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2010/12/07

もう一つの「八点鐘(12)」(英語版「八点鐘」)

「八点鐘」は1922年にフランスで発表されている。しかし、フランス語版より先に英訳版が発表されており、フランス語とは若干内容が異なっている。フランスで発表するときに改稿したものと思われる。

英訳版からの翻訳したものに田中早苗訳がある。「八点鐘」は連作短編集なのだが、その収録順も違っているので、目次を挙げてみる。フランス語版の順序は括弧内の作品No.の順。

  1. 古塔の秘密…塔のてっぺんで(12-1)
  2. 水壜…水瓶(12-2)
  3. ジャン・ルイ事件…ジャン=ルイの場合(12-5)
  4. 活動俳優の恋…映画の啓示(12-4)
  5. 海水浴場の悲劇…テレーズとジェルメーヌ(12-3)
  6. 斧を持った女…斧を持つ貴婦人(12-6)
  7. 雪の上の靴跡…雪の上の足跡(12-7)
  8. マーキュリーの像…メルキュール骨董店(12-8)

骨組みや大筋に大差はない。


しかし、驚いたのが次の箇所だ(英語版のみにある)。

それから四五日経って、不治の精神病患者として数年間監禁されていたオルタンスの良人おっとも、ついに、あのヴィル・ダヴレーの病院に於て死亡した。(「八点鐘」田中早苗訳、博文館P235/斧を持つ貴婦人(12-6))

えええええー。というのは、「八点鐘」はオルタンスが既婚者だからこその話だと思っていたから。

たとえば、「雪の上の足跡(12-7)」のオルタンスの手紙とレニーヌの反応が分からなかった。なぜオルタンスがああいう手紙をだしてあの締めを書いて、レニーヌがうまくいっていると揉み手をしたのか。「答:自意識過剰だから」というのでもいいんだけど、実際自意識過剰だと思うのだけれど、それでは甘い。結婚に縛られた人妻と魅力的な独身の男という関係が、ナタリーとオルタンスで共通するからではないかと考えたのだ。だからオルタンスは2人の仲が気になって、手助けをしたいのだけれど、他人のことは他人のことと書いた。レニーヌはそれを読みとった。うーん、これでも根拠は薄いかもしれない。ともあれ「雪の上の足跡(12-7)」はオルタンスが初めて自分で冒険の種を見つけた話なので、動機について考える意味はあると思う。

それと…オルタンスが未亡人になってしまえば、容易にレニーヌと結ばれてしまうではないか。オルタンスが結婚したままでいれば、あくまで仮初めの関係に留まる。2人がとる行動の意味が違ってくると思うのだ。とすると全体のテーマもまた変わってきてしまう。


なお、前年に「新青年」に掲載された田中訳の2編と保篠訳の1編も英訳からの重訳と思われる。

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