も一から作っています。「ルパン大盗伝」のほうは想像するだに笑えるというようなシーンが多くて(本人は笑い事じゃないのだけど・笑)ナンセンス度がちょっと高いです。「海底水晶宮」には三津木春影の翻案作品へのオマージュが感じられました。それを含めて楽しめました。

他のものは少しずつ読んでます。評論には対象作品のネタバレがある旨の注が付いています。

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「横溝正史探偵小説選 II」発売予定

刊行予定 論創社
http://www.ronso.co.jp/kankouyotei/kankouyotei.html

横溝正史探偵小説選 II 【論創ミステリ叢書】
横溝正史(著)
9月下旬発売予定

大たんふてきな怪人をおって、われらが名探偵のかつやくだ!
『怪盗X・Y・Z』幻の第4話、初収録

論創社の「横溝正史探偵小説選」第2弾。収録予定の「笑う紳士」にもルパンものの影響があるとか。


「横溝正史探偵小説選 Ⅰ」は入手しました。初回配本分がはけてしまったのか、結構入手難でした。今は手に入れただけという状態ですので、落ち着いたら。その前に図書館で借りた「殺人暦」を…

「横溝正史探偵小説選 I」発売予定


□2008/11/01
オンライン書店ビーケーワン:横溝正史探偵小説選 2 論創ミステリ叢書 36
http://www.bk1.jp/product/03042824
オンライン書店ビーケーワン:横溝正史探偵小説選 2 論創ミステリ叢書 36:作品一覧
http://www.bk1.jp/webap/user/DtlBibCollectionList.do?bibId=3042824

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雑誌「名探偵コナン&金田一少年の事件簿」Vol.8 探偵図鑑:アルセーヌ・ルパン

バックナンバーの話ですが、探偵図鑑というコーナーにアルセーヌ・ルパンが登場してました(1ページ)。

ラッ金田一ネットワーク:『コナン&金田一』リスト
http://klmn.cside21.com/kindaichi/conan/
名探偵コナン&金田一少年の事件簿 第8号 [2008-8/10号][講談社発行]
探偵図鑑 Vol.6 アルセーヌ・ルパン

この号でルパンなのは講談社だからかなあと思ったり。小学館からは単独シリーズとしては出ていないはず。杉下右京は、相棒のノベライズが小学館出たからかなと思ったり。あまり法則はない?


この雑誌出ているのは知っていたけれど、手に取ったのは初めて(今はコナンのラストが気になる程度なので)。奇数号は小学館(少年サンデーの増刊扱い)から、偶数号は講談社(週刊少年マガジンの増刊扱い)から発行されているんですね。赤塚不二夫氏の本も2社の合同企画で出版されてましたね。出版社の系列を超えた思い切った企画だったようですが、こういう共同出版と言う形も増えていくのかもしれません。


ついでにメモ。『名探偵コナン』の単行本の表紙折り返しには4巻に登場してました。
名探偵コナン応援サイト 毛利小五郎探偵事務所:青山剛昌の名探偵図鑑
http://conan.aga-search.com/501-2-28meitanteizukan.html
4 アルセーヌ・ルパン モーリス・ルブラン 怪盗紳士

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メルクリウスとヘルメス

「アルセーヌ・ルパン」ページのタイトルを変えてみた。ちょっとした気分転換。
≪Au dieu Hermes≫と来てピンと来る方は相当の物知り。(私が物を知らないだけか)
一つ、これは「八点鐘(12)」の8番目の短編≪Au dieu Mercure≫をもじったもの。
もう一つ、メルキュール(Mercure)はローマ神話のメルクリウス、エルメス(Hermes)はギリシア神話のヘルメス(ヘルメース)のことで、メルクリウスはヘルメスと同一視されている。(同一視されているというのはどういうことなのか、ギリシア神話とローマ神話の関係は昔からよく分からない。)

「八点鐘(12)」のの8番目の短編は、「メルキュール骨董店」と訳されているけれど、骨董店の看板には「メルキュール骨董店」と書かれているわけではなく、≪Au dieu Mercure≫と書かれている。直訳すると

メルクリウス神に(捧ぐ)
メルクリウス神の(ご加護にある)

とかそのあたりだろうか。

メルキュールは何を司る神様なのかというと、雄弁、商業、盗人、旅人etcで、ユピテル(ゼウス)の使者も務める。韋駄天でもある(足が速い)。雄弁や盗人の神ということは、つまりルパンの守護神なのだ(信仰しているかどうかは謎だけど)。だから使ってみたいと思ったのだけど、上手い日本語がないものか。

ところで、フランス語ではHは発音しないのでヘルメスはエルメスと発音される(有名なブランドの会社にこの名前が付いている)。Hermès(本当はアクサンが付いている)という字面をみて思いついた。Herlock Sholmèsの頭と尻尾から3文字ずつ取ると…(エルロック・ショルメス)。

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作品リストの一作のタイトルを「戯曲アルセーヌ・ルパン」に改めること

ルパンシリーズのうち3番目に刊行された作品で、1908年に初上演された戯曲作品を、今までは「ルパンの冒険(3)」としていたが、「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」に変更した。

「アルセーヌ・ルパン」作品リスト

理由は「ルパンの冒険」と題するこの作品の邦訳は、英語のノベライズ版(原題は戯曲と同じく「Arsene Lupin」)からの翻訳が多く、小説であるというイメージが付いてしまっていること。元の戯曲とノベライズ版では、内容が一部異なること。やはり翻訳されたのは大きい。

私が扱うのは戯曲版がメインになるし、一幕ものの戯曲「アルセーヌ・ルパンの冒険(A5)」との区別が容易になるというメリットもあるので変更することにした。なお、「戯曲アルセーヌ・ルパン」は論創社版のタイトルから取ったが、以前(大正時代)にも同じ題で翻訳されたことがあるらしい。


それから、作品リスト試案の「奇岩城(4)」に対応するタイトル「レギーユ・クルーズ」を「エギーユ・クルーズ」にした。冠詞は日本人には分かりにくく、翻訳で使われるエギーユ・クルーズの方が馴染むように思うので。(考察するときは冠詞付で考えないといけないとは思います。)

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ドラマ「33分探偵」に登場するフィギュア

「33分探偵」の主人公の事務所の机の上にホームズ、ポワロ、ルパンがいるらしい。
ルパンに見えなくもないけれどどうなんだろう?

33分探偵 - フジテレビ
http://wwwz.fujitv.co.jp/33tantei/

鞍馬六郎探偵事務所の看板をクリックする33という数字が出て、クリックするたびに数字が減って、0になるとクリックできるようになる。
そして「六郎の机」をクリック。写真はBACK、NEXTをクリックすることで何枚か見られる。
「事務所の内装」のところでは金田一耕助と工藤俊作(ドラマ「探偵物語」)がいる。
小酒井不木全集っていうのがなかなか乙ですね。

そことは別に、下にある「データ放送」のリンクをクリックしたらはっきり見られるけれど、怪傑ゾロみたいな目隠しをしている。これファントマですよね(笑)


ということで、実際のドラマも(初回ぶりに)見てみたけど、映るのは背中だけで判定できなかった。話のほうは初回はインパクトでいけたけど今回はだらけて見えてしまった。フジの自局押しなところがあまり好きではないからかも。めざまし(マスコットの)はいい味出してた。似非コナン君はサマータイムマシン・ブルースの人? カッツミーはENDでも止まってて偉い!


フィギュアのことはこちらのブログで知りました。
鞍馬六郎「名探偵フィギュアコレクション」:BIG SISTER JUN'S MEMO:So-net blog
http://endli9cheri12.blog.so-net.ne.jp/2008-08-13

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怪盗ハムセーヌ・ハムパン

私は見たことがないアニメなのですが、「はたらキッズマイハム組」に怪盗ハムセーム・ハムパンが登場したようです(笑)

テレビ朝日|はたらキッズマイハム組
2008年8月3日 第42話「怪盗の星!狙われたパリ・スポーツの祭典!!」
http://www.tv-asahi.co.jp/maihamugumi/contents/story/0042/

はたらキッズ マイハム組:各話あらすじ
2008/08/03予定 第42話「怪盗の星!狙われたパリ・スポーツの祭典!!」
http://member.toei-anim.co.jp/ctr/app/001/showSummary.php?TVNAME=myham&STORY_NO=42&tplname=myham_t

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アルセーヌ・ルパン記事一覧(仮)

ブログを書いているのはつまるところ自分のメモなので、閲覧の際の利便については疎かになってしまう。でも記事タイトルの一覧がないのはなかなか不便。これでも焼け石に水のような気がするけど。

アルセーヌ・ルパン記事一覧

ココログではタイトル一覧が供給されていなくて、JavaScriptで生成するものをいくつか試してみたものの、都度HTMLを読み込まなければならないとしたら重さに変わりなかった。ココログは無料で手間をかけずに書けるのがいいのだけど。

主な記事だけをまとめたものはこちら
アルセーヌ・ルパンメニュー


次の一覧はアルセーヌ・ルパンカテゴリの最新記事。

アルセーヌ・ルパン」カテゴリの記事


投稿順ではなく更新順なので、修正したり追記したりしたものも上位に表示される。ココログでは個々の記事に同じカテゴリの最新記事一覧が表示されるのだけど、それを応用したもの。さらに応用して「アルセーヌ・ルパン」ページ(こっそりページタイトルを変えた)にもつけてみた。FTPがないので一つずつアップロードするのは面倒だと思っていたけれど、こうやって利用できるとはありがたい。


カテゴリの最新記事表示については以下のサイトを参照した。
風柳亭 - 別館:書庫のある庵 -: 【ココログ】カテゴリ別最新記事一覧
http://furyu.tea-nifty.com/annex/2007/04/post_c45e.html
風柳亭 - 別館:書庫のある庵 - 【ココログ】カテゴリーの最新記事表示用SSIを取得するブックマークレット
http://furyu.tea-nifty.com/annex/2008/01/ssi_53a1.html

□2008/09/03
アドレス変更

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「横溝正史探偵小説選 I」発売予定

刊行予定 論創社
http://www.ronso.co.jp/kankouyotei/kankouyotei.html

横溝正史探偵小説選 I 【論創ミステリ叢書】
横溝正史(著)
8月25日発売予定
新発見原稿「霧の夜の出来事」ほか、単行本未収録作を
一挙集成。

創作・翻案編と、評論・随筆・読物編の2種に分かれていますが、このうち、「ルパン大盗伝」「海底水晶宮」の2作がルパンものの翻案と言われています。
まさか実際読めるようになるとは思ってませんでした。凄い! 嬉しいです。

「フアーガス・ヒユーム」は「二輪馬車の秘密」の作者ですよね。「カミ礼讃!」ってピーエル・カミなんでしょうか。評論・随筆系も面白そうです。


実はこちらも見逃せません。(私は読んだことがあります)

八一三号車室にて【論創海外ミステリ】
次回刊行予定 アーサー・ポージス(著) 森英俊(編) 森英俊他(訳)
9月10日発売予定


ポージスの傑作集が次回配本予定にあるのは知っていて、そろそろ詳細出ているかなと調べに行ったら思わぬ収穫でした。

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検索フォーム設置のこと

「アルセーヌ・ルパン」ページに、かなり前(2年も前だ)にいじっていたのを発掘したので付けてみた。
ブログ内検索とは別です。


こちらの「WwwSearch Ver3.15 - 検索フォーム」を利用しました。
とほほのCGIソフト集
http://www.tohoho-web.com/wwwsoft.htm

ファイル置き場にHTMLを無理に置いている状態なので

ココログにはCGI置けない
niftyはCGIとHTMLのディレクトリが別
ココログに置くHTMLはユニコードにしないと文字化けする
使用するCGIで検索できるのはシフトJISまたはEUC

などがあり、ちょっと小細工してあります。
また、niftyのほうにも同じファイルをアップロードしなくてはならない関係上、検索内容が実際のページより古い可能性があります。

Iframeで問題点を解決? 複数の文字コードをform から送信する方法2
http://search.web-sun.com/zatu/charset2.html

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アルセーヌ・ルパンカテゴリの記事が300突破

いつの間にそんなに書いてたんだろう。とりあえず書くことが優先で、あまり方向性は考えてません。雑多ブログの一つの話題だから(って逃げる)。

ルパンシリーズにはリュパンかルパンかという問題があって、もっと探ってみようと決めたときからどっちにしようか迷ってはいたのだけど、どう発音するかって知らなかったし、最新情報までカバーしようとするとルパンのほうが手っ取り早かったので。だけどルパンシリーズ人名リストなんかはリュパンにしている。「奇岩城の大嘘」ではどうだっけと確認したら、名前は「アルセーヌ・リュパン」だけど、「ルパンシリーズ」(新潮だから?)なので、まあ気負うことはないかなあと。

私が惹かれるのはルパンの圧倒的な生気。だけど、一番は自分が掘った墓穴の深さに落ちてはじめて気づきました的なところだったりする。そこを下手にツッコんでしまうと、道化じゃないかと思われてしまうから難しい。堅気の生活送っていない時点でおろかと言えばおろかで、そういうところを含めて好きというかいとおしいのだけど。

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映画「ルパン」まとめ

2005年9月日本公開

角川エンタテインメント:ルパン コレクターズ・エディション 通常版
http://www.kadokawa-ent.co.jp/detail/NHBS-50006.html

□関連記事
映画「ルパン」キャスト表
映画「ルパン」感想
映画「ルパン」感想 2
映画「ルパン」感想 3
映画「ルパン」感想 4
映画「ルパン」感想(DVD視聴)
映画「ルパン」 新しい橋?
映画「ルパン」の元ネタ
映画「ルパン」 アルセーヌ・ルパンとラウール・ダンドレジー
映画「ルパン」 ルパンのプロフィール
映画「ルパン」:父譲り母譲り
映画「ルパン」:ルパン
映画「ルパン」:ボーマニャンと王党派
ボーマニャンの使用武器はモーゼル・ミリタリー
ルパン:サヴァット
ルパン:柔術
ルパン:フェンシング
「ルパン」ジャン=ポール・サロメ、ローラン・ヴァショ著/番由美子訳
DVD「ルパン コレクターズ・エディション」
ドキュメンタリー「Arsene」感想
ドキュメンタリー「Arsene」の引用映像について

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ルパンの涙(その7) - おわりに

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


エギーユ・クルーズは冒険、波乱の生き方の象徴です。その反対の平穏な生き方の象徴がヒロインといえるでしょう。ルパンはヒロインを選択したものの、波乱の日々との別れを先送りにした結果、おそろしい代償を払うことになります。愛のために涙を流すほどの良心があるなら何故もっと早く行動しなかったのかと言いたくもなるけれど、そんなことを言っても仕方がない。すんなり家庭に収まるにはまだ若すぎるのです。

「(略)わたしがこれまでの冒険生活で味わった、どんな自由気ままなたのしみのどこをさがしたって、わたしに満足しているときの彼女のまなざしがわたしにあたえてくれる喜びに匹敵するものがないんだよ……彼女に見つめられると、わたしは全身から力がぬけるのを感じ……思わず泣きたくなるのだよ……」
 ルパンは泣くのだろうか? 涙が彼の目をぬらすのを、ボートルレは直観的に感じた。ルパンの目に涙が、愛の涙が!(岩波P375)

ルパンと出会ったときからヒロインの目が悲しみの色を帯びているのはルパンのせいです。だからこそ、嬉しさをたたえた眼差しにであったときの喜びがいっそう大きいのでしょう。

ところで引用部の後半の原文はこうなっています。

Je me sens tout faible alors... et j'ai envie de pleurer...

Pleurait-il? Beautrelet eut l'intuition que des larmes mouillaient ses yeux. Des larmes dans le yeux de Lupin! des larmes d'amour!

pleurer、Pleuraitと、「泣く」と言う言葉(動詞pleurerの活用形)が連続して使われています。この単語は即ち泣く(pleure)です。暗号解読のときに挙げられた4つの単語は、いずれも並列して使っわれたり、連続して使われたりして強調されている箇所があります。ここも意識して使っていると考えます。
川、証拠、泣く、空洞の - 奇岩城(4)

"..eu.e"をキーワードと捉えるのは遊びが過ぎると考えるかもしれませんが、私はこれにより出発点は間違ってなかったと思いました。皮肉や嘘で固められたルパンが、最も裸に近い心情を見せるのはやはりここボートルレと二人のシーンだからです。"..eu.e"型の単語は次の箇所が最後だと思います。

「(略)エギーユ・クルーズの冒険は終わったのではないのか?(略)」(岩波P375)

Est-ce que l'aventure de l'Aiguille creuse n'est pas finie?

エギーユ・クルーズの物語はこのセリフとともに終わったと言えます。エギーユ・クルーズの放棄は終わりました。しかし、放棄したからといって、過去が清算されるわけではありません。その先に待ち構えているのは、エギーユ・クルーズに関わらなかった男、ルパンの顔を知り過去を知る人物です(ルパンさえも奪った名前というのは私はありうると思います)。


○その後
「奇岩城(4)」より先の話のネタバレになります。まっとうな人間になろうとしてなれなかったルパンは、その後も変われませんでした。ヴィクトワールにもこう言われています。

「あなたのほうは、まともな人間ではない……」(偕成社文庫「813」P152/813(5))

やはりまともな、まっとうな(honnete)人間ではないのです。それなのに自分では一歩前進したと思っているところがまた悩ましい(紳士強盗は捨てたけれどやっぱりまっとうじゃない)。それでもルパンは「813(5)」を経験して、生き方が変わったと思います。さすがに生き方を変えざるを得なかったというべきかもしれません。たとえば、次に引用する箇所は明確に「813」を意識しています。

《親分、まともな人間になって、朝はきょうも一日働くぞと思いながら起き、晩はくたびれて寝るということが、どんなに楽しいか知ってもらいたいんですよ。でも、あなたはそれをご存じでしょう? アルセーヌ・リュパンも、独特な仕方で、まともな人間なんですよ。ただ、少し特別で、あまりカトリック的ではありませんがね。しかし、なあに! 最後の審判のときには、彼の善行書は、びっしり記入されていて、ほかのことは帳消しになりますよ。(略)》(創元推理文庫「水晶の栓」P307-308/水晶の栓(7))

「それで、コスモ・モーニントンのあだをうち、正当な相続人を見つけて守ってやり、当然、そのひとたちのものである二億の金を仲よく分け合うようにするのが、おれの任務なのだ。目的はそれがただひとつ、それで全部だ。これは正直ものの任務じゃないかね、どうだ」
「そうです、しかし……」
(略)
「よろしい、おまえがおれの行動を虫眼鏡でのぞいてみて、ほんの少しでも気にくわんんことがあったら、(略)そのときは、おまえの両手で、おれの首をしめあげるがいい。(略)」(創元推理文庫「虎の牙」P63/虎の牙(11))


「虎の牙(11)」は「813(5)」の後の作品で、ルパンが正直者つまりまっとうな人間として全うできるかが課題として示されています。「水晶の栓(7)」の事件は「奇岩城(4)」「813(5)」より前ですが、この箇所は「813(5)」を踏まえたものでしょう。その意味で「水晶の栓(7)」は「813(5)」の前でもあり、後でもあります。


前→ルパンの涙(その6) - ボートルレ2

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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ルパンの涙(その6) - ボートルレ2

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


ルパンとボートルレの一度目の対面についてはとりわけ気をつけて読むべきだと思います。

二人とも芝居をしている、少なくとも上辺を繕っています。警戒心のない笑みを浮かべるボートルレも、ルパンに対する用心を怠っていません。たとえば、ブレドゥーがボートルレを刺したことは、ルパンは自分の関与したことじゃないと言い、ボートルレは普段のあなたのやり口じゃないと言っていますが、実際はルパンの言葉をさらさら信じていない、ルパンが指示したと思っています(グラン・ジュルナルの記事)。思惑があって対面しているのだから、その思惑を図るべきでしょう。


 ああ! なんと皮肉たっぷりな美しい笑いが少年の顔をかがやかせていたことか! くちびるの上の新しい笑い、ルパンの影響ではないかとさえ思えそうなその笑いかた……そして彼をたちまち敵と同じ水準にまで引きあげた、この横柄な、親しい口のききかた!(岩波P154-155)

「ルパンの影響ではないか」。最初ルパンとは全く対照的な皮肉のない笑みを浮かべていたボートルレの、別な一面を引き出したのはルパンに他なりません。それに「皮肉たっぷりな美しい笑い」とはルパンの笑いにそっくりです。

ああ! この笑い! 若くて明るいこの笑いこそ、たのしげな皮肉のまじったこの笑いこそ、たびたびわたしを愉快な気持にさせてくれたものだった!……わたしは身ぶるいした。まさか、そんなことがあるだろうか?(岩波P137)


相手を利用しようとするとき、利用しやすい人間と、利用しにくい人間がいます。ボートルレはルパンの相手としてはうってつけでした。影響を受けやすい年代で、とことなく自分に似たところも持っている。会見の中で、ルパンは、ボートルレが虚飾を捨てて闘争心をあらわにする瞬間を待っていたのです。

 ルパンのほうには、ついににくむべきライバルの剣とぶつかった決闘者の喜びが、その目の光の中に感じられた。(岩波P151)


さて、ボートルレは『アルセーヌ・ルパン――その古典的かつ独創的方法』(岩波P84)という小冊子を物していました。その内容はこのようなものです

あの怪盗の手口が非常にくわしく描きだされていて、実行方法、どれもこれも特殊な策略、新聞への投書、脅迫、ぬすみの予告など、要するに、これと目ぼしをつけた犠牲者を<料理する>ために使用するトリック、相手の精神をうまく利用して、みずからわざわざ仕組まれたわなに、いわば同意の上でおちこんでいくようにするためのすべてのトリックが示してあった。(岩波P84)

まず、これを読むかぎり、ボートルレの考察にはある要素が欠けています。「変装」です。まだ研究が進んでないわけです。作中ではボートルレがルパンの顔をどこまで知っていたかの記述を避けています。ルパンの逮捕は10年近く前で、以降用心を怠っていないとすれば、ボートルレが正確な顔を知らないことはありえます。

そして、「相手の精神を利用し自らの意思で行動したかのようにみせてルパンの仕掛けた罠に落としこむ」というやり方は、「獄中のアルセーヌ・ルパン(1-2)」などに顕著ですが、「奇岩城(4)」の構造を示唆していると思います。また、この小冊子は、マスコミの誇張があるにせよ、ルパンのやり方を揶揄するものでした。それを知ってちょっかいを出さないルパンではありません。一つからかってやろうという気持ちはあったのでしょう。


前→ルパンの涙(その5) - ボートルレ1
次→ルパンの涙(その7) - おわりに

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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ルパンの涙(その5) - ボートルレ1

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


誘拐もエギーユ・クルーズもルパンの問題で、ボートルレを巻き込む必要はなかったはずです。でもボートルレには、単なる発見者だけではなく他のものを求めていると思います。

「ボートルレ君、なぜわたしが君を自由に行動させてきたか、わかっているかい? 何週間も前から、君をふみつぶそうと思えばできたのに、そうしなかったわけが? 君がここまでたどりつけたわけが、わかっているかい?(略)君には分かっている。そうだろう? エギーユ・クルーズとは、つまり冒険そのものなのだ。だから、それがわたしのものであるかぎり、わたしは冒険家なんだ。エギーユ・クルーズを返してしまえば、いっさいの過去はわたしから切りはなされ、そして未来が始まるのだ。(略)」(岩波P354)

君には分かっているだろう。こんなセリフ言える相手がルパンにはいません(そもそもこういうストレートな物言いをまずしません)。いないから引っ張ってきた、自分と同じ知識を得て、自分と同じ感じ方の出来る者を。エギーユ・クルーズを追うということは、ルパンの追体験をすることに他なりません。しかしボートルレの立場は理解者ではなく、証言者の立場だと思います。ルパンは答えを求めずにしゃべっていますし、まっとうなボートルレが理解者たりえたかというと疑問だからです。

ボートルレは途中でルパンと自分とは同じ手段を用いていると考えましたが、これは当たっています。同じ手段とは1815年のパンフレットと暗号の紙片の研究です。暗号の紙はルパンが落としていきました。パンフレットはマシバン経由でボートルレに伝えられました。歴史文芸アカデミー会員の太鼓判つきで。(ボートルレ自身はエギーユ・クルーズの存在証明をしていないのです。確実にあったことが示されているのはマリー=アントワネットの逸話ぐらいしかありません)。

ルパンが探させたと考えるのであれば、数々の妨害は何だったのか。私は“何も分かっていない”ボートルレに発見して欲しくなかったからと考えます。そこまでするかと思うかもしれませんが、ルパンは悪党です(あまり声高に言いたくないけど)。自分の都合が第一なのです。数々の妨害により、エギーユ・クルーズの存在を証明し、歴史を暴き、謎を解く方向に向かわせています。


ところで、エギーユ・クルーズを放棄すれば過去と切り離され未来が始まるとは、なんとも虫のいい考えです。この思考回路は「遅かりしエルロック・ショルメス(1-9)」でも見られます。盗みの現場を女性に見られたことに恥じるものの、盗んだものを自分の身から離してしまうことで気分が楽になっている。「813(5)」においても、責任転嫁をして自らの罪を無かったことにしようと試みますが、それに失敗したとき、何も考えずにすむ境地に逃げ込むことになります。

エギーユ・クルーズを放棄しても過去の犯罪の事実がなくなるわけではありません。償いもせずのうのうと暮らす。そうは問屋が卸さないというものです。だからショルメスの拳銃には独りショルメスの怨みだけが込められているわけではないのです。


前→ルパンの涙(その4) - まっとうな人間
次→ルパンの涙(その6) - ボートルレ2

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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ルパンの涙(その4) - まっとうな人間

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


なぜエギーユ・クルーズを探させたのか。ヒロインの誘拐と同じ問題で、過去を捨てヒロインと結ばれるためです。

「(略)彼女は、わたしがルパンだったことを、いつか忘れてくれるだろうか?(略)忘れるに決まっているんだ! わたしが彼女のためにすべてを犠牲にしたのだから、忘れるにきまっている。わたしは、エギーユ・クルーズという難攻不落の隠れ家を犠牲にした、わたしの財宝も犠牲にした、わたしの権力も、わたしの自尊心も犠牲にした……これからだって、なんでも犠牲にするつもりだ……わたしはもうどんなものにもなりたくはない……人を愛することのできるまっとうな人間になれれば、それでいい……彼女はまっとうな人間しか愛せないんだから、まっとうな人間になれさえすれば、それでいいんだ……(略)」(岩波P374)

わたしの、わたしの、わたしの…自分のことしか頭にありません。わたしの自尊心も犠牲にした。しかし他人のそれにも気を配るべきでした。とくに「自尊心と意志の権化のような人物」(岩波P379)の場合には。しかしながら他人を思いやれる性格ではありません。隠れ家も財宝も捨てきれないからボートルレを巻き込んだのだし、この台詞自体が自尊心を捨てきれていないことを示してます。


繰り返される「まっとうな人間」。ここで、第1作でのセリフが今更のように響いてきます。

「とにかく、おれがまっとうな人間でないのがうらめしい……」(岩波「怪盗ルパン」P35/アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1))

懲りずにまっとうでない人の道を歩んで来ました。それでも改めて「まっとうな人間」になりたいと願ったわけは「まっすぐな心」を持つヒロインが現れたからです。

「これで、なにもかもおしまいだ……ひとりの若い娘がやってきたのだ、ブロンドの髪、悲しげな美しい眼差し、まっすぐな心、そうだとも、じつにすなおなんだ。そして万事が終わりになった……わたし自身の手でこのとほうもない建築物をこわしてやるのだ……この世には彼女のブロンドの髪……悲しげなまなざし……そしてまっすぐな心しかないのだ……そのほかのものは、みんな、ばかげていて幼稚に思える……」(岩波P353)

まっすぐな心(すなお)、まっとうな人間、どちらもhonnete(正直な、誠実な)という言葉が使われています。二人の立つ位置は全く違うのです。

だから変わりたいと願うわけですが、ルパンがした行為はまっとうになりたい人間がすることではありません。少年に脅しをかけ、老人や幼児に薬を飲ませ、若い女性のトラウマを抉り、恐怖で沈黙を強要した(大怪我はアクシデントだと思いたいけれど。拳銃を持ち出してくることまでは予測できなかったとして)。ルパンが誠実な人間になるのも土台無理と言うほかはなく、結婚生活も遠からず破綻をきたすのが見えています。

ともあれ、誘拐とエギーユ・クルーズの放棄とは、どちらもヒロインとの生活を望むための手段であり、同じときから始まっています。


前→ルパンの涙(その3) - 隠れ処と財宝
次→ルパンの涙(その5) - ボートルレ1

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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ルパンの涙(その3) - 隠れ処と財宝

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


誘拐と同様にエギーユ・クルーズについてもルパンの側の動機、思惑が重要だと思います。なんとなくルパンはボートルレが来るのを待っていたのではないかと思っていましたが、ルパンの涙ではっきりその可能性を考えるべきだと思いました。結論から言って、エギーユ・クルーズはボートルレが発見したのではなく、ルパンが探させたのだと思います。

実際、エギーユ・クルーズに関する情報はすべてルパンから与えられたものです。例外はマシバンですが、そこにもルパンの関与の可能性が見えます。ボートルレが発見した、あるいはルパンが発見させたエギーユ・クルーズとはどんな場所なのか。発見時にこう書かれています。

 陸地から十六、七メートルかなたの海中にある、目には見えないひとつの王国!……ノートルダム大聖堂の塔よりも高く、都市の中の大広場よりもひろい花崗岩の基礎の上に築かれた未知の城砦……なんという力にみちた、なんという安全なとりでだろう!(岩波P306-307)

 ここは避難所であるとともに、とほうもない隠し場所でもある。世紀とともにふくれ上がった歴代諸王のすべての財宝、フランスのすべての黄金、人民からしぼりとったすべてのもの、聖職者からうばったすべてのもの、ヨーロッパの戦場で集めたすべての戦利品、こうした一切のものが、この王家の洞窟の中に積み上げてあるのだ。(岩波P307)

要するに、エギーユ・クルーズは安全な避難所(隠れ処)であり、財宝の隠し場所であるということです。これはボートルレの考えといってよいと思います。期待通りすべての財宝があったかというと、それはボートルレの過剰な期待だったわけですが。

ところが、この隠れ処と財宝という2点は最初から書かれています。

「(略)ほら、君が解読しようとしてもできないあのエギーユ・クルーズの秘密は、ひょっとすると無尽蔵のすばらしい宝かもしれないし……あるいは、目には見えない、ふうがわりな、とほうもない隠れ家かも知れないし……あるいはその両方かもしれない(略)」(岩波P159)

「(略)そうしておけば、おれは、ご先祖のフランス歴代の国王たちがおれのために用意してくれた平和な隠れ家にひっこんで、国王たちが親切にもおれのためにたくわえてくださった財産をたのしむことができるのにな(略)」(岩波P272-273)

誰のセリフかというと、ルパンです。ルパンは最初からエギーユ・クルーズの秘密の答えを言っていました。初回の対面(岩波P159)では、ボートルレの思考能力が回復しきる前に吹き込んでいるし、次の対面(岩波P272-273)では相手を挑発するような言い方をしています。お前はたどり着けないのだと。こうまで言われては追いかけない訳には行きません。あきらめるという選択肢も提示していますが、同時に封じてもいます。これらは私にはボートルレを焚きつけていると思えるのです。

「(略)君がおれをほおっておくわけがないものな。君はへこたれるような人間じゃない(略)」(岩波P272)

ボートルレは、ルパンの言葉に導かれて行動しています。

そして、その人たちのところへたどりつくということは、同時にルパンのたてこもるとりでの奥ふかくに侵入することであり、ルパンが世界じゅうからぬすんできた財宝をたくわえている、おかすことのできない隠れ家にふみこむことにもなるのだ。(岩波P191)

このときのボートルレの目的は父の救出でした。にもかかわらず、意識化では父の捜索と、エギーユ・クルーズの捜索が交じり合っています。ルパンの術に嵌っているのです。


隠れ処と財宝(refugeとtresor)、それがボートルレが探していたものであり、ルパンが探させていたものです。所有権不明(実在性不明)→ルパンのもの→フランス王家のもの→ルパンのものとスケールが変わっているもののこの2点に変わりはありません。
※隠れ処の「が」は在り処の「か」同じく、「場所」を表すもので、「いえ」とは限りません。エギーユ・クルーズを住み処として使用したかは疑問ですので、語弊を防ぐため「家」は当てません。

隠れ処と財宝にたどり着くためには「エギーユ・クルーズの秘密」を解かなくてはなりません。その手がかりとしてボートルレは「エギーユ・クルーズにまつわる伝説」探していました。しかし、「令嬢」という言葉を聞いた瞬間、探すべきものは「エギーユ・クルーズ」そのものだったのだと気づいたのです。


前→ルパンの涙(その2) - 誘拐
次→ルパンの涙(その4) - まっとうな人間

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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ルパンの涙(その2) - 誘拐

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


作中でルパンがした行為はいろいろありますが、そのすべてが解明されているわけではありません。そのうち目的がはっきりしている誘拐について触れたいと思います。ルパンはヒロインの誘拐について芝居であったと言っています(岩波P340)。最初から愛し合っていたが、ルパンの名の下には結婚できないため芝居を打ったのだと。

この言葉は私は信用できると考えます。ルパンはヒロインのまっすぐな瞳と心を愛しているのだから、それを損なう軟禁生活を長く強いることはなかったと思います。表の世界から抹殺され、本来の名前で生きられない生き辛さはルパン自身が十分知っているはずです。だから、ヒロインが元の名前と地位に戻ることは折り込み済みだったのです。

誘拐は、ルパンと花婿は別だと思わせることにも有効でした。そのためにルパンは追いかけてきたボートルレを利用しました。ヒロインを自分の城館にかくまった以上、自らヒーローになるという計画もあったのでしょうが、それでは危険すぎます。だからボートルレを隠れ蓑にしたのです。ガニマールとショルメスを監禁し、ボートルレにはそうしなかったのは、前者には顔を知られているけれど、後者には知られていないからです。このことに気づいてボートルレは敗北したと思ったのです(岩波P338)。


結婚について補足しておくと、フランスでは結婚というときに、二つ考えなくてはいけないようです。およそのところでいうとこんな感じ。

  1. 役所に赴き誰某と誰某は結婚しますと一定期間掲示をし、期間終了後結婚手続きをする
  2. 教会で式を挙げる

法律上の結婚と宗教上の結婚ということです。アルセーヌ・ルパンと誰某は結婚しますと告知できるわけがありません。したがって、別の名前の下で結婚することになるわけです。

ところで、ルパンの言葉には明確な嘘が一つあります。この(今名乗っている)名前になれば実現できるのではなく、この名前に戻れば、と言っているところです。しかも、その名前は子供の頃から育った名前だと言っています(ハヤカワ文庫「奇岩城」P281)。幼少時に過ごした名前は別にあることを読者は知っているので嘘です。しかし本名だと言っているわけではありません。何故わざわざこんな言い方をしたかというと、傍らに妻がいたからでしょう。妻には今の名前に対して幾ばくかの正当性を示していたのか、あるいは成り行き上仕方がなかったのだと誤魔化していたのかもしれません。それを知っていたからショルメスはルパンの名前を暴いたときに彼女の方を見てしまったのです。


前→ルパンの涙(その1) - 「奇岩城(4)」考
次→ルパンの涙(その3) - 隠れ処と財宝

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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ルパンの涙(その1) - 「奇岩城(4)」考

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


本考察は基本的に岩波少年文庫版を元にしています。書名を書いていない引用は岩波少年文庫「奇岩城」からのものです。引用に当たって「<空洞の針エギーユ・クルーズ>」および「奇岩城エギーユ・クルーズ」を「エギーユ・クルーズ」に変更しています。


○はじめに
「奇岩城(4)」で特徴的なのは、ルパンが殆ど登場しないのにも関わらず、ルパンの存在を感じるところだと思います。よく読むと存在感があるのはボートルレではなくルパンなのです。そのことについて漠然とした考えがないではありませんでしたが、あるときこの箇所を読んで衝撃を受けました。

 ルパンは泣くのだろうか? 涙が彼の目をぬらすのを、ボートルレは直観的に感じた。ルパンの目に涙が、愛の涙が!(岩波P375)

愛の涙?! ルパンは時に弱く時に熱い男なので、泣くのはそう珍しいことではないと後で分かるのですが、そのときの私には驚きでしたし、なぜ泣くのかという心情も分かりませんでした。でも探るべき方向は見えた気がしました。そしてその後に読んだ「813(5)」で決定打を食らっわけですが、今でもこの2作品は別格です。

「奇岩城(4)」は複数の要素が入り組んでまとめるのには難しい作品で、ボートルレは何を探して何を見つけたのかすら曖昧になってしまうくらいです。また「奇岩城(4)」は一部省略されたテキストを底本としている翻訳も多く、一冊読めば十分という翻訳は出ていないと思います(岩波少年文庫はいい方)。それでも漠然とした考えを形にしたくて追いかけてきたのですが、やっぱりまとめきれていないもしれません。


次→ルパンの涙(その2) - 誘拐

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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フランス語の原文が読めるサイト 2

フランス語の原文が読めるサイト 2
いつの間にやらウィキソースのルブラン作品が充実していたので、リストに追加
Webで読める原作作品

◎Wikisource
http://fr.wikisource.org/wiki/Maurice_Leblanc
ウィキペディアの関連サイトで、数多くのパブリックドメインとなった作品が収められている。

「アルセーヌ・ルパンの帰還(A1)」が加わり、これで邦訳が出ているものについてはだいたい出揃った。あとは「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」。テキストファイルで読めると楽なので、いずれアップされるといいな。


フランス語の原文が読めるサイト
「アルセーヌ・ルパン」関連サイト


□2008/08/30
カナダでパブリック・ドメインとなった本を集めるサイト。各言語のWikipediaやWikisourceへのリンクがある。
Maurice Leblanc - Wikilivres
http://wikilivres.info/wiki/Maurice_Leblanc

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翻訳の一人称 - 奇岩城(4)編

なんとなく思いついたので調べてみた。かなりいい加減。もちろん一人称の主はルパン。

テキスト会話文章
ハヤカワ文庫わたし、おれ、ぼくわたし
岩波少年文庫わたし、ぼく、おれ小生
偕成社全集わたし、おれ、ぼく、わたくし、わがはい、おれさま小生
創元推理文庫わたし、おれ、私、わが輩小生
集英社文庫わたし、おれ、わが輩わたし
新潮文庫わし
青い鳥文庫ぼく、おれ、わたしわたし、わたくし
ポプラ社文庫ぼく、わがはい、おれわがはい
青空文庫俺、我輩、-
新学社文庫我輩、俺、僕、私

※青い鳥文庫とポプラ社文庫、青空文庫は抄訳・リライト版
※「奇岩城(4)」の最初の翻訳である「大宝窟王」の主な一人称は「我輩」(読書時の記憶+手元の断片的なコピーによる)。


なんとなく傾向が見えるように並べてみたのだけどどうだろう。古くは「我輩」、今は「わたし」、児童書は「ぼく」といったところか。やはり一人称が違うと印象もかなり違う。しかし、ルパン=「我輩」のイメージは根強いと思われる。私が追いかけているのは「わたし」のほうだけど。

殆どの翻訳では複数の一人称を使い分けていて、「奇岩城(4)」では他人に脅しをかけるなど柄の悪さを発揮するので「おれ」との使い分けが多い。多彩なのは偕成社全集だけど、「わたし」「おれ」以外はそれぞれ1、2例しかない。さすがに「おれさま」は…と思ったら偕成社文庫の「続813」でも「おれさま」があった。でも心中での話だから、それはありかな。

それに対してシンプルなのは新潮文庫。ダメな人もいるのかもしれないけれど、私自身は「わし」はアリ。これはこれで壮年の溌剌とした感じがする。普段は「わし」なのに、貴婦人の前では「ぼく」だったりするあたり、かなりの猫かぶり(「ルパンの告白」や「八点鐘」)。

表には見えないが、ハヤカワ文庫の一人称使用量は目立って少ない。厳密にカウントしたわけではないけれど、他の翻訳の半分くらい。(たとえば、ハヤカワ文庫の「わたし」と岩波少年文庫の「ぼく」の使用量がほぼ同数で、岩波少年文庫では「わたし」がそれより多い)。それが読みやすさを生んでいる一方で、ルパンの自己顕示の強さが薄れているとも思う。


「アルセーヌ・ルパン」邦訳一覧

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雑誌「ネムキ」2008年7月号に「怪盗アルセーヌ・ルパン 八点鐘」掲載

JET氏による漫画化。今回は事件3「テレーズとジェルメーヌ」。


原作からアレンジはあるけれど、ラストなど新潮文庫そのまんまなセリフなのが面白かったりします。次号予告にないのが心配。(って柱に次の冒険は11月号にてとあった)

OPENDOORS:雑誌:ネムキ
http://opendoors.asahi.com/nemuki/index.shtml


□2008/08/16追記
「ネムキ」2008年9月号の次回予告(11月号の掲載予定)に連載再開と載っていました。

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怪盗ルパン全集「ルパン危機一髪」入手のこと

邦訳されていない、ボワロー=ナルスジャックの贋作のリライト。南洋一郎の作品。原作とは結末が違うらしいけれど、原作もこの本も読んだことはない。

残るは「ルパン、100億フランの炎」と「ルパンの発狂」なのだけど、ハードルは高そう。でもこの2つは読んでいて、入手したものは勿体無くてかえって読んでいなかったりする。一覧は次の通り、ここに上げた邦訳・抄訳のうち新刊で入手可能なのは「ミステリマガジン」ぐらいだと思う(2008年6月現在)。

○ボワロー=ナルスジャック著(共著)

Le secret d'Eunerville
榊原晃三訳「ウネルヴィル城館の秘密」新潮文庫
怪盗ルパン全集「悪魔のダイヤ」
La poudriere
榊原晃三訳「バルカンの火薬庫」新潮文庫
怪盗ルパン全集「ルパンと時限爆弾」
Le second visage d'Arsene Lupin
榊原晃三訳「アルセーヌ・ルパンの第二の顔」新潮文庫
怪盗ルパン全集「ルパン二つの顔」
La justice d'Arsene Lupin
谷亀利一訳「ルパン、100億フランの炎」サンリオ
怪盗ルパン全集「ルパンと殺人魔」
Le serment d'Arsene Lupin
翻訳版なし
怪盗ルパン全集「ルパン危機一髪」
Arsene Lupin dans la gueule du loup
高野優訳「罠にかかったアルセーヌ・ルパン」(雑誌「ミステリマガジン」2005年11月号掲載)

○ナルスジャック著

L'affaire Oliveira
稲葉明雄訳「ルパンの発狂」(「贋作展覧会」ハヤカワポケットミステリ所収)

ポプラ社「怪盗ルパン全集」(旧ポプラ社版のシリーズ)
雑誌「ミステリマガジン」2005年11月号 ルパン生誕百周年&フランス・ミステリ特集

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偕成社アルセーヌ=ルパン全集「八点鐘」入手のこと

偕成社の「八点鐘」を入手。短編のタイトルが間違っていたのを修正。偕成社の全集は残りもおいおい集めていくつもりです。

「アルセーヌ・ルパン」邦訳一覧
偕成社:アルセーヌ=ルパン全集

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ジャヴァネ - テレーズとジェルメーヌ(12-3)

この話は、電話の盗聴から事件が発覚している。男女の会話で、主にスペイン語で会話されていたが、ジャヴァネや極端な略語を交えていたため、詳細はつかめなかったとある。

ジャヴァネとは何かと言うと、新潮文庫の編集部注として「語の綴りの間に「av」「va」を入れて作る隠語のこと」(新潮文庫「八点鐘」P107)とある。たとえば、bonjour(ボンジュール)なら、bavonjavour(バヴォンジャヴール)となるようだ。

蛇の道は蛇ということで、公爵の手下もこのような言葉遊びに通じていたのだろう。綴りは「ジャワ語」と同じなのだけど、ジャワ語はさすがに聞いても理解できないだろうと思う。と思っていたら、「ジャワ語」で訳の分からない言語という意味もあるらしい。

javanais - Wiktionnaire(仏語)
http://fr.wiktionary.org/wiki/javanais
Javanais (argot) - Wikipedia(仏語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Javanais_%28argot%29

javanais(1) [男]①ジャワ語:ジャワ島の中部に行われるインドネシア語派の言語. ②[話]訳の分からない言語.
javanais(2) [男]ジャヴァネ:語の中にvaまたはavを挿入して隠語化する遊び
[j'ai/j'avais, ils ont/nous avons などの交代から. javanais(1)男性名詞②の影響](小学館ロベール仏和大辞典)

javanais -n.m.◆ジャワ語. ◆~弁(1860年ごろから始まった戯語で単語の中の子音と母音の間に va または av を挿入して隠語化するもの)(白水社仏和大辞典)

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青空文庫:モーリス・ルブラン作品

日本での著作権が切れたので、青空文庫でもルパンシリーズが何点か公開されています。


青空文庫 Aozora Bunko
http://www.aozora.gr.jp/
作家別作品リスト:ルブラン モーリス
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1121.html

○奇巌城…奇岩城(4)(抄訳)
http://www.aozora.gr.jp/cards/001121/card46187.html
○探偵小説アルセーヌ・ルパン…白鳥の首のエディス(6-7)
http://www.aozora.gr.jp/cards/001121/card42809.html


□メモ
「奇巌城」の作品データに英訳を元にしたと見られると書かれていますが、固有名詞の読みが保篠龍緒訳(私が所持しているのは新学社文庫「奇巌城」)と同じで、内容から見ても保篠訳を元にリライトしたと思われます。原本は確認していませんが、訳者は菊池寛の名義貸しの可能性もあると思います。文章も菊池が書いたとは思えません。


青空文庫に「奇巌城」登場&名作サウンドノベル「探偵小説アルセーヌ・ルパン」
「奇岩城」探求(その13) 奇巌城・前

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ルパンシリーズ人名リストを更新

ルパンシリーズ人名リスト

更新しました。「カリオストロの復讐(20)」は自分の持ってる偕成社文庫が発見できないので、図書館の全集版で補ってます。


ルパンシリーズ人名リスト

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八の魔術 - 八点鐘(12)

※以下の文章は「八点鐘(12)」の内容に触れています。※


「八点鐘(12)」は8つの短編からなる連作短編集である。この作品において8はきわめて重要な数字である。

8つの中でもっとも恐ろしく衝撃的な作品といえば6話だろう。そこに登場するのは、エルベット(Herbette)、エルマンス(Hermance)、エルミニー(Herminie)、イレリー(Hilairie)、オノリーヌ(Honorine)、オルタンス(Hortense)と言う名前の女性。同じくHから始まる8文字で形成されている。そのうえHはアルファベットの8番目の文字で、8を体現しているのである。犯人が固執したのはこれだった。犯人は“凶器”にも固執した。この“凶器”がHとと同じ発音だということは、すでにルパンシリーズのある短編で明言されているとおり。しかしこのHは発音されず“姿が見えない”文字となっている。“姿が見えない”犯人そのものでもあった。

同じ特徴を持つ名前の女性はもう一人いる。4話に登場する幸福な姫君ことプランセス・ウルーズ(Princesse Heureuse)。ヒロインの妹の役名であり、映画のタイトルでもある。公爵は姉妹を前にして何度もこの言葉を口にする。実はこのときに意識下で共通する特徴(等しくHから始まって同じ長さで終わる単語であると)に気づいていたのではないか、と考えると怖い話になってしまうけれど、さにあらず。自分がヒロインにプレゼントをしたいもの(幸福=heureuse。形容詞heureuxの女性形)だからである。


1話のラストで、コルサージュの留め金を無くして以来不幸だというヒロインに公爵はこう告げている。

「僕がそれを見つけ出してあげましょう」レニーヌが請け合った。「そしてあなたは幸福におなりでしょう」(新潮文庫P58)
Je la retrouverai, affirma Renine, et vous serez heureuse.

幸福をもたらすことこそがはじめに取り交わした約束だった。そして、ここがラストということは、1話はオルタンス・ダニエル(Hortense Daniel)で始まり、heureuseで終わっているのである。


幸福はヒロインの望むものであった。

「わたし贅沢も財宝も望みませんの」
「では何がお望みでしょう?」
「望みは幸福ですわ」(新潮文庫P16)

ここでいう幸福はbonheur(名詞)使われている。公爵は退屈な日々を託つヒロインに生きる望みを吹き込み幸福をもたらすために働いていた。しかし「幸福な(heureuse)」という言葉が散りばめられた4話では、木こりの“仕事道具”によりすでに見えない楔が打ち込まれている。そして6話で木こりの“仕事道具”は“凶器”に変わり、ヒロインは殺人鬼の「恐ろしい犯行(horrible besogne)」(新潮文庫P255)に巻き込まれてしまうのである。

このように「八点鐘」を連作短編集と捉えるときには、まず1話、4話、6話、8話の4つを抑える必要があると考える。残りは強弱でいうと弱であり、7話では最初の約束を忘れてしまったかのように二人はよそよそしく振舞う。


幸福な(heureuse)という形容詞のように、同じ特徴をもつのは女性の名前だけとは限らない。8話で公爵がヒロインを再び冒険に誘い出す手紙にはこう書かれている。

限られた期間内に、僕らは自分たちの生活の書に、美しい八編の物語を書き込む、その物語に精力と理論と忍耐力と、また多少の機知と、時には英雄主義のいくらかを注入するというのが、その約束でした。いよいよ、八番目の物語を書き込む時期に達しました。あの時計の文字板が、十二月五日、夜の八時を告げて鳴りだすより先にその冒険が完了するがためには、あなたの出動が必要です。(新潮文庫P347)

物語(histoire(s))、英雄主義(heroisme)、八番目(huitieme)、八時(huitieme heure)のhuitieme、いずれも8文字である。

そして、主人公とヒロインを結びつけるのはほかならぬアラングル(Halingre)屋敷の時計というわけである。


以下、羅列による補足。

  • アラングル(Halingre)というのは元々の持ち主の名前かもしれない。少なくとも綴りを創生したわけではないようだ。
    Halingre - nom de famille Halingre. Nombre et localisation(仏語) http://www.linternaute.com/femmes/nom-de-famille/nom/104796/halingre.shtml
  • 「テレーズとジェルメーヌ(12-3)」に出てくるオーヴィル(Hauville)というホテルは、ルーアンの西にある地名を屋号にしたものか、あるいは人名(姓)由来か。
    Hauville - Google マップ
    Hauville - nom de famille Hauville. Nombre et localisation(仏語) http://www.linternaute.com/femmes/nom-de-famille/nom/106355/hauville.shtml
  • 八時(huitieme heure)などの時(heure)と、幸福な(heureuse)や幸福(bonheur)の語幹部分はつづりも発音も同じようだ。heur(幸福)という古い名詞もある。
  • 犠牲者の一人の名前について、ある箇所で「エルミーヌ」となっている(新潮文庫P254)。Hermineは7文字。普通名詞だとエルミン(和名はオコジョ)という動物で、真っ白い毛皮が特徴。この部分は誤植なのか、別に意味があるのか不明。Hから始まっているのでいたずらに誤りとも思われない。
  • ルパンシリーズには他にアヴリーヌ(Haveline)という女性が登場する。「バーネット探偵社(15)」
  • イギリスの小説ハリーポッターシリーズに登場するハーマイオニーという名前のつづりはHermione。ギリシア神話だとヘルミオネ、フランス語風に読むとエルミオーヌ(ラシーヌ「アンドロマック」岩波文庫)。余談ながら同シリーズにはリーマス・ルーピン(Remus John Lupin)という登場人物が出てくる。
  • ジャック・ベッケルの映画「怪盗ルパン」に出ていた女優ユゲット・ユー(Huguette Hue)にも危険信号が。


※以上の文章は「八点鐘(12)」の内容に触れています。※

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「奇岩城」探求〆

その14まで続くとは思わなかったけど、とりあえず“奇巌城”まで書こうと思っていた。“奇巌城”という言葉に思い入れがないわけではないが書かなかった。もう少し簡明簡潔に書けるようになればと思う。

翻訳についてはいろいろと文句も書いたけど、誤訳や誤植などから逃れられる翻訳のほうが稀で、そういうことが取っ掛かりになったりするので、結果マイナスの面で取り上げることになってしまう。日本語で読めるという恩恵にあずかれること自体がありがたいのは分かっているけれども、贅沢を言うと複数の翻訳で読めたほうがいい。「奇岩城(4)」の翻訳で私が一に推すのは岩波少年文庫版。原題「l'Aiguille creuse」の意味を考えるのによかったし、文章が私には合う。「大宝窟王」は断片的にしか読んでいないので、最後まで読んでみたい。

なお「大宝窟王」では発見シーンにこう書き加えられている。

此処は何処だ?……江鳥田えとりたの海岸じゃないか! あの巌(いわ)の形は何だ?……針の形じゃないか!(後篇P149)

岩=針の形というのは現行のポプラ社文庫版でも扱っているけれど、三津木訳では江鳥田(エトルタ)という地名を疎かにしていない。針の形だからレギーユなのではないのだけど、探していたものを見つけたと8章のラストで示せているという点はよいと思った。その点が翻訳ではあいまいになりがち。

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「奇岩城」探求(その14) 奇巌城・後

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

この項では引用に当たって仮名遣いと漢字は現代のものに改め、重ね字は用いないようにした。ルビは分かりにくい箇所のみ残した。


前項で引用した新学社版の部分、私は言葉が繋がってないと思ったし意味もとれなかった(頭を包む絶壁とは如何)が、三津木春影「大宝窟王」を読んで腑に落ちた。これは日本における「奇岩城(4)」の最も早い紹介とされている作品である。


にも係らず、巌全体の形が如何にも巨大である、堅固である、驚くきものである、そして堂々として破壊す可からざる面魂つらだましいを備えている。それに対しては海の激浪怒涛げきろうどとうも一堪りもなく跳ね返されそうである。不朽不滅の形は壮厳偉大の相、相対して大陸を限る綿々無辺の絶壁の城塁を侮り、脚下きゃっか囲繞いにょうする広漠際涯こうばくさいがいなき大洋をあざわらって、屹然頑然きつぜんがんぜんとして聳立しょうりつするこの怪巨巌!(三津木春影「大寶窟王」後篇P148-149)

新学社文庫の訳は三津木訳を踏襲していることは明らかで、奇巌城は怪巨巌の言い換えということもできる。三津木訳は表現は古いが文章自体は明瞭だ。ここはやはり岩のほうがしっくりくる。原文ではこうなっている。

Et tout cela puissant, solide, formidable, avec un air de chose indestructible contre quoi l'assaut furieux des vagues et des tempetes ne pouvait prevaloir. Tout cela, definitif, immanent, grandiose malgre la grandeur du rempart de falaises qui le dominait, immense malgre l'immensite de l'espace ou cela s'erigeait.

そしてその全体が力づよく、ものすごく頑丈で、荒れ狂う波や、吹きつける嵐をものともしないように、いかめしくそびえ立っている。全体が厳然と、どっしりしていて、それを見おろしている断崖の壮大さにも劣らず雄大であり、周囲の空間のひろがりにも負けず広大である。(集英社文庫「奇巌城」P224-225)

この箇所の意味を捉えるときに注意が必要なのは、レギーユは断崖より低いし、周囲の空間の中に納まっている存在であるということだ。だからこそレギーユの絶対的な大きさを表しているといえる。もしくは、崇高さ偉大さといった抽象的な大きさを含んでいるのかも知れないし、ボートルレの視界の中での大きさを表しているのかも知れない(岩に意識が集中しているので周りの大きさは問題にならない)。


三津木訳でタイトルと呼応する箇所はこのあたりになる。

『(略)実に綺麗な風景じゃないか! この渺茫びょうぼうたる大海おおうみと……あの無辺むへん蒼空あおぞら……左右には安春あばる巌門がんもんと、万年門まんねんもんとが屹立して、城主の為に永遠に凱旋門の役を勤めていてくれる……ところでその光栄ある城主は誰だ?……即ちくいう我輩じゃないか! 我輩はものがたりのなかの主人公である、魔法国の王である、大宝窟の殿様である! 実に奇抜な、自然界を超絶した国王だねえ! しいざあから鉄光!……何という華々しい運命だろう!』不意にカラカラと呵笑わらい出して『魔法国の王様! どうしてどうしてそんなケチなんじゃない……そうさ、全世界の王様とでも言ったら少しは当るだろう! この大宝窟の最上層から我輩は世界に君臨しているのだ!(略)』(三津木春影「大寶窟王」後篇P216-217)

※鉄光はルパンのこと


この高揚感とスケールが堪らない。「即ち斯くいう我輩じゃないか!」このフレーズが自作自演で自慢しい(自慢屋)のルパンっぽくて好き。万年門(Manneporte)、凱旋門と語呂がよいし、安春(Aval)も字面がよくってめでたい。なお、大宝窟の殿様(Roi de l'Aiguille creuse)、大宝窟の最上層(pointe d'Aiguille)でAiguilleと対応している。

それからここでは城という言葉が出てくる。空洞でない岩は城とは呼べない、かといって内部が空洞になっている岩があってもそれは城とは呼ばない。ただの隠れ家なら城とは言わない。ではあの場所を城とは言えないのかというとそうではない。外部の人間が城と言うなら豪勢な建物、しかし内部の人間、持主なら「自分の思い通りになる空間」を指して言うことが出来る。主にとっては門とを備えた城であり、自ら君臨する場所であるのだ。岩波少年文庫版とハヤカワ文庫版ではこの場面(「奇岩城」探求(その11)引用部の後)に“奇巌城”が使われている。“奇巌城”はあくまで固有名詞だから訳文で唐突に使用するのはどうかと思うが一見のよそ者が言うより納得できる。

「(略)ほら、君が解読しようとしてもできないあの<空洞の針エギーユ・クルーズ>の秘密は、ひょっとすると無尽蔵のすばらしい宝かもしれないし……あるいは、目には見えない、ふうがわりな、とほうもない隠れ家かも知れないし……あるいはその両方かもしれない(略)」(岩波P159)

いわば前者に繋がるのが「宝窟」で、後者が「城」だろう。レギーユ・クルーズがルパンにとってどういう場所だったのかというときに、この意味が活きてくる。レギーユ・クルーズという言葉の意味と、その存在の意味をまずは分けて考えるべきだと思う。

それなのに両者が折々混同されているのはレギーユという言葉が正確には訳せないからだろう。他にメリットもあると分かってはいるけど、私は針岩という訳語がベストだとは思わない。針岩とは針岩と名づけられた岩だとイメージしてしまう言葉だから。レギーユは、レギーユ(エギーユ)という名前のエギーユなのだ。日本語では訳語が変わるが、原文ではずっとl'Aiguilleで、l'Aiguilleの語頭が大文字なのは固有名詞だからと分かる仕掛けになっている。

他に翻訳を読んでいて思うのは、単なるレギーユと空洞のレギーユが一緒くたにされていることがあること。同じと扱っていい場面もあるがそうではない場面もある。「奇岩城(4)」の外においても同様で、「奇岩城」探求(その12)に書いたように「カリオストロ伯爵夫人(13)」のレギーユは空洞ではない。同じように登場人物がレギーユを眺めているシーンは「テレーズとジェルメーヌ(12-3)」にもある。レギーユを指すのに普通名詞としてaiguilleが使われているのはここのみである。話者がこの土地に明るくないこと、話者にとってルパンの活躍は伝説めいたものであることを示しているのかもしれない。いずれにせよレギーユは何も知らない人間には単なる岩にしか見えない。

「(略)あの左手にそびえたってる大きなさきのとがった岩に、ほんとうにアルセーヌ・ルパンが住んでいたのかなんて、のんきなことを考えにここにやってきたんじゃなかったわね。」(偕成社全集「八点鐘」P106-107/テレーズとジェルメーヌ(12-3))

- Mais tout de meme, nous ne sommes pas venus pour jouir des spectacles de la nature, ou pour nous demander si cette enorme aiguille de pierre qui se dresse a notre gauche fut reellement la demeure d'Arsene Lupin.


※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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「奇岩城」探求(その13) 奇巌城・前

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


“奇巌城”とは何か。これは案外厄介な問題である。作品の邦題であるが原題の翻訳ではない。“奇巌城”はどういう意味かと言うと、これも答えられる人は少ないと思う。ここは最後に“奇巌城”と邦題をつけた保篠龍緒氏の訳を取り上げるほかはない。保篠訳のスタンダードな翻訳と同じものどうか不明だが、ここでは新学社文庫版を用いる。


しかもその全形といえば巨大、剛堅、怪偉、厳乎げんことして破壊すべからざる面魂、大海に荒れる狂瀾きょうらん怒涛に対するも大天おおぞらに狂う暴風劇雨おおあらしに対するも巍峨としてあえて壊れそうにもない。頭を包む長蛇のような絶壁を侮り、脚下をめぐる茫漠無限ぼうばくむげんの広いうみわらって、不朽壮厳、不滅偉大、屹然きつぜんとして聳立しょうりつするこの奇巌城!(新学社文庫「奇巌城」P282)

新学社文庫では邦題の他に作中でも用いられているが、見出しを除く奇巌城の初出はここである。部分だけ抜き出しているのでわかりづらいが、ボートルレが最後にレギーユ(尖った岩)を発見した場面である。“奇巌城”この言葉は普通名詞ではなく固有名詞だと私は思う。だからこの場面で使うのはいかにも唐突に思える。そうでなければ何かのたとえか。しかしこの後で、ボートルレもルパンも“奇巌城”という言葉を使うので、両方とも成り立たない。固有名詞なのだとしたら、情報が伝達されていないのに同じ名前で呼ぶことはできないだろうし、比喩なのだとしたら独立して使うのには違和感が残る。

また、“奇巌城”という言葉は数例あるが、原文のAiguille並びにAiguille creuseの出現必ずしも対応してはいない(“奇巌城”はレギーユではないと逆主張することもできる)。この場面でも話題になっているのはAiguille(尖った岩)ではroc(岩)であり、まだ空洞であることが分からない場面なのである。実際のレギーユを写真を見て知っているからかもしれないが、それが奇巌城と言えるかというと私は言えないと思う。外見だけで言えるのなら、ボートルレが数少ない発見者とは鳴らなかっただろう。だから城というのは人が住む建物ではなくて、あえて言うなら、簡単には落ちそうにない堅固な様子の意味を添えたものくらいにしか言うことが出来ない。


青空文庫所収の「奇巌城」では「ああ針の形をした奇巌城はついに発見された。」とある。「ついに」というと、長い間探していたものを発見した場合に使われる言葉だから、奇巌城がすでに出てきたかと錯覚するがここが初出である。一体何を探していたのか分からなくなってくる。訳者が菊池寛になっているが、私は菊池の名義貸しで、誰かが保篠訳を元にリライトしたものだろうと思う。固有名詞がフランス語読みの保篠訳に準じているため、英訳が底本とは考えにくい。エイギュイユ城が2つ出てくるのも原文から直接訳していないからだろう。
青空文庫:奇巌城
http://www.aozora.gr.jp/cards/001121/card46187.html

講談社版「奇巌城」では城と明言しているが、この文章では本末転倒だと思う。城と言えるなら中が空洞だという必要はない。

この岩の塔は――針のようにとんがったこの奇怪ないわおの城は、中が空洞になっているのだ。(講談社文庫P249)


※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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「奇岩城」探求(その12) 100年前

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


100年、それしてそれよりずっと前から存在するものもあれば、100年前にあって今はなくなってしまったものもある。その一つがフレフォセの砦である。

100年前の絵葉書に使われた写真に写っている。
ETRETAT - Le Fort de Frefosse et la Chambre des Demoiselles, Falaise d'Aval(jpg)
ETRETAT - L'Aiguille et la porte d'Aval(jpg)
上の写真で奥に写る建物がフレフォセの砦である。手前の二つ瘤の岩が令嬢たちの部屋。レギーユと一緒の写真から見てもかなり大きいと分かる。

写真を掲載していたサイトは見られなくなってしまったが、フレフォセの砦の写真の縮小版はここのトップにある。遠景の写真は「Diaporama」の「Etretat hier」というメニューから。
Etretat(フランス語)
http://www.etretat-info.com/
フレフォセの砦がいつ壊されたのか分からないが、フレフォセの城館と言う建物が今もエトルタの南にあるようだ。2つの建物はかつては同じ人物が所有していたのだろう。
GeoPortail - Chateau de Frefosse


もう一つ欠かせない存在が「司祭の階段」である。作者に拠ればこの階段はベヌヴィル(エトルタの東にある地名)の司祭によって作られたという“断崖の中に穿たれた階段”なのである。「奇岩城」でボートルレが取材で訊きだした階段であり、「カリオストロ伯爵夫人(13)」では登場人物が下ったり登ったりしている。これも実在していたもので、現在「司祭の谷(Valleuse du Cure)」と呼ばれている場所に、かつては283段からなる階段があったという(「カリオストロ伯爵夫人」では350段と書かれている)。

Universite du havre - la valleuse du cure(フランス語)
http://www.univ-lehavre.fr/cybernat/pages/vallcure.htm
Specifites du parler yportais, par Michele Schortz(フランス語)
http://yport.web.free.fr/parler_yport13.php

モーパッサンの側用人であったFrancois TASSARTという人の1885年8月の日記に、レギーユ(l'Aiguille)や令嬢たちの部屋(la Chambre aux demoiselles)とともに司祭の階段(l'Escalier du cure)の語が見られ、モーパッサンの散歩コースに使われたことや、l'Aiguilleが当時もl'Aiguilleと呼ばれていたことが分かる。
Souvenirs, Chapitre IV(フランス語)
http://maupassant.free.fr/tassart/04.html
Souvenirs sur Guy de Maupassant(フランス語)
http://maupassant.free.fr/tassart/souvenirs.html
モーパッサンとエトルタ

「司祭の階段」は1883年に作られたが2001年7月に崩落し、現在は立入禁止となっている。「カリオストロ伯爵夫人(13)」(1894年が舞台)の当時はまだ新しい階段だったわけである。写真からでは本当に断崖の中に階段があったのか分からないが、この階段がなくては「奇岩城(4)」が生まれなかったかもしれない。


また、司祭の階段の近くにはEtigue(s)と言う名前のついた地名があり、クラリス・デティグ(d'Etigues)の屋敷もベヌヴィルの近くにあるとされている。その部屋からルパンはアヴァルの門とその傍らにあるレギーユの先端を眺めている。

左にはエトルタ湾とアヴァルの水門、巨大な針岩の切先が見渡せた。(ハヤカワ文庫「カリオストロ伯爵夫人」P14)
a gauche, la baie d'Etretat, la porte d'Aval et la pointe de l'enorme Aiguille.

このことからも「カリオストロ伯爵夫人」は明確に「奇岩城」前史を意図して書かれていることが分かる。アルセーヌ・ルパンがいかにして紳士強盗となったかの物語であると同時に、いかにしてレギーユ・クルーズを発見したかを示す物語でもあるのだ(映画「ルパン」は原作を闇雲に合体させたわけではない)。

一部邦訳でこの部分を“奇巌城”と訳しているが無理がある。“奇巌城”と訳せる言葉ではないという前提を置いておいても、この時のルパンにとってはこれは単なる岩であり、そのまま岩で終わるのかそれとも価値ある存在となるのか、ルパンの未分化な運命を象徴しているからだ。そのうえ「カリオストロ伯爵夫人(13)」に“奇巌城”が出てくる創元推理文庫版、偕成社版では、同じシリーズの「奇岩城(4)」には“奇巌城”が登場しない。偕成社版「カリオストロ伯爵夫人」は「アヴァルの港、あるいはまた巨大な奇岩城の岬」と改訳している(エトルタにあるのは港[port]ではなく門[porte])。ポプラ社のリライト版では「魔女とルパン」にベルヴァルのエギーユ(エトルタのレギーユではない)の代わりとして“奇巌城”が登場するが「奇巌城」には登場しない。


GeoPortail - Benouville
Benouville(ベヌヴィル)の北西の沖合にAiguille de Belvalがあり、北東にValleuse du Cure、東にla Haye d'Etigueと言った地名が見える。


前→「奇岩城」探求(その11) エギーユの眺め

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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「奇岩城」探求(その11) エギーユの眺め

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


エトルタにはレギーユ以外にも見逃せない物がある。

「(略)美しいじゃないか? 広大な海……そして空……右にも左にもエトルタの断崖がある。そこには三つの門がある。上手アモンの門、下手アヴァルの門、そして大手門マグナ・ポルタ……どれもこれも、ここの主にとっては凱旋門だ……そして、その主は、このわたしだったのだ!(略)」(岩波P352)

ここに登場するアモンの門、アヴァルの門、マンヌポルト(マグナ・ポルタ)は今も存在する。
Etretat - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/%C3%89tretat
Image:Porte Amont nuage en 2006.jpg - Wikipedia(左端の穴がアモンの門)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Image:Porte_Amont_nuage_en_2006.jpg
Image:Aiguille2.jpg - Wikipe'dia(アヴァルの門、左の岩がレギーユ)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Image:Aiguille2.jpg
Image:EtretatGreatArch.jpg - Wikipedia(マンヌポルト)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Image:EtretatGreatArch.jpg

遠景から見ると、視界に広がる海と断崖に、手前からマンヌポルト、アヴァルの門、アモンの門の3つのアーチが見える。
Universite du havre - Etretat(フランス語)
http://www.univ-lehavre.fr/cybernat/pages/etretat.htm
Etretat info - librairie(フランス語)
http://www.etretat-info.com/divers/librairie.htm


岩波少年文庫版ではアモンを上手、アヴァルを下手と訳している。アモン(amont)とアヴァル(aval)の語源は“a+montagne”と“a+val”つまり“山”と“谷”であり、転じてアモンが川の上流(上手)、アヴァルが下流(下手)を指す言葉となった。フランス北部の海岸では、アモンが東側、アヴァルが西側を指し、エトルタの北にあるサン・ヴァレリー・アン・コーでも東西に延びる断崖はアモンの断崖、アヴァルの断崖と呼ばれているようである。大手門はManneporte(マンヌポルト)のこと。この名前はmagna porta(マグナ・ポルタ。大きな門の意)なので、語呂をそろえて大手門としているのだろう。
因みに、陸から見ると、上手(アモン)の門が右、下手(アヴァル)の門が左にあり、演劇で舞台に向かって右側を上手、左側を下手ということと対応している(海から見ると逆である)。

前後に続く台詞を含めたこの言葉と景色とが相まって私の中でレギーユ・クルーズのイメージを作っている。レギーユの約80メートルという高さはビルでいうと23階くらいで、そこから眺める景色はやはり絶景だっただろう。見渡す限り空と海、陸地側はコート・ダルバートル(Cote d'Albatre=雪花石膏海岸)と呼ばれる景勝地。断崖が天然の障壁となって、陸地からの視線を遮ってくれる(レギーユより断崖のほうが高い)。誰にも邪魔されることがない。


もう一つ忘れてならない存在として、「令嬢たちの部屋」がある。これも断崖の上に今もある。
Image:1981etretat00A CHAMBRE DEMOISELLES.jpg - Wikipe'dia
http://fr.wikipedia.org/wiki/Image:1981etretat00A_CHAMBRE_DEMOISELLES.jpg

外見からすると二つ瘤の岩で、橋を渡った先に人が入れるほどの空間(穴)があるということである。そして、穴の中には「DF」の文字もあるらしい。「怪盗ルパンの館」サイトの「ルパンゆかりの地」写真ギャラリーで紹介されている。
怪盗ルパンの館
http://www2s.biglobe.ne.jp/~tetuya/lupin/lupin.html
ルパンゆかりの地写真ギャラリー2
http://www2s.biglobe.ne.jp/~tetuya/lupin/lpgala2.html

この「DF」に触れたコシェ神父の「エトルタの起源」は最近復刊されたらしい。
Jean Benoit Desire Cochet - Wikipedia(仏語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean_Cochet
Amazon.fr - Petite Histoire d'Etretat Livres Abbe Cochet(仏語)
http://www.amazon.fr/dp/2846184178
PETITE HISTOIRE D'ETRETAT (ARREMOLUDAS ) 紀伊國屋書店BookWeb
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/2846184178.html


前→「奇岩城」探求(その10) 海のオベリスク
次→「奇岩城」探求(その12) 100年前

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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探偵講談「ルパン対ホームズ」公演予定(続報)

上方講談師・旭堂南湖HP「正直南湖」
http://www003.upp.so-net.ne.jp/nanko/
出演予定より

5/25(日)
第40回『名探偵ナンコ』~よみがえれ!探偵講談~(奇数月第4日曜日開催)
出演/旭堂南湖「ルパン対ホームズ」(原作・ルブラン)、「お楽しみ」
ゲスト・芦辺拓(作家)「対談・探偵講談と探偵小説あれこれ」

探偵講談「ルパンVSホームズ」上演予定

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ルパンシリーズ作品関係図を更新

作品関係図

大きく変えたのは「山羊皮服の男(A2)」の位置。フランスでの発表年が1927年であるため第二部にしていたのですが、先行して1912年に「ルパンの告白(6)」の英訳版で発表されているのです。それで最初から迷うところではあったのだけど、内容から見ても「わたし」が登場することからしても第一部に属するほうがふさわしいので第一部にしました。

ルパンシリーズ作品関係図

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きつすぎる上着 - 奇岩城(4)

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


彼はたいへん丁寧な口調で、おだやかな話し方をした。背は高く、ごく痩せてはいたが、まだまったく若い男で、短すぎるズボンに、きつい感じの上着を着ていた。娘のようにばら色の顔をしていて、広い額に短く刈った髪、金色をした不精ひげを生やしていた。目は利口そうに、生き生きしていた。彼は少しも取り乱した様子を見せず、べつに皮肉の跡も見せぬ感じのよい微笑を浮かべていた。(集英社文庫「奇巌城」P29)

この描写はイジドール・ボートルレというキャラクターを印象付けるものであるのに、結構解釈が割れる箇所ではないかと思う。短すぎるズボン、きつい上着はもちろん背広の丈が合わないことを言っている。サイズの合わない服を着ているなんて成人男子にはあるまじき醜態(フランス人ともあろうものが←偏見)。それなのににこにこしているというのは怪しいわけです。似合わないひげまで生やして。

考えられるのはまず貧乏か変人か。バーネットは後者だけど、ボートルレは違う。かといって貧乏でもなくてどちらかというとぼんぼん(金には困らない家の子)で、サイズが合わないのは単に成長期だからなんだと思う。貧乏ゆえにしては卑屈なところが無い。サイズが合わないというのも見るからにつんつるてんなのじゃなくて、よく見れば変だぞ程度なもので。

母親不在というのもあると思う。母親かもしくは身近に女性(叔母や使用人など)の眼があれば成長に合わせて服を仕立てるだろうし、貧乏だったらなおさら大きめに仕立てて裾上げなどをしてサイズには気をつけるのじゃないのかな。


「アマチュア探偵」と言う言葉にも表れている。無報酬で行っていて、経費は自分持ち。それによって名を挙げようという大それた望みを持っていない。そんなところもぼんぼんらしい。

ジェーヴル伯爵はヴァルメラ親子ともボートルレ親子とも食事を同席しているからそこそこの身分なのでは。サヴォワに住んでいるというのも、妻が無くなり子供も寄宿舎に入ってしまったから引退したとも考えられるし。ジェーヴル伯爵は他の身分の人物に対してあまり偏見を持っていそうな人物ではないので、そう豊かではないブルジョワとも考えられるけれど。

ルパンの書簡がジェーヴル親子を本気で非難していると捉えるのは早計で、金と宝石がたくさんあれば女性の気持ちは変わる、と言いいたいのだ。女性の気持ちを変えるのは劇的な出会いと誠実な付き合い。まあ古典的な筋立てだけど、だからこそ大衆は納得しやすい。そういうシナリオだと思う。


※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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雑誌「ネムキ」2008年5月号に「怪盗アルセーヌ・ルパン 八点鐘」掲載

JET氏による漫画化。今回は事件2「水瓶」。

OPENDOORS:雑誌:ネムキ
http://opendoors.asahi.com/nemuki/index.shtml


モリソーの代わりにガニマール登場。ガニマールにしたってことはこれから先何かあるのだろうか。

□2008/05/19
あとがきを読んでで気づいたけれど、新潮文庫では水瓶に「みずがめ」とルビを振ってある。偕成社版の邦題は「水びん」。今の日本語の場合、ガラスなら水びん(光が通過するから多分ガラス)とするほうが普通ではないかと思う。水がめというと、昔ながらの陶器や土器など不透明なものをイメージしてしまう。

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怪盗紳士という称号(その5) - 付記

※以下の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※


「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」においては、次の箇所で紳士強盗の肩書きが使われている。

Hein! est-ce assez la revanche de Guerchard! de cette vieille ganache de Guerchard?... Brummell des voleurs en bonnet de prison... Le gentleman cambrioleur sous les verrous!.. Pour Lupin ca n'est qu'un petit ennui, mais pour un duc, c'est un desastre... ("Les aventures extraordinaires d'Arsene Lupin" Vol.1 P525-526 OMNIBUS)

「(略)どうだね? ゲルシャールにとっては……君があざけった、おろかでまぬけな老いぼれのゲルシャールにとって、すばらしい復讐じゃないか? 囚人帽をかぶった、いかさまの伊達男! 監獄入りの泥棒紳士め! ルパンにとってはそんなことはなんでもないだろうが、ひとりの公爵にとっては災難だ!(略)」(偕成社文庫「ルパンの冒険」P320)

偕成社文庫は英語ノベライズ版からの翻訳なので少し内容が違うけれど、分かりやすいので引用した。ゲルシャールは、ルパンが普段紳士強盗と名乗っていることを皮肉って「監獄入りの紳士強盗!」と言っているのである。(監獄入りというのは未来に起こることを言っているので、め、とつけるとニュアンスが違うかな)

なお「gentleman cambrioleur」は英語ノベライズ版では「gentleman-burglar」となっている。英語の「burglar」もフランス語の「cambrioleur」と同じく押し込み強盗の意味。ブランメル(Brummell)は実在の人物で、ここでは伊達男、ダンディの代名詞として使われている。ダンディやスノッブという言葉は、小説にはなく戯曲だけに現れる言葉ではないかと思う。ルパンがダンディかどうかは別として。ルパンの肩書きがゲルシャールの口から発せられることを含めて、小説と戯曲ではいくつかの差異が感じられるため最初の考察からははずした。


ルパンの先達であるラッフルズの単行本タイトル「The Amateur Cracksman」は、ラッフルズの出自がジェントルマンであり、アマテュアのクリケット選手(cricketer)であることを表している。しかし、盗みの動機には困窮、生活資金の不足がある。しかし紳士強盗は金に困ることがないし、盗みをしなくても生活できる。アルセーヌ・ルパンの出自はジェントルマンではない。
ラッフルズとルパン

余談として、紳士強盗で検索して引っかかる映画「ブランケット&マクレーン」のGentleman Highwaymanは、「礼儀正しい追い剥ぎ」を意味するようだ。
CINEMA TOPICS ONLINE|プランケット&マクレーン
http://www.cinematopics.com/cinema/news/output.php?news_seq=431
James MacLaine - Wikipedia, the free encyclopedia(英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/James_MacLaine


前→怪盗紳士という称号(その4) - 対義語あるいは類義語

※以上の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※

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怪盗紳士という称号(その4) - 対義語あるいは類義語

※以下の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※


「謎の家(16)」には紳士航海士(gentleman navigateur, gentilhomme-navigateur)、紳士探偵(gentleman detective, gentleman-detective)という肩書きを持つ男が登場するが、この肩書きは一見すると自己パロディと言える。しかし航海士、探偵が趣味であることに嘘は少ない。紳士(ジェントルマン)ということは、金銭を得るために働く必要がないということであり、アマチュアであることを表す。アマチュア探偵(detective amateur)と名乗っている男も「エメラルドの指輪(A3)」で登場する。いずれも紳士強盗の隠れ蓑であり、プロの強盗であることが見え隠れしている。探偵行為は無報酬で(ないときもあるが)、本職としていないというのは確かなので面白みがない。紳士強盗は確かに趣味でもあるが、プロの強盗だから名乗る意味があるのだ。また、普通にアマチュア探偵と名乗るより、報酬“は”頂きませんという我流解釈を掲げるほうが面白い(「バーネット探偵社(15)」)。

アマチュア探偵と名乗ってこそいないが、無償で謎解きをするルパンの姿は早くから登場する。もっとも、謎を解くのは探偵の専売特許ではない。人助け、犯罪を暴くという意味での探偵である。「謎の旅行者(1-4)」では書類を奪われて俄か探偵になるし、紳士強盗としてのデビューである「ハートの7(1-6)」も、無償で謎を解く話となっている(後におこぼれを頂戴していることが判明するが、報酬や自己の利益が目的ではない)。職業探偵ではないから報酬は不要だし、依頼をしなくても、自分が危機的状況にあると気づいていなくても、ルパンのアンテナに引っかかれば助けてくれるのだ(「さまよう死霊(6-6)」)。「ルパン対ショルメス(2)」におけるルパンとショルメスの役割は、「金髪婦人(2-1)」では強盗と探偵だが、「ユダヤのランプ(2-2)」ではアマチュア探偵と職業探偵なのである。


探偵行為が本業ではないことはもとより、金銭を受け取らないことは何度か強調されている。

「それで、どことんまでやる気かい?」
「出来れば、その先までもな」
「なぜだ? どんな利益があるんだ?」
「アマチュアとしてだ。それにきさまが<いやだからだ」
(新潮文庫「棺桶島」P447-448/三十棺桶島(10))

アマチュアとして(En amateur)、つまり報酬はいらないということである。少しひねた捕らえ方をすると、趣味、道楽としてということになる。

en amateur ((軽蔑して))道楽で,気まぐれに,いい加減に(「小学館ロベール仏和大辞典」1988)

「それじゃ、お詫びはしません」とパトリスは笑いながら言った。「そのかわり、お礼を申します」
「なんの? あなたの命とコラリーさんを救ったことのですか? お礼には及びません。人を救うのは、わたしにとってスポーツですよ」
(創元推理文庫「金三角」P368/金三角(9))

スポーツ、とりわけアマチュアスポーツのことだろう。この時代、ジェントルマンとアマチュア、スポーツという言葉は不可分の関係にあり、アマチュアスポーツはジェントルマンにのみ許された行為だった。近代オリンピックも、設立時にはアマチュア=ジェントルマンしか参加できなかった。労働者や、プロスポーツ選手、スポーツにより金銭を受け取ったことのある人物は参加することが出来なかったのである。


ルパンにとっては盗みも人助けもスポーツなのかもしれない。何より自らの好奇心にしたがって行動する人間であり、そこに救うべき人がいれば助け、奪うべきものがあれば奪う。そのためのアンテナを広げておくのは、どこにチャンスが転がっているか分からないからだ。そして好機を見つけたらそれに賭ける。それは冒険家(aventurier)と言うことになる。「813(5)」のルパンはヨーロッパの地図を書き換えんとする策謀家であり、敵である男爵との付き合い方のように危険と隣り合わせの状況を愉しむ危険愛好家でもある。

日々の努力を惜しまず、その日その日に悪事を働く一方、遊び好きで情にもろいドン・キホーテのように、持ち前の性格と道楽気分により、善行も施していたのである。
(集英社文庫「アルセーヌ・ルパン」P7/太陽のたわむれ(6-1))

「もう一つある。第三の賭だ。二百万フランが懐に入るかもしれんのだ……そしてほんの手付け金にすぎないその二百万フランを手に入れたら、そこからがぼくの腕の見せどころさ。(略)」
(集英社文庫「アルセーヌ・ルパン」P23/太陽のたわむれ(6-1))

aventurier 1 (手段を選ばず富や権力を得ようとする)策士;山師,ペテン師. 2 冒険家,あえて危険を求める人.(「小学館ロベール仏和大辞典」1988)

そしてこれは紳士強盗を捨てたルパンが墓碑銘に選んだ肩書きなのである(「813(5)」「虎の牙(11)」)。


前→怪盗紳士という称号(その3) - その登場
次→怪盗紳士という称号(その5) - 付記

※以上の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※

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怪盗紳士という称号(その3) - その登場

※以下の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※


この肩書きはいつから登場したか。最初に挙げた6つの用例のうち、最も登場が早いのは「ハートの7(1-6)」(「ジュ・セ・トゥ」1907年5月号)である。「ハートの7(1-6)」が掲載された翌月号に最初の単行本“紳士強盗アルセーヌ・ルパン”の広告が掲載され、実際に発売されている。「アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)」の“紳士強盗アルセーヌ・ルパン”という言葉は、単行本化の際に書き加えられたものである。「ハートの7(1-6)」の掲載は単行本発売に連動した企画でもあったのだろう。
雑誌「ジュ・セ・トゥ」目録

ルパンシリーズは長期にわたって書かれているため、何度か設定の見直しが行われているが、その中で一番初めで大きなものが、この紳士強盗の肩書きだろう。そしてアルセーヌ・ルパンのイメージが決定付けられたと思う。

私は金のために盗むのではない、紳士強盗だと嘯くことが出来た理由もこの頃思いついたのではないかと思っている。やはり金である。十分に稼いだとするのもいいが、趣味だと豪語できる収入源を別に持っていたとするなら…すなわち「奇岩城(4)」や「カリオストロ伯爵夫人(13)」で語られるものがそれである。すでに雑誌では「奇岩城(4)」のタイトルが発表されている。当初からルパンものにする予定だったかは不明だが、ルパンに紳士強盗の肩書きを付けた時には、レギーユ・クルーズの謎とルパンとを結びつける構想を持っていたと考える。


なお、アルセーヌ・ルパンの名前は最初から紳士強盗(gentleman-cambrioleur)と結びついていたわけではない。最初の肩書きは「金髪婦人(2-1)」の貴族強盗(gentilhomme-cambrioleur)である(「ジュ・セ・トゥ」1907年4月号)。翻訳で対応するのはこの箇所。

まるで記念碑に書きこむような次の文章を書き込んだ。
  二十世紀のはじめ、五年間、ここに怪盗紳士アルセーヌ・ルパン居住せり。
(岩波少年文庫「ルパン対ホームズ」P238/金髪婦人(2-1))

英語のgentlemanはフランス語のgentilhommeの派生語なので、両者は一部において似た意味を持つ。この貴族強盗(gentilhomme-cambrioleur)も紳士強盗とほぼ同じ意味だろう。(gentleman-farmerのフランス語形gentilhomme-fermierで豪農の意味がある)


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次→怪盗紳士という称号(その4) - 対義語あるいは類義語

※以上の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※

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怪盗紳士という称号(その2) - その意味

※以下の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※


では、紳士強盗(gentleman-cambrioleur)とはどういう意味なのか。cambrioleurというのはスリや路上荒らしではなく、建物に押し入って盗みを働く押し込み強盗や空き巣狙いを指す。だからこそ予告状を出したり、現場に名刺を残したりできるのだ。しかし、逆に言えば押し込み以外の場面では使えないということになる。gentlemanは英語からの借用語で、仏和辞書には「紳士」としか載っていないが、歴史のある多義の言葉である。長くなるので詳しく述べることはしない。

ここで留意したいのは、皮肉屋で嘘つきであるルパンの自称である以上、額面どおりに受け取ることは出来ないということでもある。そして、自ら名乗る以上ルパンの主張が織り込まれているはずだということである。

確かに紳士にして強盗と捉えても問題ないとは思う。「アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)」で「fantaisiste gentleman」と書かれているし、紳士なのだろう(この言葉は初出にもあり。ハヤカワ文庫では「芸術家肌の紳士」と訳されている。fantaisisteは「気まぐれな」という意味もある)。しかしハイフンで繋がっている以上、まずは一語として考えたい。その取っ掛かりとなるのは、「奇岩城(4)」の例である。cの箇所は原文ではこうなっている。

Le gentleman-cambrioleur est mort, vive le gentleman-farmer!

「A est mort, vive B」というのは「国王陛下崩御、新国王万歳!(Le Roi Est Mort, Vive Le Roi!)」というのをもじったものである。このフレーズはよく使われるらしく、映画「エディット・ピアフ ~愛の賛歌~」(2007年日本公開)の中に登場する新聞記事でも「子スズメは死んだ、エディット・ピアフ万歳!」という風に使われていた。他にルパンは「金三角(9)」では種明かしの場面で使っている(AがBに摩り替わったことを言っている)。「虎の牙(11)」では「アルセーヌ一世は死んだ、フランス万歳!」なぞとのたまっている。
Le Roi est mort, vive le Roi ! - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Le_Roi_est_mort%2C_vive_le_Roi_%21

文字通り訳すなら「紳士強盗は死んだ、紳士百姓万歳!」となるだろう。gentleman-cambrioleurは作者の造語だが、gentleman-farmerは暦とした英語からの借用語で辞書にも載っている。英語の形そのままなので英語の辞書にも載っている。(「綱渡りのドロテ」でも使われていて、創元推理文庫では「ジェントルマンの農園主」(P39)と訳されている。)

gentleman-farmer ((英語))豪農:道楽で農業経営をする名士(「小学館ロベール仏和大辞典」1988)
gentleman-farmer 1(他に財産・収入があって)趣味で農業をする人. 2(自分で労働する必要のない)豪農(「ランダムハウス英語大辞典」第2版、小学館1996)

意味を置き換えると、

  1. (他に財産・収入があって)趣味で強盗をする人
  2. (自分で労働する必要のない)大強盗

となる。ここでいう紳士とは働かなくても食っていける金持ち、盗みは金持ちの道楽というわけである。しかし残念ながら日本語の紳士に金持ちの意味合いは薄い。(イギリスの伝統的なジェントルマン階級は地代などの不労所得があった)


金は十分に持っている、金が目的ではないのだ、と言う主張は主に美術品を盗むことに現れているのかもしれない。しかしこの主張が最も効果的に使われているのは「813(5)」だ。冒頭のやりとりは緊張感があってぞくぞくする。相手はルパンの正体も目的が分からない。だから金で解決しようとするのだが、部下のマルコにこの方がお金を下さるそうだ、とかわし、目的の第一段階を踏んだあとに初めて名刺を出すのである。

私は最初に読んだ(再読)したとき、本当にルパンか?と思った。そして、名刺を出したことが逆に怪しい、とも思った。わざわざ名乗ることに何の意味があるのか。盗みは趣味だといいつつも、強盗という行為は実利を求めるものである。この肩書きを名乗っておいて、金にならないことをするわけがない。しかし強盗殺人を犯したとは聞かない。本物であれ偽者であれ、紳士強盗と名乗ることは、今までのアルセーヌ・ルパンの威を借ることである。安心といっても、どうやら命をとられることはなさそうだという程度の安心なわけで、そこをすかさず突くルパンのセリフがまたいい。

dの箇所は新潮文庫ではこうなっている。最初に読んだときやっぱりこれだと思った。この場所は紳士強盗でないと締まらない。よしんば日本語で言う紳士的の意味だとしても、この名刺を突きつけられて鵜呑みにするのは余程鈍い奴で、たいていは「自分の要求を呑む限りにおいては」という但し書きつきか、「他人にとっては(自分にとっては)少なからず紳士的ではない」という逆説的な意味で受け取るだろう。

彼はポケットから一枚の名刺を取り出し、読み上げた。
「アルセーヌ・ルパン、紳士強盗」(新潮文庫「813」P31)

原文ではこうなっている。

Et, tirant une carte de sa poche, il prononca:
- Arsene Lupin, gentleman-cambrioleur.

「Arsene Lupin, gentleman-cambrioleur」これは最初の単行本タイトルと全く同じである。のみならず、a、b、eでも同じ並びで書かれている。特別な書き方ではないようだが、意識して書かれているのだろう。名前と肩書きのバランスは重要な要素である。ではfだけハイフンの付かない、冠詞の付いた「le gentleman cambrioleur」なのは別の意味があるのかもしれない。


前→怪盗紳士という称号(その1)
次→怪盗紳士という称号(その3) - その登場

※以上の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※

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怪盗紳士という称号(その1)

※以下の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※


アルセーヌ・ルパンの代名詞となったこの言葉は「gentleman-cambrioleur」の訳語である。最初の単行本に選んだタイトルであり、ルパンの肩書きでもあるあるこの言葉は、さまざまな日本語で訳されて、さらにその訳語が独立して使われているため、本来の意味、本来の使われ方が捕らえづらくなっていると感じる。私はフランス語も英語も分からないので、意味を断言することは出来ないが、この言葉の忘れられがちな側面について整理してみたいと思う。

なお、「gentleman-cambrioleur」の訳語には紳士強盗という語を使うことにする。(新学社文庫、新潮文庫などでこの訳語が用いられている)


紳士強盗の言葉が原作に出てくるのはそれほど多くない。次の6箇所である。(調査対象は小説のみ)

  1. 《(略)あらためて参上しよう。怪盗紳士アルセーヌ・ルパン》
    ハヤカワ文庫「怪盗紳士ルパン」P11/アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)

  2. このようにして、(略)怪盗紳士ことアルセーヌ・ルパンその人であると知ったのである。
    ハヤカワ文庫「怪盗紳士ルパン」P234/ハートの7(1-6)

  3. 「(略)怪盗紳士ジェントルマン・カンブリオルールは死んだのだ。百姓紳士ジェントルマン・ファーマーばんざい! というわけさ」
    岩波少年文庫「奇岩城」P371/奇岩城(4)

  4. 男はポケットから一枚の名刺をとりだすと、これを読みあげた。
    「怪盗紳士、アルセーヌ・ルパン」
    偕成社文庫「813」P31-32/813(5)

  5. 〈下名、強盗紳士、元大佐、元下男、元死体、アルセーヌ・ルパンは、(略)〉
    新潮文庫「ルパンの告白」P295/白鳥の首のエディス(6-7)

  6. 『おれだ、アルセーヌ・リュパンだ。昔の詐欺師、怪盗紳士、ここにあり。(略)』
    創元推理文庫「虎の牙」P481/虎の牙(11)

これに加えて、1冊目の短編集のタイトル「怪盗紳士ルパン(1)」がある。なお、fだけハイフンが付かない「gentleman cambrioleur」である。

この使われ方を見るだけで二つのことが分かる。一つは、bを除いてルパンの発言またはルパンが書いた言葉であること。bの語り手はルパンのスポークスマンだから、ルパン公認といえる。紳士強盗というのはルパンの自称なのである。ルパンが自覚し、他人からも指摘される肩書きには強盗(cambrioleur)や詐欺師(escroc)がある。

もう一つは、使用例が初期の作品に限られていること。内容を考慮に入れるとcは引退宣言、dは復活宣言、fは引退後の話であって、現役を謳っているのはa、b、eしかない。第1次世界大戦より前に書かれた、第1次世界大戦が起こる前の時代ベル・エポックを舞台とした作品である。正確に言うと「虎の牙(11)」は大戦後に加筆出版されたが、fの箇所は大戦前の英訳に存在する。また「昔の」という言葉は詐欺師にしか係っていないが、立場的には引退しているし、元強盗(ex-cambrioleur)とも名乗っている。


「紳士強盗」こそシリーズ前半期のキーワードである。だから作品関係図を作ろうと考えて、第1作から「虎の牙」までを線で結んだ。紳士強盗の誕生から引退まで。盗みは終生やめることは出来なかったが、シリーズ後半では紳士強盗を名乗っていない。


次→怪盗紳士という称号(その2) - その意味

※以上の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※

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シャーロック・ホームズ対アルセーヌ・ルパンのアドベンチャーゲームのデモ版公開

ホームズとルパンが対決するアドベンチャーゲームのデモ版が公開されました。北米では「Sherlock Holmes:Nemesis」と改題されているようです。
スペックが合わないので私は残念ながらプレイすることが出来ません

4Gamer.net ― 今度の相手はルパン。推理アドベンチャー「Sherlock Holmes:Nemesis」のデモ版をUp
http://www.4gamer.net/games/040/G004097/20080331006/
4Gamer.net ― Sherlock Holmes:Nemesis[PC]
http://www.4gamer.net/games/040/G004097/


シャーロック・ホームズ対アルセーヌ・ルパンのアドベンチャーゲーム発売
シャーロック・ホームズ対アルセーヌ・ルパンのアドベンチャーゲーム発売(続報)
このゲームは日本にも輸入されています。


□2008/11/01
デモ版のレビュー
Sherlock Holmes Nemesis Demo
http://www.game-damashi.com/demos/sh4.htm

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探偵講談「ルパンVSホームズ」上演予定

講談師・旭堂南湖氏の探偵講談は2ヶ月に一回開催されているようですが、次回は「ルパンVSホームズ」をやるそうです。
第40回「名探偵ナンコ」:講談師・旭堂南湖のレポート:So-net blog
http://nanko.blog.so-net.ne.jp/2008-03-26


過去の演目が紹介されています。3月23日(日)に行われた第39回はガボリオ作「ルコック探偵」の翻案だったようです。
探偵講談:講談師・旭堂南湖のレポート:So-net blog
http://nanko.blog.so-net.ne.jp/2008-03-23

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ルパンシリーズ人名リスト

ルパンシリーズの登場人物の名前を、人名リストとして公開しました。

ルパンシリーズ人名リスト


説明は基本的に最初に登場したときの記述を元にしているので、辞書的な使い方はできないと思いますし、原文の綴りの順なので、使いづらいとも思いますが、とりあえず人名を浚ってみるということで。読みについては一部変更しましたが、表記の統一を図っていません。

なお、「カリオストロの復讐(20)」は作業中の状態です。理由が偕成社文庫が手元に見当たらないというちょっと情けないものです。でもいざHTMLにしてみるとぽろぽろとミスを発見してしまうもので、かなり直したものも、たぶんまだ残ってます。戯曲についてはさらに怪しいです。


爵位や役職については整理したいと思っていて、爵位については原文をチェックしてだいたい整理できているかと思います。princeは大公としました。

役職については未整理です。たとえば、ベシュの役職は、「バーネット探偵社(15)」では「inspecteur」で、最後に「brigadier」に昇格。「謎の家(16)」以降は「brigadier」だけれど、「ルパン最後の事件(21)」でなぜか「brigadier」にしてやると言われています。(ルパンのベシュとの会話はどこまで本気なのか分からないので最後のは冗談と受け取っておこうか。)

メモ。「inspecteur」は刑事(私服の捜査官)のことで、刑事、警部etc.と訳されている。他のinspecteurはデュージー、フォランファン、ヴェロなど。「brigadier」は班長という意味なので、他の刑事たちより偉いと思われる。翻訳では部長刑事や巡査部長と訳されている。他のbrigadierは、グレル、マズルー、フォランファン(「ルパン対ショルメス(2)」のみ)。ガニマールは「inspecteur principal」。主任刑事、主任警部etc.と訳されている。ゲルシャールも同じ。「アルセーヌ・ルパンの帰還(A1)」ではinspecteur。


「ふたつの微笑を持つ女(18)」と「アルセーヌ・ルパンの冒険(A5)」の電話交換手はどちらも同じカロリーヌなんですよね。同じ人物かもしれません。

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森元さとる「ミステリー・クラシックス」アルセーヌ・ルパン編(2)発売中

「太陽の戯れ(6-1)」と「十二枚の株券(15-5)」が収録されている。前者は創元推理文庫、後者は偕成社版から。

他に、トマス・W・ハンシューの四十面相のクリークシリーズ「ライオンの微笑」。ガストン・ルルーの「ノトランプ」が収録されています。(1)に入っている「七人のきこり」といい、「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」で攻めるのかな。


講談社BOOK倶楽部 mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(2)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=3711250
「太陽の戯れ」
「ライオンの微笑」
「十二枚の株券」
「ノトランプ」
(ルパンシリーズの作品と、それ以外の作品が交互に収録されている)

<既刊>
講談社BOOK倶楽部:mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(1)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=370985X

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セルジュ・ド・レンツ

今回は実在の犯罪者の紹介。
ルイ・シュヴァリエ「歓楽と犯罪のモンマルトル(下)」ちくま学芸文庫より

《一九二二年一月十五日、(略)、彼は自分のアパートから、見知らぬきわめて優雅な紳士が大きなスーツケースをもって出てくるのを見て驚いた。彼はあとをつけ、警察を呼んだ。取調べが始まると、すこしもおびえず、じつに優雅に、その見知らぬ男は断言した。「私はセルジュ・ド・レンツ、二十七歳。ヌイイのビノー大通りに住んでいます。私は紳士強盗です。あるいはこう言ったほうがよろしければ、強盗貴族です……」》(P335)

「紳士強盗」の原文はほぼ確実に「gentleman cambrioleur」と思われる。つまりアルセーヌ・ルパンの肩書きである(怪盗紳士と訳されてしまうことが多いけど)。この本にもアルセーヌ・ルパンの再来だと書かれている。

正面玄関をよじのぼり、屋根の上に這いあがり、月明りで美しい眠れる女性、夢を見たと思っている女性の前にあらわれる前に、かならず楽しみとアリバイ作りのためにモンマルトルのキャバレーにあらわれた。そのときにはかならず片眼鏡をかけ、新しい手袋をはめて、美しい女性を同伴していた。(同P336)

なるほど、と思わせる。でもルパンはモンマルトルに縁が薄いような気がする。シリーズ前半では。それゆえに犯罪行為に血生臭いイメージがないのだろうかとこの本を読んで思った。

Serge de Lenz - Wikipedia(仏語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Serge_de_Lenz


この男はその筋では有名らしく、アンドレ=フランソワ・ルオー氏作成の年表にもルブランとルパンシリーズ単行本の表紙絵を手がけたレオ・フォンタンがレンツの裁判を傍聴したらしきことが書いてある。

Arsene Lupin : chronologie d'un gentleman-cambrioleur(仏語)
http://captainbooks.free.fr/articles/lupin.html
「アルセーヌ・ルパン」エピソード年表(ルオー氏作成版)

アルセーヌ・ルパンは第1次世界大戦以降紳士強盗という肩書きを使用していない。その理由は時代にそぐわなくなったからだと私は考えているけれど、ケチが付いたから、と考えるのも一興かな。

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「アルセーヌ・ルパン物語 怪紳士」保篠龍緒訳

新学社文庫、1980年初版、1997年重版
□目次
ルパンの捕縛(1-1)
人か魔か(1-2)
脱獄(1-3)
不思議な旅客(1-4)
ハートの7(1-5)
王妃の首飾り(1-6)
アムベール夫人の金庫(1-7)
黒真珠(1-8)
遅かりし大探偵(1-9)

メモのみ。

新学社文庫は教育用のため、一般では購入できない。
中学校教材 | 新学社
http://www.sing.co.jp/school/jh_mate/sonota/sinbunko.html

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雑誌「ネムキ」2008年3月号に「怪盗アルセーヌ・ルパン 八点鐘」掲載

JET氏による漫画化。今回は事件1「塔のてっぺんで」。連載のようなので「八点鐘」全8編をやると思われます。

OPENDOORS:雑誌:ネムキ
http://opendoors.asahi.com/nemuki/index.shtml


いつも「百鬼夜行抄」と「薔薇ノ紡書」を読むのに見逃してました。不覚。


□2008/02/26感想
エーグルロッシュが、殺した男の名前ではなく、殺された男の名前になってました。おそらくその方が成り上がりという様相がハッキリすると思ったのでしょう。でも私は、分かっていて注意をそらしながら本質に迫っていくというそら惚けた会話が好きなので、あっさり風味に思えてしまいます。あおりでは恋愛で引っ張るようですが。最後オルタンスが肩を露出しているっぽい服なのが、気になりました。暫くはケープとか羽織らないのかな。

今回の漫画化の底本は新潮文庫のようです。口調が独特なのですぐ分かる。巻末のコーナーにあらためて新潮文庫を購入したことがかかれてますが、新潮文庫の一人称は改訂されていないと思います。「813」などでは思いっきり「わし」と言っています。貴婦人の前では「僕」になる猫被りなのです。

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シャーロック・ホームズ対アルセーヌ・ルパンのアドベンチャーゲーム発売(続報)

海外からの輸入ゲームを扱う店でも購入できるようです。

Sherlock Holmes versus Arsene Lupin
http://store.shopping.yahoo.co.jp/ifeelgroovy/2104.html
GDEX Online Game Store
http://www.gdex.co.jp/?mode=search&pattern=detail&itemid=101-11831
Sherlock Holmes VS Arsene Lupin 秋葉原アーク(ark)PC
http://www.ark-pc.co.jp/item/Sherlock+Holmes+VS+Arsene+Lupin/code/50100648


検索してみたけれど日本人でプレイしている方もいるみたい。やっぱり英語が難しいとか。リンクはしないけれど、攻略ページ(英語)もできているらしい。Walkthroughという単語で検索できるらしい。


シャーロック・ホームズ対アルセーヌ・ルパンのアドベンチャーゲーム発売

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オペレッタ「銀行家アルセーヌ・ルパン」のニュース映像

「銀行家アルセーヌ・ルパン」公演についてのニュース映像を発見
ルパン役の人の短いインタビューもあり。フランス語なので分からないけど。

''Arsene Lupin banquier'' au Theatre de l'Athenee a Paris - AOL Video-
http://video.aol.com/video-detail/arsene-lupin-banquier-au-theatre-de-lathenee-a-paris/891154450


フランスでオペレッタ「銀行家アルセーヌ・ルパン」が上演予定(続報)

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アニメ「魔法のプリンセス ミンキーモモ」 怪盗ルピン

魔法の国フェナリナーサのプリンセス・ミンキーモモが、魔法で大人になり人々を助けて夢を与えるために頑張るというアニメ。後にリメイク作品が作られたけれど、これは初代の作品。懐かしいなと思って見ていたら、怪盗ルピンというキャラクターが出てきた。タツノコのルパンとキャラクターデザインが似ている気がする。どこがって…髪の色だけかもしれない。


第8話での登場はこんな感じ。
警官に変身したモモに見つかり盗んだ品物を置いていった泥棒、実は怪盗ルピンだった。逃亡中モモの姿が忘れられず引き返し、ヤクザ闘争からなだれ込んだ喧嘩に巻き込まれたモモを助けようと飛び込むが、一網打尽に捕らえられる。
あまり筋には関係しない脇というところ。声は筈見純という方が当てている。

他に12話と41話にも出てくるようだけどなかなか見る機会が無い。ダウンロードレンタルというのができるサイトを見つけたけれど手を出せていない。

魔法のプリンセス ミンキーモモ 第12話 怪盗ルビン大反撃 ダウンロード・レンタルビデオ【ビデックスJP】
http://www.videx.jp/anime/_item/item010801.htm
横に4つ並んだ画像の右から2番目の男がルピン

魔法のプリンセス ミンキーモモ ダウンロード・レンタルビデオ【ビデックスJP】
http://www.videx.jp/anime/_item/item010783.htm


(参考)タツノコのルパン
怪盗ルパン 813の謎 [廃盤/激レア][タツノコプロ]ビデオ・DVD - あるあるビデオドットコム
http://www.aruaruvideo.com/detail/G98507.html
アニメ「怪盗ルパン 813の謎」

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雑誌「マガジンGREAT」2008年1月号に「白鳥の首のエディス(リュパンの告白)」の漫画を掲載

森元さとる氏による「ミステリー・クラシックス」シリーズ、今回は「リュパンの告白」中の短編「白鳥の首のエディス(6-7)」。

月刊少年マガジンWEB:マガジンGREAT
http://www.gekkanmagazine.com/great/index.html

<既刊>
講談社BOOK倶楽部:mystery classics 甦る名探偵達 アルセーヌ・ルパン編(1)
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=370985X

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川、証拠、泣く、空洞の - 奇岩城(4)

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


「奇岩城(4)」で暗号を解こうとするときに、ある単語に対してボートルレが4つ候補を出す。すなわち、fleuve(川)、preuve(証拠)、pleure(泣く)、creuse(空洞の)。


とある本(※)を読んでいて「fleuve 川」という見出し文字を見て浮かんだ。「川」そういえば「奇岩城」に出てくるぞと。全部で4つ合ったはず、「空洞の」はもちろんアレだし、「泣く」…泣いてたなあ。もう一つなんだっけ?と思って確認をしてみたら「証拠」。事件には付き物! ということでこれらのキーワードは全部「奇岩城」に織り込まれている。(※「キリスト教シンボル事典」白水社文庫クセジュ)

…四題噺? でも最初の事件で証拠を強調してみせたのも、相手に年齢の分だけ繊細で感受性の強い少年を持ってきたのもこのことがあってだろうと思う。川はコー地方の一辺。泣くのは少年だけではない。その涙に動揺させられてしまった私としては、意図的に使用していると考えたい。


pleure(泣く)は動詞pleurerの活用形の一つ。同じ形で出てくるのは暗号に触れた所以外では2箇所。

「泣くなよ、ぼうや。君がやったような、頭をさげてたたかいにとびこんでいくようなときには、これくらいの打撃は覚悟しなければならないのだ。(略)」(岩波P158)
Ne pleure pas, petit. Ce sont la des coups auxquels il faut s'attendre, quand on se jette dans la bataille, tete baissee comme tu l'as fait.

彼はもおう泣いていない。泣きたくもないし、ベッドの中で身もだえしたくもないし、二時間も絶望しつづけてきたが、今はそれもしたくない。(岩波P240)
Il ne pleure plus, il ne veut plus pleurer, ni se tordre sur son lit, ni se desesperer, comme il le fait depuis deux heures.


暗号に戻ると、連続した2語なら「空洞の」しか残らないけれど、独立した2語とするなら動詞の「泣く」はともかく、名詞の「川」と「証拠」は活かせそうにも思えるのに、すぐに一つに絞られて、固定されてしまう。そのあたりを考えてもやはり話の主導権を握っているのは少年側ではない。


※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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「ミステリーズ!」vol.26 路地裏の迷宮踏査 人騒がせなルブラン

東京創元社|ミステリーズ!
http://www.tsogen.co.jp/mysteries/index.html
杉江松恋 路地裏の迷宮踏査26 人騒がせなルブラン
P314-315(モノクロ2P)、vol.26(2007年12月号)

「ミステリーズ!」は見かけは雑誌だけど書籍扱い。題のルブランはモーリス・ルブランの妹ジョルジェット・ルブランのこと。モーリス・メーテルリンクの長年のパートナーだった女性である。メーテルリンクは著書の「限りなき幸福へ」でジョルジェットに対して称賛の語を交えた献辞を書いているらしい。

□メモ
ジョルジェットがモーリス・ルブランのパリでの活動を助けたことは確かだろう。ジョルジェットやメーテルリンクを通して、アルフォンス・アレやステファヌ・マラルメらと知り合うことになる。
Le Monde.fr : Au pays de monsieur(仏語)
http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3246,36-681838@51-672256,0.html
→(参考)「ル・モンド」紙の記事:ルパン氏の生まれた土地で

アルフォンス・アレは作中でモーリス・ルブランの「これが翼だ」を読むよう薦めている。自転車という新たな移動手段への讃美をなしとげたと褒めているらしい。
Pour cause de fin de bail by Alphonse Allais - Project Gutenberg(作品は仏語)
http://www.gutenberg.org/etext/22111
坂本浩也「自転車をめぐるフィクション 19世紀末フランスにおける速度の詩学と性差のイデオロギー」
http://www.desk.c.u-tokyo.ac.jp/j/books_f010.html

ジョルジェットの生年はWebでは1869年と1875年の両方が流布している。1893年のデビューなら後者が正しそうだけれど、信頼できる情報がないのでどちらとも決しがたい。
Matt & Andrej Koymasky - Famous GLTB - Georgette Leblanc(英語)
http://andrejkoymasky.com/liv/fam/biol1/lebl1.html
Amazon.fr : Georgette Leblanc (1869-1941) Biographie Livres Maxime Benoit-Jeannin(仏語)
http://www.amazon.fr/dp/2871061971