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2010/11/05

その母は誰?(英語版「八点鐘」) - ジャン=ルイの場合(12-5)

※以下の文章は「ジャン=ルイの場合(12-5)」の内容に触れています。※


雑誌「新青年」の1923年10号(大正12年8月増刊号)に、田中早苗訳「その母は誰?」が掲載されている。「ジャン=ルイの場合(12-5)」の翻訳なのだが、読んでみると、現状の翻訳とは異なる箇所がある。「ジャン=ルイの場合(12-5)」はジュヌヴィエーヴ嬢ののっぴきならぬ事情により、主人公二人が彼女の恋人ジャン=ルイに会いに行くというのが出だしなのだけれど、他の翻訳では偶然出会った女性であるジュヌヴィエーヴが、「その母は誰?」では、オルタンスの友人になっている。“のっぴきならぬ事情”も異なる。

この違いがどうやって生まれたか、というと、「その母は誰?」が英語版からの翻訳であることによる。「新青年」では、「その母は誰?」のほか、「古塔の秘密」「水壜」(それぞれ「塔のてっぺんで(12-1)」「水瓶(12-2)」の翻訳)という2作品が田中早苗訳で載っているが、「古塔の秘密」掲載時に英語版単行本からの翻訳であることが記されている。「八点鐘」のフランス語版単行本が出版されていないなかったためだ。ところが英語版単行本と、後から出版されたフランス語版とは若干異なる箇所があり、翻訳の違いにつながっているのだった。

英語版とフランス語版の違いは興味があったのだけれど、英訳からの翻訳があったとは。田中早苗訳は『八点鐘』と題して単行本が出ているが、確認してみるとやはり英語版からの翻訳だった。(「新青年」掲載時には若干省略があるが単行本では補われている。)

The Eight Strokes of the Clock by Maurice Leblanc - Project Gutenberg(英語)
http://www.gutenberg.org/ebooks/7896
Les Huit Coups de l’horloge - Wikisource(フランス語)
http://fr.wikisource.org/wiki/Les_Huit_Coups_de_l%E2%80%99horloge


さて“のっぴきならぬ事情”、英語版では、ジュヌヴィエーヴが意に沿わぬ男と結婚させられそうになっている。フランスでは結婚前に、誰と誰は結婚します、という宣言を役場など公共の場に貼り出すのだけれど、父に宣言を貼り出されてしまって結婚が迫っているのだった。フランス語版は翻訳を読んでいただきたいのだけれど、私はフランス語版がいいなあ。「八点鐘」はこっぱずかしいまでの演出が醍醐味だと思うので(笑)


※以上の文章は「ジャン=ルイの場合(12-5)」の内容に触れています。※

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