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2008/08/12

ルパンの涙(その5) - ボートルレ1

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


誘拐もエギーユ・クルーズもルパンの問題で、ボートルレを巻き込む必要はなかったはずです。でもボートルレには、単なる発見者だけではなく他のものを求めていると思います。

「ボートルレ君、なぜわたしが君を自由に行動させてきたか、わかっているかい? 何週間も前から、君をふみつぶそうと思えばできたのに、そうしなかったわけが? 君がここまでたどりつけたわけが、わかっているかい?(略)君には分かっている。そうだろう? エギーユ・クルーズとは、つまり冒険そのものなのだ。だから、それがわたしのものであるかぎり、わたしは冒険家なんだ。エギーユ・クルーズを返してしまえば、いっさいの過去はわたしから切りはなされ、そして未来が始まるのだ。(略)」(岩波P354)

君には分かっているだろう。こんなセリフ言える相手がルパンにはいません(そもそもこういうストレートな物言いをまずしません)。いないから引っ張ってきた、自分と同じ知識を得て、自分と同じ感じ方の出来る者を。エギーユ・クルーズを追うということは、ルパンの追体験をすることに他なりません。しかしボートルレの立場は理解者ではなく、証言者の立場だと思います。ルパンは答えを求めずにしゃべっていますし、まっとうなボートルレが理解者たりえたかというと疑問だからです。

ボートルレは途中でルパンと自分とは同じ手段を用いていると考えましたが、これは当たっています。同じ手段とは1815年のパンフレットと暗号の紙片の研究です。暗号の紙はルパンが落としていきました。パンフレットはマシバン経由でボートルレに伝えられました。歴史文芸アカデミー会員の太鼓判つきで。(ボートルレ自身はエギーユ・クルーズの存在証明をしていないのです。確実にあったことが示されているのはマリー=アントワネットの逸話ぐらいしかありません)。

ルパンが探させたと考えるのであれば、数々の妨害は何だったのか。私は“何も分かっていない”ボートルレに発見して欲しくなかったからと考えます。そこまでするかと思うかもしれませんが、ルパンは悪党です(あまり声高に言いたくないけど)。自分の都合が第一なのです。数々の妨害により、エギーユ・クルーズの存在を証明し、歴史を暴き、謎を解く方向に向かわせています。


ところで、エギーユ・クルーズを放棄すれば過去と切り離され未来が始まるとは、なんとも虫のいい考えです。この思考回路は「遅かりしエルロック・ショルメス(1-9)」でも見られます。盗みの現場を女性に見られたことに恥じるものの、盗んだものを自分の身から離してしまうことで気分が楽になっている。「813(5)」においても、責任転嫁をして自らの罪を無かったことにしようと試みますが、それに失敗したとき、何も考えずにすむ境地に逃げ込むことになります。

エギーユ・クルーズを放棄しても過去の犯罪の事実がなくなるわけではありません。償いもせずのうのうと暮らす。そうは問屋が卸さないというものです。だからショルメスの拳銃には独りショルメスの怨みだけが込められているわけではないのです。


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※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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