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2008/04/15

怪盗紳士という称号(その1)

※以下の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※


アルセーヌ・ルパンの代名詞となったこの言葉は「gentleman-cambrioleur」の訳語である。最初の単行本に選んだタイトルであり、ルパンの肩書きでもあるあるこの言葉は、さまざまな日本語で訳されて、さらにその訳語が独立して使われているため、本来の意味、本来の使われ方が捕らえづらくなっていると感じる。私はフランス語も英語も分からないので、意味を断言することは出来ないが、この言葉の忘れられがちな側面について整理してみたいと思う。

なお、「gentleman-cambrioleur」の訳語には紳士強盗という語を使うことにする。(新学社文庫、新潮文庫などでこの訳語が用いられている)


紳士強盗の言葉が原作に出てくるのはそれほど多くない。次の6箇所である。(調査対象は小説のみ)

  1. 《(略)あらためて参上しよう。怪盗紳士アルセーヌ・ルパン》
    ハヤカワ文庫「怪盗紳士ルパン」P11/アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)

  2. このようにして、(略)怪盗紳士ことアルセーヌ・ルパンその人であると知ったのである。
    ハヤカワ文庫「怪盗紳士ルパン」P234/ハートの7(1-6)

  3. 「(略)怪盗紳士ジェントルマン・カンブリオルールは死んだのだ。百姓紳士ジェントルマン・ファーマーばんざい! というわけさ」
    岩波少年文庫「奇岩城」P371/奇岩城(4)

  4. 男はポケットから一枚の名刺をとりだすと、これを読みあげた。
    「怪盗紳士、アルセーヌ・ルパン」
    偕成社文庫「813」P31-32/813(5)

  5. 〈下名、強盗紳士、元大佐、元下男、元死体、アルセーヌ・ルパンは、(略)〉
    新潮文庫「ルパンの告白」P295/白鳥の首のエディス(6-7)

  6. 『おれだ、アルセーヌ・リュパンだ。昔の詐欺師、怪盗紳士、ここにあり。(略)』
    創元推理文庫「虎の牙」P481/虎の牙(11)

これに加えて、1冊目の短編集のタイトル「怪盗紳士ルパン(1)」がある。なお、fだけハイフンが付かない「gentleman cambrioleur」である。

この使われ方を見るだけで二つのことが分かる。一つは、bを除いてルパンの発言またはルパンが書いた言葉であること。bの語り手はルパンのスポークスマンだから、ルパン公認といえる。紳士強盗というのはルパンの自称なのである。ルパンが自覚し、他人からも指摘される肩書きには強盗(cambrioleur)や詐欺師(escroc)がある。

もう一つは、使用例が初期の作品に限られていること。内容を考慮に入れるとcは引退宣言、dは復活宣言、fは引退後の話であって、現役を謳っているのはa、b、eしかない。第1次世界大戦より前に書かれた、第1次世界大戦が起こる前の時代ベル・エポックを舞台とした作品である。正確に言うと「虎の牙(11)」は大戦後に加筆出版されたが、fの箇所は大戦前の英訳に存在する。また「昔の」という言葉は詐欺師にしか係っていないが、立場的には引退しているし、元強盗(ex-cambrioleur)とも名乗っている。


「紳士強盗」こそシリーズ前半期のキーワードである。だから作品関係図を作ろうと考えて、第1作から「虎の牙」までを線で結んだ。紳士強盗の誕生から引退まで。盗みは終生やめることは出来なかったが、シリーズ後半では紳士強盗を名乗っていない。


次→怪盗紳士という称号(その2) - その意味

※以上の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※

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