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2009/10/03

サイタファルネス王の王冠 - 奇岩城(4)

サイタファルネス王の王冠はレギーユクルーズ(奇巌城)の収蔵品の一つである。ルパンはこう言っている。

ルーヴル美術館の怪事件、古代ペルシャの王冠がにせものだとわかったときのことをおぼえているだろう? あれは、近代の細工師が作った真赤なにせものだったのだ……そのサイタファルネスがこれだよ。ほんものだよ、ボートルレ君!
(岩波少年文庫「奇岩城」P348)


この事件は、実際に起こったものである。

1896年、ルーヴル美術館はあるティアラ(王冠)を購入する。卵の殻を半分にしたような丸い形のティアラで、金でできており、次のような献呈銘文が刻まれていだ。曰く「オルビア元老院と人民により、無敵にして偉大なるサイタファルネスに」。オルビアは黒海沿岸にあったミレトス人の都市で、サイタファルネスはスキタイの王である。1895年に発掘されたもので、制作年代は紀元前200年頃と推定された。

しかし、購入一ヶ月もたたないうちに、ミュンヘンの考古学者アドルフ・フルトヴェングラーがサイタファルネスの王冠は贋作だという見解を発表する。その後も贋作との意見が他方から噴出し、さらにフルトヴェングラーは著書で贋作に他ならないと徹底的に暴きたてた。金の色調が近代のものというのであり、刻まれている文様、人物像の様式が年代と全くあっていないというのである。この著書により、真作説を取っていた有識者も、贋作説に翻った。しかし、ルーヴルは無視して展示し続けた。

真贋が決着したのは1903年である。ある絵画を贋作したとして逮捕された男が自分はサイタファルネスのティアラの作者だと告白し、再びこの問題が脚光を浴びる。しかし告白は嘘であり、本当の作者はオデッサ(現在はウクライナ)に住む金細工師イズライリ・ルホモスキイだった。ルーヴルは彼をパリに呼び寄せ、制作方法を問いただし、ティアラのミニチュアを作らせた。結果、作者に間違いないと判明するのである。

サイタファルネスの王冠は、誤謬を訂正して再び展示されることとなった。

この真贋問題には、ハインリヒ・シュリーマンの成功を発端とした古代遺跡発掘ブームがあったらしい(他にも要因がいくつかあるのだが)。そういえばレギーユ・クルーズにはほかにもタナグラ人形など発掘ものが収められている。


□参考文献・参考サイト
・種村季弘「贋作者列伝」青土社、1992年
「サイタファルネス王の王冠 イズライリ・ルホモフスキー」
・長谷川公之「贋作 汚れた美の記録」アートダイジェスト、2000年
「ルーヴル美術館も騙された 黒海沿岸出土の古代黄金冠」
Tiare de Saitapharnes - Wikipedia(フランス語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Tiare_de_Sa%C3%AFtapharn%C3%A8
La Nature, 1896 - CNUM - 4KY28.47 p.56(フランス語。ティアラの写真あり)
http://cnum.cnam.fr/CGI/fpage.cgi?4KY28.47/60/100/536/0/0
真贋のはざま:東西贋作事件史
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/2001Hazama/07/7300.html

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