« 横山光輝「鉄人28号」第18巻(潮漫画文庫)入手のこと | トップページ | 近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):三津木春影 »

2010/08/03

近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):清風草堂主人

近代デジタルライブラリーに、清風草堂主人「金髪美人」が新たに追加されたので読んでみた。「金髪婦人(2-1)」の翻案で、固有名詞は日本風になっているが、普通の翻訳に近く読みやすい。

本文 - 神出鬼没金髪美人|近代デジタルライブラリー(69コマ目)
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906952/69

私共――有村龍雄と、作者たる私とは、狩戸町のとあるささやかな料理店で晩餐を取って居った。
こう云うと、諸君は怪しむかも知れない。御前は、有村龍雄の仲間かと、然し、そうではない。私は、有村の友人である。偶然の機会から知合になったが、有村龍雄は、個人としては、実に親切で、男気があって、上品で、快活で申し分のない友人である。のみならず、有村は、博学多才、機智湧くが如く、談話に長じて居る。一日語合って居っても飽きる事がない。否、それでも却って時のつ事の早いのをうらませる位の談話家はなしてである。加うるに、六歳にして鳥居伯爵家に伝わった皇后の頸飾を盗んで以来、三百有余の犯罪は、みな各々一個のローマンスである。それを上手に、目の前に人物が活躍する様に話すのを聞けば、何人も、其面白さに酔わされないものはあるまい。(清風草堂主人「金髪美人」P123 ※有村龍雄はアルセーヌ・ルパンのこと)

皇后の頸飾など「怪盗紳士ルパン(1)」を踏まえて内容が補足されている。「怪盗紳士ルパン(1)」を読んでいるのだろう、

そこで、近代デジタルライブラリーで何気なく検索してみると、発見できた。清風草堂主人『土曜日の夜』に収録されている「皇后の頸飾」だ。もちろん「皇后の頸飾」は「王妃の首飾り(1-5)」の翻案、表題作の「土曜日の夜」は「ユダヤのランプ(2-2)」の翻案、というよりむしろ「春日燈籠」の改題だった。本邦初訳といわれる「泥棒の泥棒」も近代デジタルライブラリーで公開されていること、また、清風草堂主人『秘密の墜道』の表題作は「遅かりしエルロック・ショルメス(1-9)」の翻案であることも分かった。


以下にまとめてみる。(リンクの上は国立国会図書館の書誌情報、下は近代デジタルライブラリーの本文)

●清風草堂主人著『金髪美人』明治出版社、1913年(大正2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000530019/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906952
「金髪婦人(2-1)」の翻訳。ルパンの名前は有村ありむら龍雄たつお

●清風草堂主人訳『土曜日の夜』磯部甲陽堂、1913年(大正2)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000529940/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906873
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906873/112
表題作は「ユダヤのランプ(2-2)」の翻訳で、「やまと新聞」に掲載された「春日燈籠」の改題。付録の「皇后の頸飾」は「王妃の首飾り(1-5)」の翻訳。どちらもルパンの名前は有村ありむら龍雄たつお。序文で「アルセーン・リューパン」の翻訳であることが示されている。

●清風草堂主人編『秘密の墜道』磯部甲陽堂、1915年(大正4)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000528873/jpn
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/905689
表題作は「遅かりしエルロック・ショルメス(1-9)」の翻訳で、途中、「王妃の首飾り(1-5)」と「謎の旅行者(1-4)」のエピソードが挿入されている。ルパンの名前は龍羽りゅうは暗仙あんせん。ショルメスは静夜せいや保六郎ほろくろうで、シアーズ・ホルムロックの音写か。

●清風草堂主人著『夜叉美人』サンデー社、1915年(大正4)
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000539355/jpn
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/917431/78
付録の「泥棒の泥棒」は「黒真珠(1-8)」の翻訳。初出は雑誌「サンデー」で本邦初めての翻訳と言われる。ルパンの名前は有田ありた龍造りゅうぞう
この本は改版で、明治44年に万里洞から刊行されたものが最初だが、初版にも「泥棒の泥棒」が収録されていたかどうかは不明。


『土曜日の夜』の序文では、次のように既訳の総ざらいがされている。ルパンシリーズ最初の単行本ラッシュが分かる。(「金剛石」が省かれているのは「金髪美人」と原作が同じだからだろう。)

「皇后の頸飾」はリユーパンの生い立を描けるもの、リユーパンを主人公とせる「予告の大盗」「金髪美人」「古城の秘密」「大宝窟王」等を読めるものは、必ず此の小篇を読まざるべからず。(清風草堂主人『土曜日の夜』序)


と、ここで混乱する出来事が。『土曜日の夜』の奥付に「著者 三津木春影」とあるのだ。「清風草堂主人」は複数人の共同ペンネームらしく、正体が三津木春影でもおかしくはないのだが、「春日燈籠」は安成貞雄が手がけたと言われているからだ。
1.三津木が「春日燈籠」(「土曜日の夜」)、「皇后の頸飾」を訳した。
2.安成が「春日燈籠」(「土曜日の夜」)、「皇后の頸飾」は三津木が訳した
3.三津木は責任者だった
4.奥付情報の誤り
真相はどうなのだろう。


近代デジタルライブラリーで三津木春影「大宝窟王」ほか提供開始
近代デジタルライブラリーで三津木春影「古城の秘密」提供開始
ルパンシリーズの初期翻訳

« 横山光輝「鉄人28号」第18巻(潮漫画文庫)入手のこと | トップページ | 近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):三津木春影 »

アルセーヌ・ルパン」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/54863/49043577

この記事へのトラックバック一覧です: 近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):清風草堂主人:

« 横山光輝「鉄人28号」第18巻(潮漫画文庫)入手のこと | トップページ | 近代デジタルライブラリーで新資料提供開始(2010年7月):三津木春影 »

案内

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

アルセーヌ・ルパン

スキップ・ビート!

鉄人28号

つぶやき

無料ブログはココログ