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2011/06/05

青春の泉(その2)

※以下の文章は「緑の目の令嬢(14)」の内容に触れています。※


「カリオストロ伯爵夫人(13)」の引用箇所について、少し困った問題がある。創元推理文庫版では違う言葉で翻訳されているのだ。

ジュツルナ(ギシリア神話のニンフで、ゼウスに愛されて泉となりそれに浴すると若返る)の泉(創元推理文庫「カリオストロ伯爵夫人」P110)

テキストの誤認なのか、元のテキストがそうなっていたのか分からない。ジュツルナはユトゥルナのことだろうか。ただしユトゥルナはギリシア神話ではなくローマ神話の(したがってゼウスではなくユピテルに愛される)ニンフで、「若返る」という典拠も不明。また、創元版に引きずられてか、偕成社アルセーヌ=ルパン全集には「ギリシア神話」という補足がある。

あなたはギリシア神話に出てくる青春の泉で沐浴をなさっているのでしょう。(偕成社アルセーヌ=ルパン全集「カリオストロ伯爵夫人」P122)

ローマ神話で「青春」と関係するのは青春の女神ユウェンタース。名前自体に「青春」という意味がある。ギリシア神話の「ヘーベー」と同一視されたが、本来若返りに関する逸話を持っているのはヘーベーで、ユウェンタースは成年男子の守護神らしい。

Juturne - Wikipedia(フランス語。ユトゥルナ)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Juturne
Juventas - Wikipedia(フランス語。ユウェンタース)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Juventas
Hebe - Wikipedia(フランス語。ヘーベー)
http://fr.wikipedia.org/wiki/H%C3%A9b%C3%A9


「緑の目の令嬢(14)」には「青春」を祀った神殿が登場する。

やがて二人は青春を祭った小さな建物のまえに出た。案外ながら、風流なもので、調和のとれた円亭(ロトンド)だったころがしのばれる。段になった台があり、池には紅顔の四少年が支えている水盤が立っており、ほとりには青春の像がそびえていたにちがいない……。(創元推理文庫「緑の目の令嬢」P276/緑の目の令嬢(14))

この「青春」(la Jeunesse)は女性形だから女神、すなわちユウェンタースと同じだと思うが確証はない。また、この神殿のある名前の場所はジュヴァンである(「Juvains」と綴る。創元推理文庫では「ジュヴァンス」、偕成社アルセーヌ=ルパン全集では「ジュバン」と表記されている)。

「(略)(ジュヴァンスは、ラテン語ユウェンティア Juventia のちぢまったもので、ジゥーヴァンスとおなじ意味です)(略)」(創元推理文庫「緑の目の令嬢」P247)

「Juvains」は「Juventia」が縮まったもので、「Jouvence」(「青春の泉」の「青春」)の意味、とのことだが、この音韻変化、語形変化はありうることなのかわからない。いくつか類似した語を調べたが、語頭の部分はラテン語で「若い」を意味する「juvenis」に由来すると考えてもよさそうだ。「Juventia」は「Jouvence」の語源を遡るときに想定される(ミッシングリンクとなる)架空の語形らしい。

jouvence(→jeune)
【古】若さ、青春
[古フランス語jouventeの変形(jouvenceauにならう)〈俗ラテン語*juventa =古典ラテン語juventus, utis ←juvenis 若い〉]

jeunesse(→jeune)
1 青少年期、青春時代
2 若さ、若々しさ

juvenile(→jeune)
1 若者特有の、若々しい
[ラテン語juvenilis ←juvenis 若い]
(「ロベール仏和大辞典」)

juvenis - Wiktionnaire(フランス語)
http://fr.wiktionary.org/wiki/juvenis
jouvence definition de jouvence et synonyme de jouvence (francais)(フランス語)
http://dictionnaire.sensagent.com/jouvence/fr-fr/


□参考文献
高津春繁「ギリシア・ローマ神話辞典」岩波書店、1960年


□2011/06/12
地名の「Juvains」は1960年のラジオドラマでは「ジュヴァンス」と発音されている。

□2011/07/11
松原國師「西洋古典学事典」(京都大学学術出版会、2010年)では、ユウェンタースの項に「(仏)Jeunesse」とある。

後代の伝承では、ユウェンタースはユーピテルによって泉に変えられたニュンペー(ニンフ)で、この泉水に浸かった者を若返らせる霊力を有していたとされる。(「西洋古典学事典」P1293)


前→青春の泉(その1)

※以上の文章は「緑の目の令嬢(14)」の内容に触れています。※

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コメント

『西洋古典学事典』の「ユートゥルナ」の本見出し項目には、イタリア語として“Giuturna”とございますね。1297ページの右側でしてよ。

ですけど、ユートゥルナはゼウス=ユーピテルに愛された泉のニンフだとは書かれていませんね。

情報ありがとうございます。
メモをひっくり返してみたのですが、「西洋古典学事典」を調べたときのメモは出てきませんでした。もう一度調べて見ます。

ユートゥルナがユーピテルに愛された~という情報はどこの出典なのか謎ですね。

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