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2015/09/08

南洋一郎「佐久良探偵と怪盗ルパン」(その1)

南洋一郎のオリジナル作品のなかに「洞窟の魔人」という本がある。濃いルパンファンの中では知られた作品である。表題作の他に「佐久良探偵と怪盗ルパン」という作品が収録されているからだ。南氏は自分の創造した探偵を怪盗ルパンと対決させているのである。ちなみに「洞窟の魔人」の発行は1956年、ポプラ社の怪盗ルパン全集が刊行されるのは1958年からである。

「佐久良探偵と怪盗ルパン」に出てくるルパンは悪役であり、強きをくじき、弱きを助ける義賊のルパンではない。そのため読むと違和感を覚えずにはいられない。

弥生美術館で開催された展示会の図録『南洋一郎と挿し絵画家展』では、南が自作に怪盗ルパンを登場させた作品として「蒙古王の宝冠」の名が挙がっている。「佐久良探偵と怪盗ルパン」を読んだときに、登場人物の名前から「蒙古王の宝冠」のリライトかもしれないと思って「蒙古王の宝冠」を探して読んでみた。果たしてリライト前の作品だった。これもルパンは悪役で、後の「怪盗ルパン全集」に出てくるようなルパンではない。

さて昨今、国立国会図書館が所蔵資料のデジタル化を進めていて、その中に、南洋一郎の「蒙古王の秘宝」という作品名が目についた。読んでみると、思った通り「蒙古王の宝冠」の原型であった。しかも、出てくる悪役は馬賊。ルパンではないのである。


出版順に並べると次の通りになる。

【A】蒙古王の秘宝(1930年・昭和5年)…悪役は馬賊
「少年倶楽部」1930年1-3月号
国立国会図書館デジタルコレクション - 少年倶楽部. 17(1)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1764756
国立国会図書館デジタルコレクション - 少年倶楽部. 17(2)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1764757
国立国会図書館デジタルコレクション - 少年倶楽部. 17(3)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1764758

【B】蒙古王の宝冠(1948年・昭和23年)…悪役はルパン
「冒険少年」1948年10月増刊号

【C】佐久良探偵と怪盗ルパン(1956年・昭和31年)…悪役はルパン
『洞窟の魔人』ポプラ社、1956年
国立国会図書館デジタルコレクション - 洞窟の魔人
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1638794

「蒙古王の宝冠」(以下【B】とする)や「佐久良探偵と怪盗ルパン」(以下【C】とする)でルパンが注射で仮死状態になったり、部下の団員が捕まるより死を選ぶなどは、原作のルパンとは相容れない。元々「蒙古王の秘宝」(以下【A】とする)では青面鬼賊という悪の馬賊の一団だった。ルパンが「満州蒙古はわれわれが自由にあばれまわれる大天地だ」(【C】P256)と言うのも元々馬賊の副首領ゆえのセリフなのである。


主な違いをまとめてみた。

主人公宝の元の主宝の鍵誘拐される子供
【A】山村猛青面鬼賊の副首領ジンギスカン青銅鈴(全部で六つ)李少年(主人公の恩人の馬賊・李将軍の忘れ形見)
【B】桂木赤短剣団の首領ルパン、副首領リージンギスカン七つの黄金鈴桂木陽子(主人公の娘)、八太郎(主人公が保護した孤児)
【C】佐久良竜太郎黄金短剣団の首領ルパン、副首領リージンギスカン七つの黄金板桂木陽子(主人公の姪)、八太郎(主人公が保護した戦災孤児)、三吉(主人公の助手。戦災孤児)

□あらすじ(共通)
主人公はある日怪しい外国人を目撃する。その外国人は悪事を働く秘密団体の印を身につけていた。跡をつけると、秘密団体の首領(副首領)が待ち構えていた。首領(副首領)はジンギスカンの宝を追っていて、主人公が持っている宝の鍵を渡せというのだ。主人公は脅迫を拒むが、今度は主人公の庇護する子供が誘拐されてしまう。

・前半(満州に渡る前)の【B】と【C】の内容はほぼ同じ。
・【B】と【C】では冒頭で主人公と孤児が出会うが、【A】には存在しない。
・【A】と【B】では満州に渡る前に脱獄した敵と横浜のホテルで対峙するが、【C】では省略されている。
・【A】と【B】では満州に渡ってから敵が持っていた宝の鍵が偽物だったという展開があるが、【C】では省略されている。
・【A】では横浜のホテルの事件で敵が改心し、誘拐された子供を取り戻すが、【B】と【C】では満州に渡る飛行機の事件で、敵の部下が改心する。
・【A】の敵である副首領の役割が、【B】【C】では首領のルパンとなり、改心する部分のみ部下の副首領に負わせている。


次→南洋一郎「佐久良探偵と怪盗ルパン」(その2)

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