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2010/12/08

山田登世子「誰も知らない印象派 娼婦の美術史」

左右社、2010年
左右社:山田登世子『誰も知らない印象派 娼婦の美術史』
http://sayusha.com/sayusha/903500331.html
Amazon.co.jp: 誰も知らない印象派 娼婦の美術史 山田登世子 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4903500330

お針娘のような春を奪われる女性たち、娼婦たち、昼のピクニック娯楽、夜の歓楽の世界。ベル・エポックのもう一つの表情を、印象派の絵やモーパッサンなどの小説を引用しながらたどってゆく。同時にだどるのはセーヌ川。行き着く先はノルマンディー。鉄道会社が作ったノルマンディー地方の観光ポスターなどもあり面白かった。

その舞台のなかでも伝説的な名を残したガンゲット=ダンス場がシャンゼリゼにあった「マビーユ」である。時は一八四〇年代。その頃のシャンゼリゼはまだ緑の多いアウトドア気分いっぱいの土地だった。そこにオープンしたダンス場マビーユが画期的だったのは、入場料の安さとともに、「夜のダンス」を始めたことである。たいてい店の中庭をダンス場にしていたそれまでのガンゲットとはちがって、マビーユは、ガス灯をふんだんに使って、さながら電飾効果のような明かりのショーを演出し、野外ダンス場を一種の人工楽園に変えてみせたのだ。(P63)

もう一つ、このマビーユが画期的だったことがある。ダンスにやってくる娘たちの変容である。そう、「夜のダンス場」には、「夜の女」たちがやってきたのだ。マビーユは淑女のやってこないダンス場だったのである。そこでダンスに興じるのは語の広い意味での「ミュゼット」たち、楽しみがてら獲物を漁りにやってくる娼婦たちだったのだ。(P63)

マビーユで流行していた踊りが「カンカン踊り」だった。マビーユに関する日本語の文章は少ないので嬉しい。しかし…

「何もごたくなんか並べていはしないさ! ただ、自分がここにいる理由と、昔わしをここへ連れて来たあの悲しい事件を説明しているだけだよ。娘のベレダがあの忌まわしいユドールなんかと乳くり合った不身持が気に入らず、わしは今の言葉でいうなら、トラピスト修道院へ入り、そこでみっちり、ドルイド教の奥義を学んだ。その後、ほんのちょっとしたわるさがたたり、よろめいていた矢先き、マビルだのムーラン・ルージュだのという遊び場にひかれ、パリ通いを三、四度もしているうちに、とうとうこんなけち臭い所に送りこまれて、『神の石』の番人なぞという、閑な勤めの身の上じゃよ……どう見たって隠居仕事さ!」(モーリス・ルブラン「三十棺桶島」新潮文庫P397-398/三十棺桶島(10))

おっさんおっさん! 聖職者!聖職者!

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