「Dictionnaire Arsene Lupin」を閲覧した
アルセーヌ・ルパンシリーズの研究書に、Jacques Derouard氏が書いた「Dictionnaire Arsene Lupin」と「Le Monde d'Arsene Lupin」というという2冊の本がある。
ずっと前に、この2冊を紀伊国屋書店に注文してみたけれど、「Dictionnaire」は入手不可で、「Monde」しか手に入らなかった(フランス語が読めないので、写真や絵を見てお茶を濁す程度)。それで「Dictionnaire」を見てみたいと思っていて、国内では複数の大学図書館に収蔵されていることも知っていたのだけれど、機会がないままでいた。このたび公共図書館に紹介状を書いてもらい、明治学院大学の図書館へ。
「Dictionnaire」は、作中の地名・人名のみならず、当時の風俗や作者ルブランのことや、関連作品のことなどを網羅した、百科辞書となっている。これが現状入手できないなんてもったいない。辞書にところどころ「amour」とあるのは未刊行の「アルセーヌ・ルパン最後の恋(22)」の内容が反映されていることを示しているわけで、ますます「最後の恋」が読みたくなった。
最近ようやく単語帳を作りつつあるのだけど、「Dictionnaire」があれば(+フランス語が分かれば←難関)いらなくない?(笑) いやいや、自分が理解できなくては。単語は、地名についてはほぼ浚うことができたと思う。そのうち9割は存在が確認できて、あとの1割は確認できなかったり、実在の地名をもじっていると思えるものだったりというところ。「813(5)」のジュヌヴィエーヴが育ったというヴァンデ地方のモンテギュ(Montegut)は、「Montaigu」と発音が似ているのでは、と思っていたら、この辞書にもMontaiguか?というように書かれていて嬉しかった。jiu-jitsuの項目もあってレ=ニエのことがちゃんと載っていた(→腕ひしぎ(その5))。いきあたりばったりで自前の資料は用意していかなかったので調べるというより漠然とページをめくったり、コピーをとったりした。
同図書館には同じくJacques Derouard氏が書いたモーリス・ルブランの伝記「Maurice Leblanc, Arsene Lupin malgre lui」も収蔵されていて、こちらも閲覧した。文字だらけの本なので理解できないのだけれど、子供の頃からのルブランの写真が載っているのでルブランスキーとしては嬉しい。(この伝記はたぶん新刊でも入手可能。)
同じく収蔵されていたGerard Pouchain氏の「Promenades en Normandie, avec Maurice Leblanc et Arsene Lupin」は、ノルマンディーの土地ごとに、当時の絵葉書や雑誌に載った広告と、ルブランがその土地を描いた文章とが載っている。ルブランの文章が味わえるし、ルパンシリーズ以外の小説(エッセイも、かな)からも引用されていて、ルブランがノルマンディーをいかにとらえていたかの貴重な資料にもなる。このシリーズはモーパッサンなど他の作家のバージョンも出ているはず。そうだ、一つ発見。エトルタにオーヴィルホテルは実在したらしく、広告が載っていた(→八の魔術 - 八点鐘(12))。でもコピーしてこなかった(本当にいきあたりばったりだ)。
Dictionnaire Arsene Lupin, Bibliotheque lupinienne, I(フランス語)
http://www.lesbelleslettres.com/livre/?GCOI=22510100256330
Le Monde d'Arsene Lupin, Bibliotheque lupinienne, II(フランス語)
http://www.lesbelleslettres.com/livre/?GCOI=22510100389050
Maurice leblanc Arsene Lupin malgre lui Amazon.fr Jacques Derouard Livres(フランス語)
http://www.amazon.fr/dp/2840492113
Promenades en Normandie avec Maurice Leblanc et Arsene Lupin Amazon.fr Gerard Pouchain Livres(フランス語)
http://www.amazon.fr/dp/285480354X
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こんにちは、Ko-Akira さん。
ペレンナです(^一^)
わたしも何年か前に、明治学院大学の“Dictionnaire Arsène Lupin”を閲覧したことがあります。
なんとなく本の内容としては、けっこうマニアックぽい(?)ところもあったりしますが(^^;) 日本では数少ないルパンやルブランの情報などを知るためには、とても価値のある本だと思います。
今年1年は“Des couples”や“Gil Blas”紙に連載されたルブランの純文学系の短編やエッセイを読むことに専念してきたので、来年からはいよいよ、ルブランの伝記やジェラール・プシャン氏の本などの研究書も、折りを見てチャレンジしていきたいな、と思っています(^∇^)
Ko-Akira さんも、ルパンやルブランのことについてこれからも、興味ぶかい研究やブログなどを書きつづっていってください。
投稿: ペレンナ | 2009/12/12 13:03
こんにちは。コメントありがとうございます。
たしかに「Dictionnaire 」には一般のとくに日本の読者には分からないマニアックな部分がありますね。見たことの無い派生作品(演劇作品とか)などもあり、どういうものなのだろうと興味が湧きました。辞書ですから、興味のある項目だけ“つまみ食い”が出来ますし、何らの形で日本語訳が出て欲しいです。
ルブランの研究を進められているようで安心しました。伝記も読み応えがありそうな本でしたね。フランス語で読むのは大変だと思いますが、応援しています。
私はそろそろルパンシリーズ以外の翻訳も読んでみようと思っています。できる範囲でですが。
投稿: K-A(管理人) | 2009/12/13 12:58
最近、インターネット上でも、ルブランの著作がちらほら出てきたようなので、うれしく感じています(^∇^)
たとえば、《Ebooks libres et gratuits》のサイトでも、“Le Cercle rouge”(「赤い輪」)のPDF文書が公開されたり、《Gallica》でも今まで未公開だった“Le Coffret de voyage”(「旅の小箱」)が掲載されていますよね。
もし、これらのルパン・シリーズ以外の小説などにご興味をもたれたら、ぜひ日本語の翻訳やフランス語の原文などにも目を通してみてください。
《Gallica》で欠本中の《Je sais tout》の各号(73~78号)や、ルブランの小説が掲載された雑誌なども、九州大学、京都大学、日本体育大学、和洋女子大学などの図書館に所蔵されていますので、一度、利用してみたらいかがでしょうか?
さ来年の2011年はルブラン没後70年なので、それまでにはフランス語の勉強もきっちり終えて、なんらかの形で彼の本や小説の翻訳をみなさまに公開していきたいな、と思っています d(^一^)
投稿: ペレンナ | 2009/12/13 20:03
「赤い輪」の公開に今気づきました! 定期的にチェックはしていたのですが、ページの途中にあるので気づかなかったみたいです。実はちょうど東京都立図書館からラカサン編集の全集の第5巻を取り寄せたところだったんですよ。これでルブランのドキュメント部分だけをコピーすれば済みます(笑) 助かりました。
Gallicaも1921年分が公開されていようですね。こちらも確認してみます。Gallicaにない号を収蔵している大学図書館もあるのですね。情報ありがとうございます。
2011年はまだ先とおもっていましが、あと1年と少しなのですね。私はこのブログを細々続けていけたらなあと思っています。お互いに頑張りましょう。何か発表されることを楽しみにしています。
投稿: K-A(管理人) | 2009/12/13 21:51