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2008/11/23

腕ひしぎ(その1) - アルセーヌ・ルパンの脱獄(1-3)

アルセーヌ・ルパンは数種の格闘技を会得していることになっているが、最も早く出てくるのが柔術である。1906年に発表された「アルセーヌ・ルパンの脱獄(1-3)」において、柔術の技を披露する。

またジュウジツが知られていなかった時代に、パリでこの闘技を教えたのも、またアルセーヌ・ルパンだったらしい。(「強盗紳士ルパン」ハヤカワ・ポケット・ミステリ、中村真一郎訳、P57ー58)

 それから彼は、急に腹を立てて、男の首をしめて、押し倒そうとした。彼は五十歳だったが、まだ人並み以上の力を持っていた。ところが相手は、かなりわるい条件にあるように見えた。それに、もしこの男を連行することができたら、何という手柄になることだろう!
 闘争は長くつづかなかった。アルセーヌ・ルパンはほとんど抵抗しなかった。襲いかかるとすぐに、ガニマールは手をはなした。彼の右腕は力なく、だらりとたれ下っていた。
「オルフェーブル河岸でジュウドウを習っていたら」と、ルパンは言った。「この手は日本語でウデヒシギだってことがわかるだろうよ」(同P64ー65)

原文ではジュウジュツ/ジュウドウはjiu-jitsu、ウデヒシギはudi-shi-ghiと綴られている。このうちjiu-jitsuは今でも使われる表記なので問題はない。腕ひしぎがudi-shi-ghiとなるのか、という点は、フランス語はHを発音しないので、
/u-de-hi-shi-gi/→/u-de-i-shi-gi/→/udi-shi-ghi/
となってもおかしくはないと推測することはできる(あくまで仮定として)。ただ、なぜjiu-jitsuでudi-shi-ghiなのか気になっていた。


L'arrivee du jujitsu en France(仏語)…A
http://pagesperso-orange.fr/laurent.thomas/ffjj.htm

このページで、1905年に行われたレニエとデュボワによる異種格闘戦が紹介されているが、柔術家レニエが英語でアーム・ロック(arm-lock)、日本語で腕ひしぎ(udi-shi-ghi)という技で勝ったことが紹介されている。(後で指摘するときのために、このページをAと名づけておく)

このレニエ=デュボワ戦を紹介しているブログがある。

100年前のフランスの出来事 : 柔術家vs拳闘家
http://france100.exblog.jp/3743911/

デュボワはレ・ニエに素早く懐に飛び込まれ、足固めに押さえ込まれて優勢に立たれた。レ・ニエがデュボワを地面に押さえつけ、腕をひねると、彼はこらえきれずに「止めろ!」と叫んで試合を終了させねばならなかった。

腕をひねる…確かに腕ひしぎっぽい? さらに調べてみる価値がありそうに思えた。


Early Ju-jutsu: The Challenges by Graham Noble(英語)…B
http://www.dragon-tsunami.org/Dtimes/Pages/articlee.htm
同じ腕ひしぎでも、こちらはUde-shighiとなっている。

Historique - Club de Judo / Jujitsu DOJO OLYMPIC de Lyon(仏語)…C
http://www.judoclichy92asjj.com/pages/judo-histoire-du-judo-en-france.htm
今度は十字固め(JUJI-GATAME)だ。しかし案ずるに及ばず、腕ひしぎは現在「腕ひしぎ十字固め」と呼ばれているようなので、同じ技を指すのだろう。とはいえ、当時、腕ひしぎと言っていたのか、十字固めと言っていたのでは問題が違ってくる。ところでCのページでは、フランスの柔道史をKawaishi前とKawaishi後とで分けている。この日本人の名前「川石」で検索してみると、ずばりの本が見つかった。

吉田郁子「世界にかけた七色の帯 フランス柔道の父川石酒造之助伝」駿河台出版社、2004年
この本には、私が気になっていた情報がほぼ網羅されていた。この本で参照されているミシェル・ブルッス「柔道 その歴史その成功」1996年は、Aのページの参照本と同じと思われ、Aのページの下にある画像がレ=ニエの柔術道場の宣伝ポスターであることが分かる。


次→腕ひしぎ(その2)

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