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2010/05/29

ポプラ文庫クラシック「古塔の地下牢」読了

南洋一郎文、2009年

巻頭の地図でアンジャン(アンギアン)の場所がおかしい。フランスの真ん中にオアーズ・エ・セーヌ県という謎の県が存在し、アンジャンがその中にある。地図が誤っていることは珍しくないのだが(「8・1・3の謎」ではベルデンツ城がフランス国内にあったり)、これにはたまげてしまった。

もっとも文中でも地図情報が誤っている。

ここはパリの西南、あの有名なベルサイユの宮殿があるセイヌ・エ・オワーズ県にあるアンジャンという町からはなれた景色のよい別荘地帯である。(ポプラ文庫クラシック「古塔の地下牢」P14)

セーヌ=エ=オワーズ県は、パリの西半分を半円状に取り囲むように存在していた県だ。現在は、ヴァル=ド=オワーズ県と、イヴリーヌ県に分かれている。ヴェルサイユはイヴリーヌ県でパリの西、アンギアンはヴァル=ド=オワーズ県でパリの北にある。

Enghien-les-Bains - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Enghien-les-Bains


ポプラ文庫クラシック版が現行のポプラ社版(「文庫版 怪盗ルパン」)と大きく違うところはボーシュレーがルパンの放った弾で死んでいることだ。現行の版では怪我が治ったあと改めてギロチンにかけられることになっている。

ポプラ文庫クラシック版ではボーシュレーは数年前に脱獄したことになっているが、ボーシュレーもジルベールと同じ年頃(21歳ぐらい)になっているため、脱獄したのが未成年になってしまう。現行のポプラ社版では年齢は変わらないが、脱獄が数年前という記述が消えている。(原作では年齢がかかれていないが、若くても30代だろう)


ポプラ文庫版で驚いたことをもう一点。

ドーブレックが、ひくい声でなにかいった。こんどもルパンは一心ふらんに耳をすましていたが、どうしても聞きとれない。
「ちぇっ、しまった。これでは、侯爵だけが連判状のあり場所をしることになる」
いっそ思いきって、ドーブレックを一発のもとにうちころして、ガラスせんの秘密が侯爵にきかれないようにしちまおうかと、ピストルに手をかけたが、
「いやいや、そんなことをしたら、玉なしだ。なあに、侯爵が聞いたら、あとで侯爵から白状させる方法もあろう」
と思いなおして、なお一心に耳をすましていた。(ポプラ文庫クラシック「古塔の地下牢」P162)

物騒な。ジルベールが身を持ち崩したのではなく、助力を求めるべく善良なるルパンの手下になった等改変をしてあるのに、こういうシーンがあるのは驚く。しかも私は、撃ち殺してしまおうと考える箇所に覚えがなかった。調べてみると、ハヤカワ文庫にこのシーンがなかったためだった。創元推理文庫や偕成社アルセーヌ=ルパン全集にはある。

アルセーヌ・リュパンは舌打ちをした。ドーブレックは何か言っているが、リュパンにはきこえないのだ! 耳をすまし、心臓の鼓動をおさえたが、何も聞きとれない。
《いまいましい》と、彼は考えた。《これは意外だった。どうしよう?》
彼はもう少しでピストルを構え、ドーブレックに一発お見舞いして、けりをつけるところだった。しかし、そんなことをしても何もわかるわけではない、成行きを見てうまくやるほうがましだ、と考えた。(創元推理文庫「水晶の栓」P180)

このシーン、ラストの布石になっているように思う。拳銃の弾を見舞うことが上策であればそれを実行しただろう。

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