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2008/08/11

ルパンの涙(その2) - 誘拐

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


作中でルパンがした行為はいろいろありますが、そのすべてが解明されているわけではありません。そのうち目的がはっきりしている誘拐について触れたいと思います。ルパンはヒロインの誘拐について芝居であったと言っています(岩波P340)。最初から愛し合っていたが、ルパンの名の下には結婚できないため芝居を打ったのだと。

この言葉は私は信用できると考えます。ルパンはヒロインのまっすぐな瞳と心を愛しているのだから、それを損なう軟禁生活を長く強いることはなかったと思います。表の世界から抹殺され、本来の名前で生きられない生き辛さはルパン自身が十分知っているはずです。だから、ヒロインが元の名前と地位に戻ることは折り込み済みだったのです。

誘拐は、ルパンと花婿は別だと思わせることにも有効でした。そのためにルパンは追いかけてきたボートルレを利用しました。ヒロインを自分の城館にかくまった以上、自らヒーローになるという計画もあったのでしょうが、それでは危険すぎます。だからボートルレを隠れ蓑にしたのです。ガニマールとショルメスを監禁し、ボートルレにはそうしなかったのは、前者には顔を知られているけれど、後者には知られていないからです。このことに気づいてボートルレは敗北したと思ったのです(岩波P338)。


結婚について補足しておくと、フランスでは結婚というときに、二つ考えなくてはいけないようです。およそのところでいうとこんな感じ。

  1. 役所に赴き誰某と誰某は結婚しますと一定期間掲示をし、期間終了後結婚手続きをする
  2. 教会で式を挙げる

法律上の結婚と宗教上の結婚ということです。アルセーヌ・ルパンと誰某は結婚しますと告知できるわけがありません。したがって、別の名前の下で結婚することになるわけです。

ところで、ルパンの言葉には明確な嘘が一つあります。この(今名乗っている)名前になれば実現できるのではなく、この名前に戻れば、と言っているところです。しかも、その名前は子供の頃から育った名前だと言っています(ハヤカワ文庫「奇岩城」P281)。幼少時に過ごした名前は別にあることを読者は知っているので嘘です。しかし本名だと言っているわけではありません。何故わざわざこんな言い方をしたかというと、傍らに妻がいたからでしょう。妻には今の名前に対して幾ばくかの正当性を示していたのか、あるいは成り行き上仕方がなかったのだと誤魔化していたのかもしれません。それを知っていたからショルメスはルパンの名前を暴いたときに彼女の方を見てしまったのです。


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※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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