« 佐々木三雄・綾子/文、山口高志/写真「モネの風景紀行」 | トップページ | 野内良三「ジョーク力養成講座」 »

2010/09/15

こんなところに税関? - 奇岩城(4)

クロード・モネの絵に「ヴァランジュヴィルの税官吏小屋」という作品がある。この絵に関して、佐々木三雄・綾子/文「モネの風景紀行」では次のように書かれていた。

モネはヴァランジュヴィルの崖にあった税官吏小屋を数点描いた。(略)「税官吏小屋」と呼ばれて名前が一人歩きしてしまった小屋だが、これは正確な呼称ではない。歴史はナポレオン時代までさかのぼる。ナポレオンは海上で英国と戦うのは不利と考え、経済的に英国を孤立させようとヨーロッパの同盟諸国に働きかけて「大陸封鎖」すなわち英国の商品をヨーロッパ大陸から追放する条例を発布した。そこで英仏海峡を渡って英国の商船がフランスへ来るのを見張るために建てた小屋だったのが、なぜか「税官吏小屋」といわれるようになってしまった。そしてモネの時代は漁師たちが道具置場に使用していた。(P40-P41)

モネの絵は、La maison du douanier(税関吏の家)ともLa maison du pecheur(漁師の家)とも呼ばれているようだ。

Varengeville-sur-Mer - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Varengeville-sur-Mer
Fichier:Claude Monet 029.jpg - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Fichier:Claude_Monet_029.jpg


思い出されるのが「奇岩城(4)」の次の箇所だ。なぜこんなところに税関の役人がいるのだろうか?と気になっていたのである。

三十分ばかりのぼると、高台に出たが、近くに、平らな土地を掘って建てた小屋がひとつあった。沿岸税関吏の隠れ家として使われている小屋だった。と、まさしくその税関吏が小道のまがり角にあらわれた。(岩波少年文庫「奇岩城」P372)

douanierは辞書を調べると税関吏と載っているので、空港とか港とか固定の場所に設けられた税関で働く人と思ってしまうけれど、それだけではないらしい。地方の治安を守る組織は中央の警察組織とは違っていて、ルパンシリーズで地方で事件が起こって出動するのは憲兵や田園監視人だ。さらに税関吏が登場することもある。

「テレーズとジェルメーヌ(12-3)」では、事件が発覚したとき、市長(町長)と田園監視人が出向き、遺体を運び込んだ別荘の入り口を税関吏2人がガードしている。「カリオストロ伯爵夫人(13)」ではよからぬことを企む一味が税関吏を警戒している様子が書かれている。どちらもエトルタ付近、ノルマンディーの海岸地帯である。

貸別荘の一軒の入口に大勢野次馬が集まっていた。二人の警備員が入口を守っていた。(※警備員と訳されているのが税関吏。「八点鐘」新潮文庫P121/テレーズとジェルメーヌ(12-3))

「静かにしろ! おれたちの声だって気づかれるぞ」
「誰にだい、ゴッドフロワ? 人っ子ひとりいないじゃないか。それよりか、税関の役人は大丈夫なんだろうな?」
「心配ない。信用のおける男に頼んで、酒場で一杯やらせてある。でも、見まわりがあるかもしれないからな」(「カリオストロ伯爵夫人」ハヤカワ文庫P79/カリオストロ伯爵夫人(13))

港に着いた船を点検するというイメージどおりの仕事も行っている(アメリカの税関吏だけど)。

タラップが下された。だが僕らが自由に下りるより先に、税関吏や制服の男達、郵便配達夫なぞいう連中が、船内へ入り込んで来た。(「強盗紳士」新潮文庫P25/アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1))


税関吏は現在、関税間接税総局(DGDDI)で組織されている。当時とは事情が違うかもしないけれど、英語版ウィキペディアより引用してみる(自動翻訳)。

Directorate-General of Customs and Indirect Taxes - Wikipedia, the free encyclopedia(英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/Directorate-General_of_Customs_and_Indirect_Taxes

DGDDIは、間接税を課して、密輸を防止して、境界を監視して、偽金を調査することに対して責任があるフランス法執行機関です。機関は、沿岸警備隊、境界ガード、海救出組織と出入国管理サービス(関税サービスだけでなく)の働きをします。

武装しているとあるので、軍人ぽい感じもする。


なお、「奇岩城(4)」で出てくる税関吏小屋は、ディエップとトレポールの中間にあるビヴィルの近くにある。正確に言えば、パルフォンヴァルという谷を上ったところで、この谷は断崖から内陸のヌーヴィレットに及んでいることが地図で確認できる。ジョルジュ・カドゥダルが通ったのも史実らしい。

Biville-sur-Mer - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Biville-sur-Mer
Georges Cadoudal - Metapedia(フランス語)
http://fr.metapedia.org/wiki/Georges_Cadoudal
Parfondval - Geoportail(「奇岩城」ではParfonvalと綴られている)


□参考文献・参考サイト
佐々木三雄・綾子/文、山口高志/写真「モネの風景紀行 ノルマンディー・ベリール・パリ・セーヌ河のほとり」求龍堂、1996年
Direction generale des douanes et droits indirects - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Direction_g%C3%A9n%C3%A9rale_des_douanes_et_droits_indirects
Histoire de la douane militaire (France) - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Histoire_de_la_douane_militaire_%28France%29

« 佐々木三雄・綾子/文、山口高志/写真「モネの風景紀行」 | トップページ | 野内良三「ジョーク力養成講座」 »

アルセーヌ・ルパン」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/54863/49461157

この記事へのトラックバック一覧です: こんなところに税関? - 奇岩城(4):

« 佐々木三雄・綾子/文、山口高志/写真「モネの風景紀行」 | トップページ | 野内良三「ジョーク力養成講座」 »

案内

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

アルセーヌ・ルパン

スキップ・ビート!

鉄人28号

つぶやき

無料ブログはココログ