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2009/12/09

ウージェーヌ・シュー「さまよえるユダヤ人」上・下巻

小林龍雄訳、角川文庫、1951-1952年

なかなかおもしろかった。しかし悲しいかな、抄訳なのだ。だから、これからどうなるの? あの人はどうなるの?というのが残ってしまう。それでも、どんでん返しがあって一応区切りはついている。

新聞小説なので冗長な部分もあるのだろうし、Wikipedia(英語)を自動翻訳にかけて読んだら「尻すぼみ」という単語が出てきたし、ここで切るしかないのだろう。


レーヌポン家の子孫たちは1832年2月13日に、パリの屋敷に来るよう刻まれた青銅のメダルを持っている。決められた日にメダルを持参すれば、財宝を手にすることができるのだが、事情を知っているものあり、知らないものありでイエズス会に翻弄されていく。このメダルは新教徒のマリユス・レーヌポンという人物が、イエズス会に改宗するが謀られて財産を取られてしまい、残った財産を子孫たちに残すため作成したものだった。遺産は財産を託されたユダヤ人によって、かなりの大金に膨らんでいる(財テク見習いたい)。

エスイタというのはイエズス会(jesuita)のこと。とりわけロダンという人物が暗躍し、子孫の一人をイエズス会の司祭にさせて財産を横取りしようともくろんでいる。


レーヌポンの子孫たち
・ローズ・シモンとブランシュ・シモン。双子の姉妹。シモン将軍の娘
・フランソア・アルディ。パリ近郊の工場主
・ジャルマ。インドの王子
・ジャック・レーヌポン。「ごろ寝の大将」というあだ名の職工
・アドリエンヌ・ド・カルドヴィル、レーヌポン伯爵の令嬢
・ガブリエル・レーヌポン。外国布教団付司祭


さまよえるユダヤ人とは、磔の刑に処される十字架を背負ったイエスの腰掛けて休みたいという要求をはねのけたがために、永遠にさまよい歩き続けることになったユダヤ人の伝説からきている。

「さまよえるユダヤ人」なのに新教?という疑問があったのだが、レーヌポンは「さまよえるユダヤ人」の妹の子孫ということになっている。さまよえるユダヤ人自身も登場し、子孫を助けたりする。しかしさまよい歩くのは自身の意志によるものではないので、必ずしも思惑通り助けにいくことはできない。さまよえる人物にはもう一人、エロディアードという女性がいて、同じくレーヌポンの子孫を助ける。彼女はジャン・バチストの死を望んだために、さまようことになったらしい(「サロメ」に関係がある?)。この二人は相変わらずさまよい歩くままなのか、冒頭の神秘的なシーンの意味が解明されないのも残念。


翻訳以降のネタバレ的なことを言うと、どうやら子孫たちは遺産を手に入れられないらしい。何人かは「ペスト」によって命を落とす。翻訳された部分でも「ペスト」の影が忍び寄っている。「さまよえるユダヤ人」はただ歩くだけではなく災厄をもたらす存在でもあるから。
また、メダルに刻まれた文字「Victime de L.C.D.J.」(L.C.D.J.の犠牲者)の「L.C.D.J.」は十中八九「La Compagnie de Jesus」(イエズス会)の略だろう。それを知っていればガブリエルはイエズス会には入らなかっただろうに。

何気なく検索していたら見つけたのだけれど、アドリエンヌ・ド・カルドヴィルという薔薇があるらしい。アドリエンヌは赤髪でまれに見る美人で、性格も魅力的な女性と思う。しかし上巻で引きつけられるかれども下巻ではほかのキャラクターと同様に活躍しなくなる。Wikipedia(英語)を読んでいたら、ジャルマ王子と恋仲になるらしい。インドの王子ととびきりの美女の組み合わせ、見たい!! 翻訳された範囲では子孫同士が会うことがないので残念。


上巻のあとがきで五つのメダルの問題において「八犬伝」との類似が指摘されているが、共通の印を持った者たちが集うという筋書きは王道ではある。翻訳の「且驚き、且感心して」みたいな表現が八犬伝ぽいと思った。

気になるのは「五つ」のメダルと書かれていること。六つなら数が合うのだけれど…。ないか裏話があるのだろうか。余談ながらこの作品はモーリス・ルブランの「綱渡りのドロテ」(別題「女探偵ドロテ」)に影響を与えている。メダルの数は両者の類似においても重要な点だ。


Browse By Author: S - Project Gutenberg - Sue, Eugene, 1804-1857(原文と英語訳)
http://www.gutenberg.org/browse/authors/s#a1186
Le Juif errant - Wikipedia, the free encyclopedia(英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/Le_Juif_errant
Le Juif errant (Sue) - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Le_Juif_errant_(Sue)
(ローズとブランシュの姉妹は母がレーヌポンの家系なので、姓がレーヌポンとなっているのは怪しい。それとも何か意味があるのか)

アドリエンヌのバラ。作出年が1859年なので「さまよえるユダヤ人」のブームに乗って付けられたと思われる。
バラ-個体情報:アドリアンヌ ドゥ カルドヴィル
http://www.hanafes.jp/flower/wf_r_detail.php?k_no=38
世界に誇るバラ園 花フェスタ記念公園
http://www.hanafes.jp/hanafes/

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