« 2010年7月 | トップページ | 2010年9月 »

2010/08/31

近代デジタルライブラリー:三津木春影作品

国会図書館に所蔵されている三津木春影の書籍のうち、明治から大正にかけて出版されたものの一覧である。現在19作品が近代デジタルライブラリーに収蔵されている。「書誌」欄は国立国会図書館の書誌情報に、「本文」欄は近代デジタルライブラリーの本文にリンクしている。「本文」欄の“館内”は、近代デジタルライブラリーに収蔵されているが国立国会図書館館内でのみ閲覧可能なもの、“×”は目録にのみ存在し原本の所蔵がないもの。並び順は発行年、発行所名の順とした。

近代デジタルライブラリー
http://kindai.ndl.go.jp/

No作品書誌情報書誌本文備考
1日本青年亜非利加猛獣国探検成功雑誌社、1908年(明治41)書誌本文
2婦人の新修養実業之日本社、1910年(明治43)書誌本文エラ・ウィーラー・ウィルコックス作
3皇帝謁見少年旅行実業之日本社、1911年(明治44)書誌館内ハーリー・スチール・モリソン作
4呉田博士中興館、1911-1912年(明治44-45)書誌1編
2編
オースティン・フリーマン作ソーンダイク博士もの翻案
5日本の危機啓業館、1912年(明治45)書誌本文「日本の危機 間諜の密計」
6孤島の姉妹実業之日本社、1912年(明治45)書誌本文
7大宝窟王中興館、1912年(大正1)
二十世紀探偵叢書・第1、2編
書誌前篇
後篇
モーリス・ルブラン作「奇岩城(4)」
8古城の秘密. 前篇武侠世界社、1912年(大正1)書誌前篇モーリス・ルブラン作「813(5)」
9呉田博士. 3,4,6編中興館、1912-1915年(大正1-4)書誌3編
4編
6編
オースティン・フリーマン作ソーンダイク博士もの翻案
10金剛石〔 〕、1913年(大正2)書誌本文モーリス・ルブラン作「金髪婦人(2-1)」
※発行所は岡村盛花堂・池村松陽堂か?
11コルクの釦磯部甲陽堂、1913年(大正2)
ミステリー叢書・第1編
書誌本文「コルクの釦」「外交探偵の自白」(「日露平和條約の竊取」{露独皇帝の海上密会})
12函中の密書磯部甲陽堂、1913年(大正2)
ミステリー叢書・第2編
書誌本文「函中の密書」「秘密外交探偵の自白譚」(「外交美人探偵の怪腕」「独逸皇帝の入獄」「王女の恋」)
※「函中の密書」はコナン・ドイル作「第二の汚点」(?)の翻案
13少年軍事探偵磯部甲陽堂、1913年(大正2)書誌本文
14密封の鉄凾磯部甲陽堂、1913年(大正2)書誌本文「密封の鉄凾」「海賊船の少年」「怪光の裁判」「禿頭組合」
※「禿頭組合」はコナン・ドイル作「赤毛組合」の翻案
15怪飛行艇実業之日本社、1913年(大正2)書誌×
16黄金の指輪岡村盛花堂、1914年(大正3)
少年少女叢書・第8編
書誌本文「黄金の指輪」「山賊退治」「鍛冶屋の金槌」「船室の時計」
※「船室の時計」はモーリス・ルブラン作「金髪婦人(2-1)」の換骨奪胎
17白金の時計岡村盛花堂、1914年(大正3)
少年少女叢書・第9編
書誌本文「白金の時計」「宝石の行衛」「魔法博士」「火事の晩」
18空魔団岡村盛花堂〔ほか〕、1914年(大正3)書誌本文「空魔団」「海底電信船の少年」「火山の麓」「銀の十字架」「牛の検温器」「密航少年」「古城の怪光」「英露の潜航艇海底戦争未来記」「人間製造博士」「三人馬鹿」
19海底の石牢中興館書店、1914年(大正3)
奇譚文庫・第1編
書誌本文「海底の石牢」「床下の骸骨」「暗黒燈台の秘密」「給仕の号外」
※「床下の骸骨」はモーリス・ルブラン作「ハートの7(1-6)」の換骨奪胎
20不思議の鈴磯部甲陽堂、1915年(大正4)
怪奇叢書・第3編
書誌本文「不思議の鈴」「外交探偵の自白譚」(「露帝の宝石」「間諜を追うて」)
※「不思議の鈴」はコナン・ドイル作「海軍条約文書事件」の翻案
21死人の裁判磯部甲陽堂、1915年(大正4)
怪奇叢書・第6編
書誌本文「死人の裁判」「殺人狂」
※「死人の裁判」はコナン・ドイル作「膚黒医師」、「殺人狂」は同「甲虫採集家」の翻案
22国境線実業之日本社、1915年(大正4)書誌×モーリス・ルブラン作(原作は「La Frontiere」。ノンシリーズ)
23地底の宝玉実業之日本社、1915年(大正4)書誌本文「地底の宝玉」「まぼろしの少女」
24幽霊岩中興館書店、1915年(大正4)
奇譚文庫・第2編
書誌本文「幽霊岩」「噴火魔島」
25噴火島博士中興館書店、1915年(大正4)
奇譚文庫・第3編
書誌本文「噴火島博士」「船中の間諜」
※「船中の間諜」はモーリス・ルブラン作「アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)」の換骨奪胎
26魔尖塔岡村書店、1916年(大正5)書誌本文「魔尖塔」「水雷捜索」「密偵団」「捕虜の少年」「水海員」「真か偽か」
27三津木春影遺稿. 第1億光社、1917年(大正6)書誌本文内藤鋠策編
28間諜団本郷書院、1917年(大正6)書誌本文
29海魔城本郷書院、1918年(大正7)書誌本文

このほか、松原至文編「小品文範」新潮社、1909年に「病院より(三津木春影)」が収録されている。
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000496907/jpn

未整理のため、以下、羅列にとどめておく。

・「大宝窟王」(7)、「古城の秘密」(8)、「金剛石」(10)はモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンものの翻訳である。以下を参照のこと。
ルパンシリーズの初期翻訳
・「船室の時計」(16の2)、「床下の骸骨」(19の2)、「船中の間諜」(25の2)はルパンシリーズの短編から着想を借りて別な物語に仕立てている。
・「国境線」(22)はモーリス・ルブランのノンシリーズ作品の翻訳である。国会図書館では原資料が確認できない(目録のみに存在)。同じくルブラン著、三津木訳の『祖国の為に』武藤書店、1922年はこの作品の改題と思われる。
・「呉田博士」(4と9)はオースティン・フリーマン作ソーンダイク博士ものの翻案で、一部コナン・ドイル作品の翻案も混在している。末國善己編『探偵奇譚 呉田博士【完全版】』に詳しい。
・「大宝窟王」(7)、「金剛石」(10)、「函中の密書」(12の1)、「不思議の鈴」(20の1)には共通して保村俊郎が登場する。シャーロック・ホームズ(あるいはホルムロック・シアーズ、エルロック・ショルメス)のことである。


□参考文献
・山蔦恒「信州の児童文学(2)-三津木春影著作略年譜に寄せて-」、「解釈」1984年10月号所収
・伊藤秀雄『明治の探偵小説』晶文社、1986年
・続橋達雄「三津木春影序説」、「野州国文学」48号所収、1991年
・続橋達雄『大正児童文学の世界』おうふう、1996年(「三津木春影序説」並びに追記)
・『少年小説大系』第14巻、「大正少年小説集」二上洋一編、三一書房、1995年
・木戸雄一「「少年探偵小説」の条件―三津木春影『探偵奇譚呉田博士』の場合―」、『図説 児童文学翻訳大事典』第4巻、大空社・ナダ出版センター、2007年所収
・三津木春影著、末國善己編『探偵奇譚 呉田博士【完全版】』作品社、2008年
・『江戸川乱歩 誰もが憧れた少年探偵団』KAWADE夢ムック、河出書房新社、2003(三津木春影「悪魔が岩」を収録)

□関連記事
ルパンシリーズの初期翻訳
近代デジタルライブラリー:磯部甲陽堂・ミステリー叢書、怪奇叢書
近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):三津木春影
近代デジタルライブラリーで三津木春影「大宝窟王」ほか提供開始
近代デジタルライブラリーで三津木春影「古城の秘密」提供開始
三津木春影「大宝窟王」前篇
三津木春影「大宝窟王」後篇

□2010/09/01 館内閲覧の情報追加
□2010/11/05 「死人の裁判」と「殺人狂」の原作が判明
ホームズ・ドイル・古本 片々録 by ひろ坊 : 三津木春影(3)
http://blog.livedoor.jp/bsi2211/archives/51531237.html
□2011/07/07 収録状況の更新
□2012/06/04 収録状況の更新

近代デジタルライブラリー:磯部甲陽堂・ミステリー叢書、怪奇叢書

磯部甲陽堂から大正期に発行された探偵小説の叢書をまとめてみた。「書誌」欄は国立国会図書館の書誌情報に、「本文」欄は近代デジタルライブラリーの本文にリンクしている。「館内」は、近代デジタルライブラリーに収蔵されているが、国立国会図書館館内でのみ閲覧可能なもの。

近代デジタルライブラリー | 国立国会図書館
http://kindai.ndl.go.jp/

□ミステリー叢書

No作品著作者書誌本文備考
1コルクの釦三津木春影書誌本文怪奇叢書にあり
2函中の密書三津木春影書誌本文怪奇叢書にあり
3土曜日の夜清風草堂主人書誌本文
4壁上の血書九皐散史書誌館内附録「池底の王冠」(※)。怪奇叢書にあり

※九皐散史の「壁上の血書」はコナン・ドイル「緋色の研究」(?)、「池底の王冠」は「マスグレイブ家の儀式書」(?)の翻案。ホームズは穂水(ほみず)、ワトソンは和田軍医補。

□怪奇叢書

No作品著作者書誌本文備考
1海底の髑髏三津木春影「コルクの釦」の改題。ミステリー叢書にあり
2函中の密書三津木春影ミステリー叢書にあり
3不思議の鈴三津木春影書誌本文
4骸骨博士三津木春影
5女国事探偵有本天浪書誌館内
6死人の裁判三津木春影書誌本文
7素人探偵清風草堂主人
8女艦長の行方湘南漁郎書誌館内
9壁上の血書九皐散史ミステリー叢書にあり
10秘密の墜道清風草堂主人書誌本文
11大犯罪湘南漁郎
12照魔境九皐散史

ミステリー叢書のリストは第4編『土曜日の夜』の、怪奇叢書のリストは第10編『秘密の墜道』の巻末広告による。怪奇叢書の『海底の髑髏』が『コルクの釦』であることは、第6編『死人の裁判』の巻末広告による。国会図書館に所蔵されていないタイトルについて発行有無は不明。

ミステリー叢書は1913年(大正2)に、怪奇叢書は1915年(大正4)に刊行されている。そのうち3冊について同タイトルが両叢書にあることから、ミステリー叢書を発展させたものが怪奇叢書であるようだ。

ミステリー叢書の序には、海外の探偵作家の作品の翻訳であることを謳っていて、怪奇叢書には序がないが同様と思われる。清風草堂主人編『秘密の墜道』、有本天浪著『女国事探偵』以外は著作者が訳者として表記されている。

アルセーヌ・ルパンものの翻訳はミステリー叢書第3編『土曜日の夜』と怪奇叢書第10編『秘密の墜道』が該当する。怪奇叢書第7編の清風草堂主人『素人探偵』は確認できないが、『土曜日の夜』の改題である可能性もある。


ルパンシリーズの初期翻訳
近代デジタルライブラリー:三津木春影作品
近代デジタルライブラリー:清風草堂主人作品

□2010/09/01 館内閲覧の情報追加

□2011/03/02
「池底の王冠」は「マスグレイブ家の儀式書」らしいので訂正した。
ホームズ・ドイル・古本 片々録 by ひろ坊 : 高等探偵協会編『外交の危機』(中興館 大正4年3月18日 探偵叢書第五編)
http://blog.livedoor.jp/bsi2211/archives/51534369.html

2010/08/29

携帯電話向けゲーム「鉄人28号 対決!PX団」配信中

Yahoo!ケータイで鉄人28号のアクションゲームが配信されているようです。ドコモやEZwebでも配信予定。

鉄人28号 -対決!PX団-
http://www.kemco.jp/applipage/10_game/t28_a.html

正太郎のデザインが変。ゲーム画面は気にならなそうだけど。


「鉄人28号」が軽快アクションゲームになった!!
http://www.ksol.jp/information20100818.html
Yahoo!ケータイに「鉄人28号」のアクションゲーム - ケータイ Watch
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20100818_387714.html
総合ゲーム情報サイト Online Player EX : “鉄人28号”が圧倒的なパワーで敵を粉砕! 横スクロールアクション「鉄人28号 -対決!PX団-」が配信開始 [ 最新ニュース ]
http://www.onlineplayer.jp/modules/topics/article.php?storyid=18872


□2010/10/20
ドコモでも配信開始。
ケムコ、鉄人28号のiアプリ対応アクションゲーム配信 - ケータイ Watch
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20101015_400297.html
あの鉄人28号が軽快アクションゲームに!iアプリ「鉄人28号 -対決!PX団-」配信開始 - GameRabbit -ゲーム情報誌 ゲームラビット- マンガ、イラスト動画でゲームを楽しもう
http://gamerabbit.jp/2010/10/28i28--px-.html

2010/08/26

「アルベール・カーン コレクションよみがえる100年前の世界」

デイヴィッド・オクエフナ著、別宮貞徳監訳
日本放送出版協会、2009年
Amazon.co.jp: アルベール・カーン コレクション よみがえる100年前の世界: デイヴィッド オクエフナ, 別宮 貞徳: 本
http://www.amazon.co.jp/dp/4140093455


アルベール・カーンはユダヤ系フランス人で、世界中の「今」を映像や写真に残そうとした人物である。それらの映像資料をまとめて「地球映像資料館」を作ろうとした。春に渋沢史料館でアルベール・カーンに関する展示があり、とても興味深かった。

「地球映像資料館」に残された写真や映像のうち、カラー写真を主に紹介したのがこの本だ。カーンは運転手とともに1908年12月半ばから1ヶ月弱の間日本に滞在し、写真を撮った。その後も、カーンの代理となった人物が日本を訪れ、日本向けの出版では日本に一章を割いている。


やはり驚きなのが、カラー写真だ。百年前のカラーの世界。オートクロームと呼ばれるカラー写真を発明したのは映画・シネマトグラフを発明したことで有名なリュミエール兄弟だ。ジャガイモのでんぷんを利用することでカラー写真を実現した。

フランスの作家ピエール・ロティのエッセイでは、カラー写真が実現したことへの驚きと感動が語られている。

ピエール・ロチ「昔の写真と今の写真」翻訳と注
http://www.adm.fukuoka-u.ac.jp/fu844/home2/Ronso/RonsyuA/Vol9-3/A0903_0061.pdf
CiNii 論文 - ピエール・ロチ「昔の写真と今の写真」翻訳と注:遠藤文彦、2009年
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007197385

ジュール・ジェルヴェ=クルテルモンはこの時代の写真家で、アルベール・カーンが北アフリカを撮影したジェルヴェ=クルテルモン撮影の写真を買い取ったこともある。


Autochrome - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Autochrome
Jules Gervais-Courtellemont - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jules_Gervais-Courtellemont
アルベール・カーン美術館
http://www.museesdefrance.org/museum/serialize/mont-back/0708/montalembert.html
「最後の印象派」としてのオートクローム・リュミエール
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/27576/1/041.pdf
CiNii 論文 - 「最後の印象派」としてのオートクローム・リュミエール:北村陽子、2006年
http://ci.nii.ac.jp/naid/120000785732


「渋沢栄一とアルベール・カーン」

近代デジタルライブラリー:中興館書店・大正探偵叢書

三津木春影がソーンダイクものを翻案した「呉田博士」シリーズの好評を受けて、中興館書店が立ち上げたシリーズ企画のひとつ。「斑の蛇」というタイトルを見て“まんま”だよね、と思ったら“まんま”だった。「斑の蛇」の冒頭を読むと他に関連作もあるようだったので、シリーズ全体をまとめてみた。シャーロック・ホームズは緒方赭太郎(おがたおたろう)、ワトソンは和田義雄(わだよしお)という名前になっている。

No作品名書誌本文探偵、助手備考
1七人組書誌本文金田久政
2肖像の秘密書誌本文緒方理学士、和田六つのナポレオン
3不思議の膏薬(緒方理学士、和田?)(緋色の研究?)
4秘密の鍵書誌本文粕谷法医学博士
5外交の危機書誌本文緒方理学士、和田海軍条約文書事件
6伯爵少年書誌本文池田信一郎
7自殺倶楽部書誌本文神田子爵
8学士の陰謀書誌
9水島麗子
10壮烈の死刑書誌本文生田医学士
11秘密の室書誌
12白面鬼書誌本文三浦探偵
13斑の蛇書誌本文緒方理学士、和田「斑の蛇」「穴中の惨死体」。「斑の蛇」は「まだらの紐」
14奇怪の地下室

いずれも高等探偵協会編で、1915-1916年(大正4-5)に発行。1-12巻のタイトルは巻末の広告で確認できる。14巻「奇怪の地下室」は13巻「斑の蛇」の本文最後に予告されているタイトルだが出版有無は不明。

なお、「大正探偵叢書の発行に就いて」という文章が『七人組』の巻頭にある。また、同題の文章が中興館書店・奇譚文庫第3編の三津木春影『幽霊岩』巻末にある。

2010/08/23

近代デジタルライブラリー:清風草堂主人作品

清風草堂主人の著作で国立国会図書館に所蔵されている作品がすべて近代デジタルライブラリーで公開されたので、内容を整理したいと思う。「書誌」欄は国立国会図書館の書誌情報に、「本文」欄は近代デジタルライブラリーの本文にリンクしている。

近代デジタルライブラリー | 国立国会図書館
http://kindai.ndl.go.jp/

No作品書誌情報(奥付)書誌本文
A『露西亜探偵物語』
収録作:二滴の血痕、佳人の運命、大盗来
万里洞、1911年4月(明治44)
著者兼発行者 宮田暢
書誌本文
B『仏蘭西物語』
収録作:恋の仇討、新聞記者の内幕、跛の幽靂
万里洞、1911年10月(明治44)
著者兼発行者 宮田暢
書誌本文
C『金髪美人』明治出版社、1913年1月(大正2)
著者 安成貞雄/発行者 竹内伊四郎
書誌本文
D『血痕』万里洞書店、1913年10月(大正2)
著者 宮田暢/発行者 豊田章
書誌本文
E『土曜日の夜』
附録:皇后の頸飾
磯部甲陽堂、1913年11月(大正2)
著者 三津木春影/発行者 磯部辰次郎
書誌本文
F『夜叉美人』
附録:泥棒の泥棒
サンデー社、1915年8月(大正4)【改版】
著者 宮田暢/発行者兼印刷者 岩崎勘兵衛
書誌本文
G『秘密の墜道』
附録:特別列車の行方
磯部甲陽堂、1915年12月(大正4)
著者 清風草堂主人/発行者 磯部辰次郎
書誌本文
H『運命の女』サンデー社、1916年8月(大正5)
著作者 宮田暢/発行者 岩崎勘兵衛
書誌本文

A、Bはアンソロジー、C、D、Hは長編で、E、F、Gには表題作のほか、附録として1作品が収録されている。国会図書館に所蔵がない清風草堂主人の著作では、アルセーヌ・ルパンものの『予告の大盗』が明治44年に出版されている。『夜叉美人』の初版が出版されたのも明治44年である。


□内容について
内容を見ると、大きく3つに分けられる。

1. プチリンもの
『露西亜探偵物語』(Aの3作品)、『血痕』(D)、『夜叉美人』(Fの表題作)、『運命の女』(H)
『血痕』(D)は「二滴の血痕」(Aの1)の改題、『運命の女』(H)は「佳人の運命」(Aの2)の改題。
ロシア人プチリンの活躍を描いたもの。後述。

2. アルセーヌ・ルパンもの
『金髪美人』(C)、『土曜日の夜』「皇后の頸飾」(Eの表題作と附録)、「泥棒の泥棒」(Fの附録)、『秘密の墜道』(Gの表題作)
フランスの探偵小説の翻訳。以下を参照のこと。
ルパンシリーズの初期翻訳

3. その他翻訳もの
『仏蘭西物語』(Bの3作品)、「特別列車の行方」(Gの附録)
『仏蘭西物語』のうち、「恋の仇討」はシャルル・ポール・ド・コックの作品とある。「新聞記者の内幕」で「文士アレーヴヰーが筆記」とあるのは、ジャック=フロマンタル・アレヴィ、レオン・アレヴィ兄弟のどちらかかもしれない。「跛の幽靂」は未詳。「特別列車の行方」の原作はコナン・ドイルの「臨時急行列車の紛失」(「消えた臨時列車」)。

「明治大正期文芸書総目録」では、『仏蘭西物語』『露西亜探偵物語』が宮田暢(清風草堂主人)の著作に、『血痕』『金髪美人』『夜叉美人』『運命の女』が清風草堂主人の著作に分類され、『土曜日の夜』のみ清風草堂主人の翻訳に分類されているが、ほとんどは翻訳ものとみなすべきだろう(『秘密の墜道』は掲載なし)。三津木春影も翻訳に「古城の秘密」「函中の密書」「金剛石」とあって、その他著作となっているが、著作の中にルパンものの翻訳「大宝窟王」がある。


□清風草堂主人について
清風草堂主人作品の多くは日本初の週刊誌「サンデー」に掲載されたものだ。「サンデー」の創刊号から「夜叉美人」が連載され、その後掲載された作品を含め次々と「サンデー記者 清風草堂主人」名義で単行本化された。雑誌掲載時には別名義や無署名であったりした。

清風草堂主人を名乗ったのは一人ではないと考えられている。その正体として名前があがるのが、佐藤緑葉、安成貞雄、堺利彦だ。「サンデー」で翻訳されたロシアもの(プチリンもの)は、夏秋亀一が資料を提供し、佐藤緑葉が書いたと言う。とはいえ、すべての作品を緑葉が担当したかどうか定かではない。アルセーヌ・ルパンものは、『金髪美人』を安成貞雄が担当したことはほぼ確定している。『予告の大盗』は堺利彦、「春日燈籠」(『土曜日の夜』の初出時の題)は安成貞雄が担当したとされるが、ほかは未確定。その他の翻訳物の翻訳者も不明である。

奥付情報を見ると著者として宮田暢の名前があるが、宮田暢は「サンデー」の経営者(副社長)だから発行責任者と考えられる。『土曜日の夜』には三津木春影の名前があるが、『土曜日の夜』の初出「春日燈籠」は安成貞雄の翻訳と言われており、『金髪美人』「春日燈籠」「皇后の頸飾」の3作は関連性が高いため、奥付が誤っている可能性がある。


□プチリンものについて
プチリンものに分類したものはいずれもロシア・サンクトペテルブルク(『露西亜探偵物語』ではセントピータースブルグと表記され、『夜叉美人』では改版によりペトログラードに変更されている)の警視庁刑事課長・武智林次郎(たけちりんじろう)が登場する作品である。武智ははしがき等ではプチリンと紹介されている。プチリンとは誰かというと、イワン・ドミトリエヴィッチ・プチーリンだ。1866年に創設されたペテルブルク刑事警察の初代長官を務めた。名声で知られ、プチーリンを主人公とする架空の物語も多く出版されたらしい。私の興味がアルセーヌ・ルパンにあるためか、探偵小説の翻訳史で、イワン・プチーリンに触れた文章を目にしたことがない。

清風草堂主人名義で出版されたプチリンものに、モデルとなった実在の事件や、原作となった小説があるかは不明である。『露西亜探偵物語』の小引には「本書の主材は露国事情に精通せる在ハルビン夏秋亀一氏の口述に依れり」とあり、『夜叉美人』のはしがきには「在ハルビン夏秋亀一君の供給に係かれり(略)努めて小説的叙述を試みたれば」とあり、プチーリンが手がけた事件を元に小説化したという体裁をとっている。

なお、ロシアの現代作家ユゼフォヴィチにも、プチーリンを主人公とした作品があるらしい。


余談ながら、夏秋亀一は国立国会図書館の目録には読みが「ナカバ カメイチ」と登録されているが、「ナツアキ カメイチ」の情報もある。また宮田暢も読みが「ミヤタ ノブ」と登録されているが、「宝石」1953年4月号の安成二郎「探偵小説昔ばなし」では「みやたちょう」とかなが振ってあった。


□参考文献・参考サイト
・『明治大正期文芸書総目録』日外アソシエーツ、2007年
▽清風草堂主人について
・安成二郎「探偵小説昔ばなし」、「宝石」1953年4月号
・伊藤秀雄「ルパンの伝来について」、「日本古書通信」1980年2月号
・長谷部史親「『探偵雑誌』と安成貞雄」、「古本便り 響宴」4号(1986年)
・伊藤秀雄『明治の探偵小説』晶文社、1986年
・中島河太郎『日本推理小説史』第1巻、東京創元社、1993年
・『安成貞雄 その人と仕事』(『安成貞雄文芸評論集』編集委員会編著)不二出版、2004年
・伊多波英夫『安成貞雄を祖先とす ドキュメント・安成家の兄妹』無明舎出版、2005年
・田中英夫『山口孤剣小伝』花林書房、2006年
▽プチリンについて
・革命前のロシアにおける探偵小説の歴史から
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/4616/jar/detektiv.htm
CiNii 論文 - 革命前のロシアにおける探偵小説の歴史から:久野康彦、2001年
http://ci.nii.ac.jp/naid/110001249323
・CiNii 論文 - ロシアのホームズたち (革命前のロシアの探偵小説について):久野康彦、1998年
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004837017
・桜井厚二「ロシア刑事探偵のフォークロア」
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/coe21/publish/no23/04sakurai.pdf
「スラブ・ユーラシア学の構築」研究報告集 文化研究と越境:19世紀ロシアを中心に(2008年)
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/coe21/publish/no23/contents.html
・閑話傍題(アネクドートの小部屋): ロシア悪人列伝(最終回)
http://www.rosianotomo.com/blog-anekdot/archives/2005/06/10.html
・Путилин, Иван Дмитриевич - Википедия(ロシア語Wikipedia。プチーリンの項)
http://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%9F%D1%83%D1%82%D0%B8%D0%BB%D0%B8%D0%BD,_%D0%98%D0%B2%D0%B0%D0%BD_%D0%94%D0%BC%D0%B8%D1%82%D1%80%D0%B8%D0%B5%D0%B2%D0%B8%D1%87
▽夏秋亀一の名前について
・国立国会図書館 NDL-OPAC(書誌 詳細表示 ):「最新統計学」夏秋亀一著
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000454462/jpn
・沢田和彦「日本における白系ロシア人史の断章」
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/47/47-emb/Sawada2.pdf
CiNii 論文 - 日本における白系ロシア人史の断章 : プーシキン没後100年祭(1937年、東京):2000年
http://ci.nii.ac.jp/naid/120001452188
夏秋亀一に「なつあきかめいち」とふりがなあり。
・トロイツカヤН. A.(訳:有泉和子)「ロシア極東アルヒーフ文書に見られる日本および日本人」
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/coe21/publish/no17/02troitsukaia.pdf
CiNii 論文 - ロシア極東アルヒーフ文書に見られる日本および日本人:2006年
http://ci.nii.ac.jp/naid/40015138024
Нацуаки(ナツアキ)が夏秋亀一とされている。
▽宮田暢の名前について
・国立国会図書館 NDL-OPAC(書誌 詳細表示 ):「株式会社法実務篇」宮田暢著
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000552052/jpn
▽ユゼフォヴィチについて
・NISSO LTD (ロシア・CIS諸国の本と雑誌の店)
http://www.nisso.net/
ロシア新刊・新入荷・在庫カタログ 2005 年9-10 月(ユゼフォヴィチのプチーリンものあり)
http://www.nisso.net/PDF/2005-5.pdf
ブッカー賞(ユゼフォヴィチの本あり)
http://www.nisso.net/osaka/booker.asp
・Leonid Yuzefovich - Wikipedia, the free encyclopedia(英語。ユゼフォヴィチ)
http://en.wikipedia.org/wiki/Leonid_Yuzefovich


□関連記事
ルパンシリーズの初期翻訳
近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):清風草堂主人
近代デジタルライブラリーで三津木春影「大宝窟王」ほか提供開始
「皇后の頸飾」と「宝石項圜」


□2010/08/26
久野康彦「ロシアのホームズたち」に、ロマン・ドーブルィ『ロシアの天才探偵プチーリン』(1908年)中の一編「センナヤ広場の救世主教会のカジモド」の梗概が紹介されているが、プチーリンの活躍を友人の医師が語るというスタイルは『夜叉美人』に通じる。『夜叉美人』には首の無い死体が出てくるので、「Одиннадцать трупов без головы」(11の首無し死体)が気になる。

Гений русского сыска И. Д. Путилин - Википедия(ロシア語Wikipedia。「ロシアの天才探偵プチーリン」の項)
http://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%93%D0%B5%D0%BD%D0%B8%D0%B9_%D1%80%D1%83%D1%81%D1%81%D0%BA%D0%BE%D0%B3%D0%BE_%D1%81%D1%8B%D1%81%D0%BA%D0%B0_%D0%98._%D0%94._%D0%9F%D1%83%D1%82%D0%B8%D0%BB%D0%B8%D0%BD
Шеф сыскной полиции Санкт-Петербурга Иван Дмитриевич Путилин: Сочинения в 2-х т. Т. 2 - Google ブックス(ロシア語。プレビューあり)
http://books.google.co.jp/books?id=99Ss5aQqO7UC


□2010/10/13 「特別列車の行方」の原作判明


□2012/06/23
参考文献
あきた(通巻75号) 1968年(昭和43年)8月1日発行 -全64ページ-
人・その思想と生涯(20) 安成貞雄/伊多波英夫
http://common.pref.akita.lg.jp/koholib/search/html/075/075_049.html

2010/08/22

雑誌「すばる」2010年8月号 「月下の鉤十字」第4回

著者:矢作俊彦


ヨシオ少年とドン=ルイスはクロード・ルブラン氏(モーリス・ルブランの息子)と対面する。そこで、クロードの妻ら親族が行方知らずになったことと、箱根細工の木函が盗まれたことを知る。取り返した小函の中にはルパンに宛てたと覚しき謎の文章が書かれていた。


出てくるのはこの名前しかないだろうって思ったとおりの名前で出てきた。ルブランはもうでてこないと思う(思いたい)ので、安心だけれど、老いたルパンは見たくないなあ。これでも10歳ぐらい若い設定ぽい。

ヨシオ少年がヤマトタケルばりの変装。

□2010/09/10
2010年9月号は休載。

雑誌「コバルト」2010年9月号 「秘密の島の龍」+ミニ特集

著者:榎木洋子

ミニ特集は「祝20周年 龍の世界へようこそ」。雑誌の巻頭に、イラストを担当したすがはら竜さんのカラー・ピンナップがついています。

2010年3月号の読み切り「花嫁はご機嫌斜め」の続きで、トルマス王子が婚約者のミミに10年前の出来事を語ります。自分の名前が付いた船の処女航海のときに、海に落ちたトルマス王子がある島に流れ着きます。それが、押し掛け守龍となった龍との出会いでした。

最初、龍の島かとおもったけれど、別の島でした。どのあたりにある島なのだろう。


榎木洋子さんのブログでカラー・ピンナップが紹介されています。
明日発売 | 凪 日 記
http://blog.shuryu.com/?eid=6

この作品は守龍ワールドの物語です。
榎木洋子:守龍ワールド作品リスト

2010/08/21

「花とゆめ」2010年18号 スキップ・ビート!感想

著者:仲村佳樹


「DARK MOON」の現場で物思いに沈む蓮。考えるのやはりキョーコのこと。社さんからも、ローリィからも、セツとの兄妹設定がキツイと思うなら、やめてもいいのじゃないかと言われている。

ただし、ローリィからは、キョーコへのクビ宣言は自分でしろと言われる。「君に必要価値を感じることができない、もう来なくていい」と(言えと)。もちろん蓮が言えるわけがないと分かってのこと。ローリィ、ナリはチンピラなのに、不敵に極悪な笑み。ボスだわ(笑)

蓮はキョーコに必要価値がないわけじゃない。ただ、手枷がはずれてしまうことを恐れているようだ。

BOX “R”の撮影中にも、化粧品の好みなどでセツ(そして、BOX“R”の役名はナツ。ややこしい)の役柄が入ってきてしまって、切り替えができていないことにショックを覚える。その後、キョーコがちおりん(天宮さん)と一緒にロケ場所移動している途中で見かけたのは、DARK MOONのロケ現場にいる蓮だった。


社さんに、好きな子と一つ屋根の下で過ごす中、理性を大いに働かさなければならないことを本気で同情されて、いっそ、いつも通り笑って嬲ってくれた方がマシと思う蓮(笑) 嬲られたいのか。
でも、マネージャーの顔でタレントとしての蓮に進言する社さんはかっこよかった。


「スキップ・ビート!」感想のバックナンバーはこちらから。

2010/08/12

浮浪児の魂と剣士の心意気(その2)

アルセーヌ・ルパンに触れた文脈でガヴロッシュになぞらえている本には、次のものがある。

警官のベシューやガニマール、警視庁副総監ウェーバーなどを笑いものにする彼のお芝居や悪ふざけは、彼をして大人になったガヴローシュの後継者たるにふさわしい者とする。(フレイドン・ホヴェイダ『推理小説の歴史』P43)

そして、シャーロック・ホームズとはすなわちイギリスそのものなのだから、アルセーヌ・リュパンはフランスそのものとなるだろう、あるいは少なくとも彼は、七〇年の敗北で卑屈になり、軍国的で、あらゆる報復の覚悟をもち、ロマンティックで、ガヴロシュのごとく寛大で、シラノのごとく精神的なフランスの、何かしらのイメージをもつものとなるだろう。(ボワロー=ナルスジャック『推理小説論 恐怖と理性の弁証法』P101)


次は直接ガヴロッシュの名前がでてくるわけではないが、ガヴロッシュ的なものに言及していると思った。

モーリス・ルブランの功績は、アルセーヌ・ルパンという人物タイプを生々と創造し、新聞小説の古いテーマに若さを与えた点にある。アルセーヌ・ルパンが非常に有名であるがために多少共巧みな詐欺漢が現れると、みなルパンに比較される程である。然しルパンはフランスに於て彼の価値程名声を博していない。彼のフランスに於ける地位はシャーロック・ホームズがイギリスに於いて占める地位に及ばない。彼の利発さ、Dシステム応用の巧みさ、駄法螺、洒脱さをもってすれば、大衆の心を捕えそうなものだ。私が信ずるに、彼には彼の役をやりこなす役者がない。即ちロマンチックなメロドラマ気分と巴里の与太者流の好みを彼に与えているところのものをこなすことの出来る役者がいなかった。ブールバール劇場の若い一流の伊達者を巧みにこなすアンドレ・ブリュレも、この人物の両面を表現するには余りに繊細で固苦し過ぎる。モーリス・シュヴァリエならば巴里の与太者流の要素丈は巧みに表わし得よう、然し彼にはパナッシュな要素に対して必要な理解が欠けている。ルパンの役を完全に理解しコナシ得る役者がいなかったということはまことに遺憾なことである。若し適当な理解者を得たならば、モーリス・ルブランの想像が生んだ人間タイプはもっと力強いものとなったであろう。(フランソア・フォスカ『探偵小説の歴史と技巧』P154-155)

アンドレ・ブリュレはロングランとなった「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」と1幕の「アルセーヌ・ルパンの冒険(A5)」の舞台でアルセーヌ・ルパンを演じている。歌手のモーリス・シュヴァリエは生粋のパリっ子で、いわばガヴローシュ的な人物と言えるだろう。しかしどちらもルパンという人物のもつ側面を演じきれないという。

さて、パナッシュ(panache)というのは、私は知らなかったが騎士が付ける羽根飾りのことだ。だから騎士道精神や騎士としてのふるまいのことを言っているのだろうと思っていたのだが、NHKラジオのフランス語講座で興味深い話を聞くことができた。

パナッシュは元々羽根飾りという意味だが、エドモン・ロスタンの戯曲「シラノ」の最後、シラノの絶命の言葉「Mon panache」(私の羽根飾り<心意気>だ)から、騎士や軍人の華々しさ、勇敢さという意味が派生したのだそうだ。(NHKラジオ「まいにちフランス語 応用編」2010年7月9日放送分)

panache
1.羽根飾り
2.(騎士・軍人風の)勇敢さ、華々しさ
(仏和大辞典)

ここでシラノに戻ってきた。戯曲「シラノ」の初演は1897年。次のシーンの見得(パナッシュ)という言葉を理解する助けとなるだろう。

Bigre, le spectacle en vaut la peine Arsene Lupin, piece heroi-comique en quatr-vingts tableaux La toile se leve sur le tableau de la mort et le role est tenu par Lupin en personne Bravo, Lupin! Touchez mon coeur, mesdames et messieurs soixante-dix pulsations a la minute Et le sourire aux levres! Bravo! Lupin! Ah! le drole, en a-t-il du panache!

「(略)外題は『アルセーヌ・ルパン』八十景からなる勇壮で滑稽な茶番劇……。いよいよいま、死の場面に幕が上る……役は当のルパンによって演じられる、ブラボー、ルパン!……奥様方も殿方も、わしの心臓に手を当ててごらん下さい……一分間に脈搏ははっきり七十ですぞ……。唇に微笑もたたえておりますぞ、ブラボー! ルパン!……ひょうきん者め、さすがに見事な見得だわい!(略)」(新潮文庫「続813」P357/813(5)[エピローグ])

1960年にフランスで放送されたアルセーヌ・ルパンのラジオドラマではパナッシュという言葉が「奇岩城」第2回で使われている。金髪のイギリス人がルブランの元にやってくるシーンで、(多分)ルパンについて尋ねられたルブランのせりふにある。イギリス人の正体は言わでもがなの男だが、フランス人の名前よく知りませんとばかりにそらっとぼけているのが面白い。引用した「813」のシーンは省略されている。


参考までに、フォスカはアルセーヌ・ルパンのキャラクターについて次のようにまとめている。

そこでルブランは考えたのであろう、好感の持てる探偵の代りに好感の持てる盗賊を登場せしめてはどうか。代表的なイギリス人の代りに、理想的なフランス人型を持ってきてはどうか。この考は仲々利巧な考である。何故なればアルセーヌ・ルパンは、その欠点から見てもまた長所から見ても、フランス人に本質的なものを備えているからである。即ち彼は口巧者で騎士的で気前が良く法螺吹きで人を軽く愚弄する術を知っている。それのみならず時には自嘲さえ洩らすことがある。更にまたこの人物は至って御婦人方から御寵愛にあずかったのである。(フランソア・フォスカ『探偵小説の歴史と技巧』P149)


□おまけ
「813」の引用部分(パナッシュ)の後は「Eh! bien, saute marquis」(さあ、飛べ侯爵)と続く。しかし新潮文庫「続813」では侯爵(marquis)が公爵と訳されている。「saute marquis」で検索すると、風刺画や戯曲のタイトルが引っかかるので、関係の有無は不明だが侯爵とすべきだろう。光文社古典新訳文庫『シラノ』の渡辺守章氏の注釈によれば、モリエール喜劇で登場する「侯爵」は小柄で軽薄と相場が決まっているらしい。『シラノ』に登場するのも軽薄な侯爵だ。

Saute marquis... Et toi hipocrite : [estampe] / [non identi... - Gallica(風刺画)
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/btv1b6944653d.r=saute+marquis.langFR
専修大学創立120年記念 図書館所蔵特別資料展 展示リスト(風刺画の解説あり)
http://www.senshu-u.ac.jp/library/news/exhibition/120tenji_list.pdf
専修大学:図書館展示案内
http://www.senshu-u.ac.jp/library/news/exhibition/


□参考文献・参考サイト
・フランソア・フォスカ『探偵小説の歴史と技巧』長崎八郎訳、育生社、1938年
 ※引用にあたって漢字と仮名遣いを現代のものにあらためた。
・フレイドン・ホヴェイダ『推理小説の歴史』福永武彦訳、東京創元社、1960年
及びその増補版『推理小説の歴史はアルキメデスに始まる』三輪秀彦訳、東京創元社、1980年
・ボワロー=ナルスジャック『推理小説論 恐怖と理性の弁証法』寺門泰彦訳、紀伊国屋書店、1967年
・ユゴー『レ・ミゼラブル』全5巻、新潮文庫、佐藤朔訳、1996年
・鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景 木版挿絵で読む名作の背景』文藝春秋、1987年
・NHKラジオ「まいにちフランス語 応用編」2010年7月9日放送分
・ロスタン『シラノ・ド・ベルジュラック』渡辺守章訳、光文社古典新訳文庫、2008年
・CiNii 論文 - 我がパナッシュ! : <文・武>に秀でたシラノの<心意気>:小玉齊夫、2001年
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006999059
・D'Artagnan - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/D%27Artagnan
・Cyrano de Bergerac (Rostand) - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Cyrano_de_Bergerac_(Rostand)
・Gavroche - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Gavroche
・Video Ina - Arsene Lupin en prison(フランス語)
http://www.ina.fr/audio/PHZ09000308/arsene-lupin-en-prison.fr.html


“裏社会のシラノ”
1960年のラジオドラマ「Les Aventures d'Arsene Lupin」

前→浮浪児の魂と剣士の心意気(その1)

浮浪児の魂と剣士の心意気(その1)

ina.frで1960年にフランスで制作されたラジオドラマを聞いている。毎回口上が付いているのだが「Arsene Lupin en prison」(原作は「獄中のアルセーヌ・ルパン(1-2)」)の冒頭ではダルタニャン、シラノ、ガヴロッシュの名前が出ている。名前しか聞き取れないので、何の話をしているかは分からない。おそらくはアルセーヌ・ルパンというキャラクターについてだろう。


ダルタニャンとシラノは実在人物ではあるが、この場合は文芸作品の登場人物としての二人であり、アレクサンドル・デュマの「三銃士」、エドモン・ロスタンの戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」の主人公だ。ガヴロッシュはヴィクトル・ユゴーが創造した「レ・ミゼラブル」に登場する少年の名前だ。

このうち、ダルタニャンは「虎の牙(11)」でルパンの化身のあだ名だ。シラノはサルトルの言葉がある。ではガヴロッシュはどこから来たのだろうか。フランス語からの翻訳本に、ルパンにからめてガヴロッシュの名前が出てくるのは印象に残っていた。

調べてみると何とも簡単な話で、原作でアルセーヌ・ルパンはガヴロッシュだと書いてあるのだった。


Et, par un retour de joie brusque, il se mit a danser une gigue desordonnee au milieu de la piece, une gigue ou il y avait du cancan et des contorsions de mattchiche, et des pirouettes de derviche tourneur, et des acrobaties de clown, et des zigzags d'ivrogne. Et il annoncait, comme des numeros de music-hall:

- La danse du prisonnier... Le chahut du captif... Fantaisie sur le cadavre d'un representant du peuple La polka du chloroforme! Le double boston des lunettes vaincues! Olle! olle! le fandango du maitre chanteur! ... Et puis la danse de l'ours! Et puis la tyrolienne! Laitou, laitou, la, la!... Allons, enfants de la patrie!... Zim, boumboum, Zim boumboum...

Toute sa nature de gavroche, tous ses instincts d'allegresse, etouffes depuis si longtemps par l'anxiete et par les defaites successives, tout cela faisait irruption, eclatait en acces de rire, en sursaut de verve, en un besoin pittoresque d'exuberance et de tumulte enfantin.

そして、急にうれしくなって、部屋のまんなかでめちゃくちゃに踊りだした。まるでレビュー小屋の番組みたいに口上を言った。
「囚人の踊り…捕虜の踊り…人民代表の死骸の上のファンテジー……クロロフォルムのポルカ!……負けためがねのダブル・ボストン!……おいさ! おいさ! ゆすりたかりのファンダンゴ! おつぎは熊の踊り!……それからチロリーヌ! 来たこら、さっさ! いざ、祖国の子らよ!(フランス国家の最初の一句)……じん・ぶんぶん、じん・ぶんぶん…」
彼の浮浪児ガヴローシュ的本性、彼の軽快さの本能は、不安と相つぐ敗北とのために久しく抑えられていたのが、いまや爆発し、笑いの発作、活気の横溢、多弁と子供らしい騒ぎとの可憐な欲求となって発揮されたのである(創元推理文庫「水晶の栓」P230-231/水晶の栓(7)[第10章]※括弧内は割書きの訳注)

- Bah! fit Herlock Sholmes, en froissant le journal, des gamineries!

C'est le seul reproche que j'adresse a Lupin... un peu trop d'enfantillages... La galerie compte trop pour lui... Il y a du gavroche dans cet homme!

「馬鹿らしい!」シャーロック・ホームズが新聞をもみくちゃにしながら言った。「児戯だ! わしにルパンの気に入らないのはただ一つこの一点だけだ……子供っぽすぎるのだ……。大向こうをあまりにも気にしすぎるのだ……。あの男の中にはやくざが住んでいる!」(新潮文庫「ルパン対ホームズ」P149/金髪婦人(2-1)[第3章])

やくざというのはあんまりだけど、普通名詞となったガヴロッシュが使われている。ガヴロッシュはユゴーのキャラクターから派生して、パリの腕白小僧の代名詞となった。鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』によれば、「『レ・ミゼレブル』の登場人物はどれも一読忘れ難い印象を残すが、その名前がハムレットやドン・キホーテのような文学典型を表わす普通名詞にまでなったのはこのガヴロッシュをおいてほかにない。」そうである。

gavroche
パリのわんぱく小僧
[皮肉屋で機知に富み勇敢な少年]
(仏和大辞典)

ガヴロッシュは皮肉屋で才知に富み、勇敢でパリの流行歌に精通している、パリの浮浪児(ギャマン、gamin)だ。

パリの浮浪児は、恭しく、皮肉で、生意気だ。ろくにものを食べず、胃の腑が苦労しているので、食いしんぼうだが、才知があるので、目はきれいだ。(ユゴー『レ・ミゼラブル』新潮文庫3巻P22)

ユゴーは浮浪児気質はゴール精神のあらわれであり、パリの人民は大人になってもやはり浮浪児だと言う(3巻P22、3巻P31)。アルセーヌ・ルパンはまさしく浮浪児なのだ。私はルパンについて“天然”だと思うのだけれど、感情を歌で表したり、口をついて皮肉な言葉がでたり、天衣無縫と言うと大げさだけれど、どこか自由人の気ままさを感じるのはこの浮浪児的な部分かもしれない。


次→浮浪児の魂と剣士の心意気(その2)

2010/08/11

「皇后の頸飾」と「宝石項圜」

「清末小説研究会」という研究サイトがあり、論文が多く掲載されている。清末期には欧米からの翻訳小説も多く出版されていて、中にはモーリス・ルブランの作品もある。

清末小説研究会
http://www.biwa.ne.jp/~tarumoto/


近代デジタルライブラリーで新たに公開された「皇后の頸飾」を読み、同じく「王妃の首飾り(1-5)」の翻訳である「宝石項圜」という作品が扱われている論文を思い出して改めて読んでみた。(「宝石項圜」自体は未見)

大塚秀高「清末民初探偵小説管窺」
http://www.biwa.ne.jp/~tarumoto/k6402.html

フロリアニ勲爵士が「騎兵中尉」という役職名であること。
ロアン枢機卿の甥が枢機卿の位を継いだと書かれていること。
アンリエットの名前に「鞠子」(「皇后の頸飾」)、「末蘭」(「宝石項圜」)とMの音が入ること。
回転窓が「空気抜けの窓」(「皇后の頸飾」)、「通気口」(「宝石項圜」)となっていること。

など著者が不審とあげている箇所のいくつかは「皇后の頸飾」と共通点がある。推測どおり原作と中国語訳の間に日本語訳の「皇后の頸飾」があったのではないだろうか。ただし、「皇后の頸飾」はほぼ原作どおりの翻訳である。

頸飾の盗難犯=アルセーヌ・ルパンであることは、明言されていない。仄めかされているだけなのだ。極めてあからさまに。正体をただちに明かさないことが復讐でもあろう。頸飾の盗難犯=ルパンが成り立つのは、ルパンシリーズの1作品として発表されているからで、そうでない場合は、アルセーヌ・ルパンという人物の特質も、「エコー・ド・フランス」がルパンの機関紙であるという性質も知りえない。「宝石項圜」の作者はそこを利用して、頸飾の盗難犯と事件を解明する人物とを分離させたのではないだろうか。

「皇后の頸飾」は清風草堂主人「土曜日の夜」に収録されており、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーで閲覧できる。

清風草堂主人訳『土曜日の夜』磯部甲陽堂、1913年(大正2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000529940/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906873/112

「土曜日の夜」の表題作は「やまと新聞」に掲載された「春日燈籠」を改題したものだ。署名の「清風草堂主人」は複数人が使用した共同ペンネームで、名前だけでは誰か断定することはできない。ルパンシリーズの翻訳「金髪美人」(原作は「金髪婦人(2-1)」)を出版したのは安成貞雄と断定されており、「土曜日の夜」の初出「春日燈籠」も安成の翻訳とされているので、「皇后の頸飾」も安成の翻訳である可能性は高い。奥付には三津木春影の名前があり、三津木もルパンシリーズの初期翻訳者として活躍しているのだが、「金髪美人」「春日燈籠」「皇后の頸飾」は同じ翻訳者だと考えたほうが自然で、安成が正しいのではないかと思う。


「土曜日の夜」の状況は不明だが、「夜叉美人」改版のはしがきに「尚お本書は清国に於て漢訳せられ尠からざる歓迎を受けたり」とあり、清風草堂主人の著書が中国語に翻訳されていたらしいことが分かる。
清風草堂主人著『夜叉美人』サンデー社、1915年(大正4)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000539355/jpn
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/917431/5


論文の最後に、包天笑という人の「奇岩城(4)」の翻訳「大宝窟王」の名がある。目録で確認できる名前は「大宝魔王」であるようだが、「大宝窟王」にせよ「大宝魔王」にせよ、三津木春影「大宝窟王」の影響を感じずにはいられない。三津木春影「大宝窟王」は「奇岩城(4)」の翻訳で、1912年に前篇、1913年に後篇が出版されている。英訳からの重訳である。


近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):清風草堂主人
ルパンシリーズの初期翻訳

2010/08/08

「花とゆめ」2010年17号 スキップ・ビート!感想

著者:仲村佳樹

蓮はセツ(キョーコ)に言われた夕食を食べようとして、腕時計を忘れて出て来たことに気づいて不吉(まずい)と思う。

お風呂から上がったキョーコは、洗面所でどんな格好ででるべきか迷う。バスローブはしっくりこないし、セツなら下着姿なのだけど、恥ずかしくてそんなまねできない。ああ、いっそ地球侵略に宇宙人がでてきてくれないか、など現実逃避をしつつ、蓮が腕時計をしているのだから、自分もキョーコらしさが残ってていいかも!と下半身だけはしっかり穿いてでる。それほど意を決して出たのに、カイン兄さんは繭状態(シーツを頭まですっぽりかぶって丸くなって寝てる)。

明日ナイトウェアを買ってこよう、と思ったキョーコは、明日の蓮の予定を知らないことに気づいて、社さんに電話をする。社さんはキョーコがカインの妹役をしているとしらなかったようだ。キョーコがカインの妹役をしていると知って異様に興奮している社さん、目に見えるようだわ(笑)

翌朝、ミューズ(美容師ジェリ=・ウッズ)が待つ駐車場に行き、キャンピングカーで蓮とキョーコに戻る。蓮はDARK MOON、キョーコはBOX“R”の撮影があるから。キャンピングカーにはローリィもお待ちかね。キョーコは地味、と言ってるけど、いやいや、確かにローリィ的には地味だけど、孫がいるおじいさまの服装じゃない(笑) 髪がぴょんこぴょんこ跳ねてるカイン兄さんかわいい。

二度と人を傷つけないという手かせのための腕時計だった。それを忘れて人に暴力を振るってしまい、さらには腕時計を置き忘れてしまった。と、不吉な予感がする蓮。そして蓮は、ローリィにお守りはいらないと言う。


今号は、暑中お見舞い・携帯待ち受けFlashプレゼント付き。QRコードが冒頭のカラーページにある。「スキップ・ビート!」の絵柄はカイン兄妹なんだけれど、表示する時、先に尚とレイノのデュオのカットがあるから、ちょっとジャマと思う(笑)。ダウンロード期間は8月5日から8月31日まで。


「スキップ・ビート!」感想のバックナンバーはこちらから。

PDF関係のお役立ちソフト覚書

近代デジタルライブラリーでは資料をPDF形式で保存することができるが、そのままパソコンで閲覧しようとすると面倒なので、いくつかPDF関係のユーティリティーソフトをメモしておく。

近代デジタルライブラリーでは一度に10コマずつしかダウンロードできない。1冊1ファイルにまとめたり章ごとに分割したりなどするために、結合・分割ソフトを利用している。以下のサイトにあるフリーソフトpdfpdfpdf.comやPDF Knifeだ。
pdfpdfpdf.comは結合用。PDF Knifeは分割用。

papy's softwarelibrary
http://homepage3.nifty.com/e-papy/


PDFを閲覧する際、標準のAdobe Readerではページを移動すると、文字が表示されるまであぶり出しのように時間がかかってしまう。もっと早く軽く表示できないかとソフトを探してみた。「Foxit Reader 4.0」は日本語化しようとすると面倒だったので、「Foxit Reader 3.0」にした。タブのファイル名が文字化けするけれど、それなりに使えている。

窓の杜 - Foxit Reader
http://www.forest.impress.co.jp/lib/offc/document/pdf/foxitreader.html
PDFを素早く表示、サクサク閲覧、超軽快なPDFリーダー(第75回):もっと便利に使うためのお役立ちユーティリティソフト
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/special/20090629/1016441/?P=1
無料PDFリーダー「Foxit Reader 4.0」公開~注釈機能など、編集機能を大幅に強化 -INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100630_377644.html

Foxit Reader 3.1 はポータブルできないようです ぽたぶ(Foxit Reader 3.0へのリンクがある)
http://potabu.blog24.fc2.com/blog-entry-42.html

2010/08/06

近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):ルパン物語、馬岳隠士

小酒井不木の「ルパン物語」も近代デジタルライブラリーで発見。これはルパンシリーズのを扱った小論。

小酒井不木『趣味の探偵談』黎明社、1925年(大正14)
国立国会図書館 NDL-OPAC(書誌 詳細表示 ):趣味の探偵談
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000598017/jpn
本文 - 趣味の探偵談|近代デジタルライブラリー(105コマ目)
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1018576/105

「ルパン物語」は以前テキスト化した。
小酒井不木「ルパン物語」


「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」の英語ノベライズ版の翻訳である「予告の大盗」を発表した馬岳隠士の正体が堺利彦であることは、田中英夫『山口孤剣小伝』で明らかにされている。堺利彦が自分の変名について記している箇所も読むことができる。

堺利彦『堺利彦伝』改造社、1926年(大正15)
国立国会図書館 NDL-OPAC(書誌 詳細表示 ):堺利彦伝
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000599705/jpn
本文 - 堺利彦伝|近代デジタルライブラリー(150コマ目)
「故郷の七日」(15) 馬が嶽、大坂山
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1020527/150

右の窓から馬ヶ嶽が真正面に見える。あゝ此の山。君が筑波山に対するの情は、即ち僕が此の山に対する情である。君が『紫山』の号を有するが如く、僕は時として『馬嶽隠士』など云う仮名を用いる事がある。(『堺利彦伝』P280)

嶽は岳の異体字。

Avisk:馬ヶ岳:福岡県京都郡犀川町花熊
http://homepage2.nifty.com/avisk/mauntain/fukuoka10/umagadake.html


□参考文献
田中英夫『山口孤剣小伝』花林書房、2006年


近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):三津木春影
近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):清風草堂主人
近代デジタルライブラリーで三津木春影「大宝窟王」ほか提供開始
近代デジタルライブラリーで三津木春影「古城の秘密」提供開始

小酒井不木「ルパン物語」
小酒井不木「ルパン物語」をアップ
ルパンシリーズの初期翻訳

2010/08/05

近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):三津木春影

近代デジタルライブラリーで三津木春影の『大宝窟王』が公開された。すでに公開されている『古城の秘密』はとても状態が悪く、『大宝窟王』で初めて完全な作品が読めるようになった。『古城の秘密』はパソコンで見ることによって見やすくなっている。残る「金髪婦人(2-1)」の翻訳『金剛石』は国会図書館に所蔵されているが、近代デジタルライブラリーでは未公開。

他に、ルパンシリーズを換骨奪胎した作品を見つけた。「床下の骸骨」「船中の間諜」がそれで、「船中の間諜」は読んだことがあり、「床下の骸骨」は目次から分かる筋立てがよく似ていたのでざっと読んでみると果たして「ハートの7」だった。初期の翻訳は「翻案」と書いたりもするが、固有名詞を日本風にしているだけで翻訳に近い。この2作はルブランの作品を下敷きに別の物語に仕立ててある。

以下、リンクの上は国立国会図書館の書誌情報、下は近代デジタルライブラリーの本文。

●三津木春影『古城の秘密』前篇、武侠世界社、1912年(大正1)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000563023/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/947412
「813(5)」の翻訳。ルパンの名前は仙間せんま龍賢りゅうけん
前篇のみである上、状態が悪く不完全。

●三津木春影『大宝窟王』中興館書店、1912-1913年(大正1-2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000536022/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/913669
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/913670
「奇岩城(4)」の翻訳。ルパンの名前は隼白はやしろ鉄光てっこう

●三津木春影『海底の石牢』中興館書店、1914年(大正3)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000536215/jpn
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/913874/83
「床下の骸骨」は「ハートの7(1-6)」の換骨奪胎。

●三津木春影『噴火島博士』中興館書店、1915年(大正4)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000535135/jpn
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/912704/100
「船中の間諜」は「アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)」の換骨奪胎。「少年倶楽部」掲載のもの。

○三津木春影『金剛石』1913年(大正2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000534112/jpn
「金髪婦人(2-1)」の翻訳。近代デジタルライブラリー未公開。


清風草堂主人「皇后の頸飾」の続きで、ルパンシリーズのキーワードになると思われる単語でいろいろ検索した結果、清風草堂主人と三津木春影の作品が検出できた。その後清風草堂主人と三津木の作品を目次ですべて追ってみたが、現状、他に翻訳作品はないと思われる。本文は殆ど読んでいないので、読むことで新たな発見があるかもしれない。


余談ながら、『函中の密書』の表題作に保村ほむら俊郎しゅんろうが登場する。保村は「大宝窟王」「金剛石」でのエルロック・ショルメスの名前なので、シャーロック・ホームズものかとも思うが詳しく見ていない。

三津木春影『函中の密書』磯部甲陽堂、1913年(大正2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000529395/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906274


近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):清風草堂主人
近代デジタルライブラリーで三津木春影「大宝窟王」ほか提供開始
近代デジタルライブラリーで三津木春影「古城の秘密」提供開始
ルパンシリーズの初期翻訳
三津木春影「大宝窟王」前篇
三津木春影「大宝窟王」後篇


□2010/08/05追記
「不思議の鈴」は「海軍条約文書事件」だ。この図間違いない。同じく保村俊郎が登場する。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/905339/19

三津木春影『不思議の鈴』磯部甲陽堂、1915年(大正4)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000528552/jpn
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/905339/

「函中の密書」は「第二の汚点」という作品かも。ホームズシリーズには詳しくないのでタイトルに覚えがない。

こうなってくると当然「禿頭組合」は「赤毛組合」だな。
三津木春影『密封の鉄函』磯部甲陽堂、1913年(大正2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000529967/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906900/121

2010/08/03

近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):清風草堂主人

近代デジタルライブラリーに、清風草堂主人「金髪美人」が新たに追加されたので読んでみた。「金髪婦人(2-1)」の翻案で、固有名詞は日本風になっているが、普通の翻訳に近く読みやすい。

本文 - 神出鬼没金髪美人|近代デジタルライブラリー(69コマ目)
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906952/69

私共――有村龍雄と、作者たる私とは、狩戸町のとあるささやかな料理店で晩餐を取って居った。
こう云うと、諸君は怪しむかも知れない。御前は、有村龍雄の仲間かと、然し、そうではない。私は、有村の友人である。偶然の機会から知合になったが、有村龍雄は、個人としては、実に親切で、男気があって、上品で、快活で申し分のない友人である。のみならず、有村は、博学多才、機智湧くが如く、談話に長じて居る。一日語合って居っても飽きる事がない。否、それでも却って時のつ事の早いのをうらませる位の談話家はなしてである。加うるに、六歳にして鳥居伯爵家に伝わった皇后の頸飾を盗んで以来、三百有余の犯罪は、みな各々一個のローマンスである。それを上手に、目の前に人物が活躍する様に話すのを聞けば、何人も、其面白さに酔わされないものはあるまい。(清風草堂主人「金髪美人」P123 ※有村龍雄はアルセーヌ・ルパンのこと)

皇后の頸飾など「怪盗紳士ルパン(1)」を踏まえて内容が補足されている。「怪盗紳士ルパン(1)」を読んでいるのだろう、

そこで、近代デジタルライブラリーで何気なく検索してみると、発見できた。清風草堂主人『土曜日の夜』に収録されている「皇后の頸飾」だ。もちろん「皇后の頸飾」は「王妃の首飾り(1-5)」の翻案、表題作の「土曜日の夜」は「ユダヤのランプ(2-2)」の翻案、というよりむしろ「春日燈籠」の改題だった。本邦初訳といわれる「泥棒の泥棒」も近代デジタルライブラリーで公開されていること、また、清風草堂主人『秘密の墜道』の表題作は「遅かりしエルロック・ショルメス(1-9)」の翻案であることも分かった。


以下にまとめてみる。(リンクの上は国立国会図書館の書誌情報、下は近代デジタルライブラリーの本文)

●清風草堂主人著『金髪美人』明治出版社、1913年(大正2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000530019/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906952
「金髪婦人(2-1)」の翻訳。ルパンの名前は有村ありむら龍雄たつお

●清風草堂主人訳『土曜日の夜』磯部甲陽堂、1913年(大正2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000529940/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906873
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906873/112
表題作は「ユダヤのランプ(2-2)」の翻訳で、「やまと新聞」に掲載された「春日燈籠」の改題。付録の「皇后の頸飾」は「王妃の首飾り(1-5)」の翻訳。どちらもルパンの名前は有村ありむら龍雄たつお。序文で「アルセーン・リューパン」の翻訳であることが示されている。

●清風草堂主人編『秘密の墜道』磯部甲陽堂、1915年(大正4)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000528873/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/905689
表題作は「遅かりしエルロック・ショルメス(1-9)」の翻訳で、途中、「王妃の首飾り(1-5)」と「謎の旅行者(1-4)」のエピソードが挿入されている。ルパンの名前は龍羽りゅうは暗仙あんせん。ショルメスは静夜せいや保六郎ほろくろうで、シアーズ・ホルムロックの音写か。

●清風草堂主人著『夜叉美人』サンデー社、1915年(大正4)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000539355/jpn
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/917431/78
付録の「泥棒の泥棒」は「黒真珠(1-8)」の翻訳。初出は雑誌「サンデー」で本邦初めての翻訳と言われる。ルパンの名前は有田ありた龍造りゅうぞう
この本は改版で、明治44年に万里洞から刊行されたものが最初だが、初版にも「泥棒の泥棒」が収録されていたかどうかは不明。


『土曜日の夜』の序文では、次のように既訳の総ざらいがされている。ルパンシリーズ最初の単行本ラッシュが分かる。(「金剛石」が省かれているのは「金髪美人」と原作が同じだからだろう。)

「皇后の頸飾」はリユーパンの生い立を描けるもの、リユーパンを主人公とせる「予告の大盗」「金髪美人」「古城の秘密」「大宝窟王」等を読めるものは、必ず此の小篇を読まざるべからず。(清風草堂主人『土曜日の夜』序)


と、ここで混乱する出来事が。『土曜日の夜』の奥付に「著者 三津木春影」とあるのだ。「清風草堂主人」は複数人の共同ペンネームらしく、正体が三津木春影でもおかしくはないのだが、「春日燈籠」は安成貞雄が手がけたと言われているからだ。
1.三津木が「春日燈籠」(「土曜日の夜」)、「皇后の頸飾」を訳した。
2.安成が「春日燈籠」(「土曜日の夜」)、「皇后の頸飾」は三津木が訳した
3.三津木は責任者だった
4.奥付情報の誤り
真相はどうなのだろう。


近代デジタルライブラリーで三津木春影「大宝窟王」ほか提供開始
近代デジタルライブラリーで三津木春影「古城の秘密」提供開始
ルパンシリーズの初期翻訳

横山光輝「鉄人28号」第18巻(潮漫画文庫)入手のこと

完結、全18巻。光る物体編の後半とギャロン編。読みきり「新作鉄人28号 コンピューター殺人事件の巻」を収録。巻末の解説は千住明さんと四方田犬彦さん。

第18巻の収録範囲を追加しました。
漫画「鉄人28号」見出し一覧

ヴイストン「鉄人28号」ロボットが追加増産

ヴイストンが製作した二足歩行ロボットの「TVアニメ版 鉄人28号」が追加増産したようだ。

鉄人28号が復活!最新技術でパワーアップしたリアル二足歩行ロボット【真ロボット伝説】(ITライフハック) - livedoor ニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/4908818/

Vstone / TVアニメ版 鉄人28号 追加増産
http://www.vstone.co.jp/top/products/robot/TV_T28_ReBorn/

ヴイストン「鉄人28号ロボット」まとめ

恋人たちの丘 - カリオストロ伯爵夫人(13)

「カリオストロ伯爵夫人(13)」では、ラウールとジョゼフィーヌが船でセーヌ川を行き来しながら暮らしている。

梯子があるじゃないか。だったらのぼってみない手はない。もう体力は戻っているのだから、その気を起こしさえすればいい。そう思って、ラウールは梯子をのぼった。揚げ蓋を頭で押し開けると、いっきに無限の空間がひらけた。大河の真ん中に浮かんでいるのだ。《ノンシャラント号のデッキじゃないか……セーヌ川……ドゥー=ザマンの丘……》
 ラウールは数歩進んだ。
 ジョジーヌがいる。柳で編んだ肘掛け椅子にすわって。
(ハヤカワ文庫「カリオストロ伯爵夫人」P225/カリオストロ伯爵夫人(13)[第9章])

ドゥー=ザマンの丘(cote des Deux-Amants)と言われても何の感慨もないけれど、この地名が「恋人たちの丘」という意味だと分かると、にわかに色を帯びてくる。「恋人たちの丘」という名前をつぶやいたときのラウールの心情。「恋人たちの丘」が見える場所で船を停泊させたジョジーヌの心情。すでにすれ違い始めている。(Deuxは2(人)、Amantは恋人の意。創元推理文庫では「ドウ・ザマン(ふたりの恋人)の岸辺」(P222)と割書きで意味を注記している。)


恋人たちの丘には逸話がある。娘を結婚させたくない領主が、娘を抱いたまま恋人たちの丘の厳しい崖を頂上まで登ることを結婚の条件とした。挑んだ若者は力尽きて死に、娘は絶望して亡くなる。この逸話に取材した作品に、マリー・ド・フランスの「二人の恋人」がある。相思相愛の娘のために挑んだ若者は、秘薬のおかげで頂上までたどり着くがそこで死ぬ。
Cote des Deux-Amants - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/C%C3%B4te_des_Deux-Amants
Cote des Deux-Amants - Geoportail(フランス語)
Cote des Deux-Amants - Google Maps(フランス語)

航空写真と地図からするとドゥー=ザマンの丘は片側が崖のような急斜面になっているようだ。この崖を恋人たちは登ったのだろう。


ところで、「恋人たちの丘」といえば実在する地名だが、「恋人たちの塔(tour des Deux-Amants)」といえば「水晶の栓(7)」の挿話に出てくる建物だ。この、おそらくは架空の塔の挿話は、ドゥ=ザマンの丘の伝説を踏まえて創られたと思われる。


□参考文献
・マリー・ド・フランス『十二の恋の物語』月村辰雄訳、岩波文庫、1988年(「二人の恋人」)
・CiNii 論文 - テロール男爵の『古(いにしえ)のフランス,ピトレスク・ロマンティック紀行』:石木隆治、2006年
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004306155
http://ir.u-gakugei.ac.jp/bitstream/2309/1156/1/18804322_57_06.pdf
ドゥー=ザマンの丘が「恋人河岸」として紹介されている

« 2010年7月 | トップページ | 2010年9月 »

案内

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

アルセーヌ・ルパン

スキップ・ビート!

鉄人28号

つぶやき

無料ブログはココログ