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2023/04/15

20世紀初頭のフランスと「枕草子」

「枕草子」のフランス語翻訳について調べていたら、フランスのルネ・ヴィヴィアンという20世紀初頭の女性作家が、清少納言について触れているということを知った。彼女が友人との共著ポール・リヴェルスダール名義で1904年に発表した『根付』という作品である。


中島淑恵「ルネ・ヴィヴィアンと日本の三人の女流詩人 : ポール・リヴェルスダールの著作における小野小町・清少納言・ 加賀千代女の記述をめぐって」

https://toyama.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=254


「枕草子」に基づいた詩と思われるものが紹介されているのだが、「春:曙」「夏:夜」「秋:宵」ときて「冬:昼間」なのである。冬が「つとめて(早朝)」ではない。ここが気になって調べてみた。「枕草子」単体では英語訳もフランス語訳も出ていないが、アストンの「日本文学史」には、「枕草子」の部分訳が含まれている。原著は英語で1899年に出版され、1908年に日本語訳が出ている。


日本文学史(W.G.Aston 著, 芝野六助 訳補)

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/992379/1/131

A History of Japanese Literature/Book 3/Chapter 5 - Wikisource, the free online library(英語)

https://en.wikisource.org/wiki/A_History_of_Japanese_Literature/Book_3/Chapter_5


「冬の雪は言葉では言い表せないほど美しい!(自動翻訳)」

となっていて、時間の表現がない。


日本語訳の方は、原文の翻訳ではなくて、日本で流通している本文(能因本系統)を引用している。原文はおそらく「枕草子春曙抄」から英訳したのではないだろうか。とあたりはついたのだけど、そもそも「枕草子春曙抄」読んだことがなかった。


枕草子春曙抄 上 (岩波文庫 ; 742-747)

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/1129774/1/21

早稲田大学:枕草子春曙抄. 1-12 / 北村季吟 [著](影印)

https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/bunko30/bunko30_e0094/index.html

https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko30/bunko30_e0094/bunko30_e0094_0001/bunko30_e0094_0001_p0006.jpg


「冬は雪の降りたるはいふべきにもあらず。」


なんてこった、冬はつとめてではなかった(笑)


「枕草子春曙抄」は江戸時代に出版された「枕草子」の注釈書。江戸時代の知識人はほとんど「枕草子春曙抄」で枕草子を読んでいたので、「冬はつとめて」を知らなかったのではないだろうか。「つとめて」は江戸時代には完全に死語だったからかもしれない。「日本文学史」に枕草子は全部で13巻とあることからも「枕草子春曙抄」から翻訳したと推察できる(「枕草子春曙抄」全12巻と「装束抄」1冊でセットになっていることがある)。


アストンの「日本文学史」は1902年にフランス語訳が出版されている。

Gallica - Litterature japonaise / par W. G. Aston ; traduction de Henry-D. Davray(フランス語)

https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k9600256b

https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k9600256b/f135.item


「冬は昼間」とはなっていないので、ルネ・ヴィヴィアンがアストンの「日本文学史」を読んだとは確定できないけれど、少なくとも「春はあけぼの」の段について、彼女が解しうる翻訳はあったのである。


年代的にアルセーヌ・ルパンが読んでいてもおかしくはない(笑)



□参考文献・リンク

『枕草子』千年のあゆみ|ちくま学芸文庫|島内 裕子|webちくま

https://www.webchikuma.jp/articles/-/576

島内裕子「徒然草研究の起源―欧米における研究から聞い直す」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/chusei/52/0/52_52_11/_article/-char/ja/

アストンの『日本文学史』を読みたい。 | レファレンス協同データベース

https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000054899

「20世紀初頭のフランスにおける『枕草子』受容」(常田槙子)

https://genjiito.org/report/%E7%AC%AC13%E5%9B%9E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A%E5%A0%B1%E5%91%8A%EF%BC%882020-02-12%EF%BC%89/

研究報告書一覧 - 海外平安文学情報(「日本古典文学翻訳事典」)

https://genjiito.org/aboutkaken/allresearchreports/

平安文学翻訳史 - 海外平安文学情報

https://genjiito.org/heian_ltrt/heian_history/



□おまけ

このページで見られるのは、1875年のプフィッツマイアーによる最古のドイツ語訳「Die Aufzeichnungen der japanischen Dichterin,Sei Seo-Na-Gon」(日本の詩人清少納言の手記)で良いのだろうか。アルファベットで日本語の読みを示し、ドイツ語訳が続いている(英語もドイツ語もフランス語も分からない…)

Sitzungsberichte(ドイツ語)

https://archive.org/details/sitzungsberichte81stuoft

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