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2007/05/13

「奇岩城」探求(附録5)

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

「奇岩城」探求(附録4)からの続き。講談社版が好きな方には以下読むのを勧めません。


講談社版は当時のフランスのことをろくに調べずに書いている。フランスの地理、当時の服装、学生生活、警察関係等々。私もよく知らないから、さらに誤ったことを書く羽目になるかもしれないので指摘しないけれど、一つだけ。暗号解読のシーン、ロケーションして書いてるのか疑問。あるものを見ていることが前提になっているが、私にはそれはボートルレがいる場所からは見えないのではと思う。暗号の解く順序を変えているのは、そうしたほうが分かりやすいと判断したのであれば構わない。けれどこの部分は堂々巡りの変な説明になっているから、空間を捻じ曲げてまでするに足る内容だとは思えない。


他にも読んでいて違和感がある箇所が多い。名前の使い方一つで人物像は大きく変わるのに、不要な人物にまで名前がついていたり、意味なく名前を呼びかけに使ったり、皆一様に姓+君だったり、全員が常にフルネームで署名していたりいい加減すぎる(ボートルレ父の署名は相当に変。何でこうなったか想像がつくけど)。加えて署名をいちいち引用するからうんざりする。署名を残すというのがルパンの特異性なのに吹き飛んでしまっている。他にもルパンとボートルレの会見シ-ン、節度ある大人が十も年上の人を下の名前で呼ぶなんてありえない。万一あったとしてもプライベートな話で、第三者しかも初対面の少年、かつこれから脅かしつけようという人物の前で使うわけがない。だからこの場面の意味が何なのか理解できない。そこに至るまでの小芝居も理解不能。いろんな意味でこの呼びかけシーンは怖気がする。

少年探偵も少年探偵で、面識のない既婚女性を下の名前で呼ぶなんて失礼だ。それにフランソワは男性名で女性ならフランソワーズだ。原作ではガブリエルという立派な女性名があるのに男名を名乗らされるは、馬鹿で病的なまでに非常識な人間にされるは彼女は改悪の一番の被害者だ。彼女の家族にも仰々しく名前を付けているけど、原作の展開を避けた以上家族に関する情報は一切必要なくなったということを分かっていない。彼女の存在自体必要ない。まるっきり全部分かってない。


最初のハードカバーは児童書として出されたようだけれど、講談社版を最初に読んだ時、ボートルレが約束を破ることにびっくりした。内容を忘れていたから、原作を読んでも驚いたとは思うけど、講談社版はおかしいと思う。読者はボートルレを信用しつつ読むわけだからいきなり、どうだ、ぼくは約束を破りましたという風に書かれても戸惑うだけだし、読者の信頼への裏切りともいえる。そのうえ直前で「ルパンは嘘をつかない」ことを強調している。泥棒のルパンは約束を守るのに、優等生(であるはず)の少年が破る、何で。

原作では読者をボートルレから引き離して、「わたし」のそばに置いている。そうすることで、果たしてボートルレは記事を書き直すだろうか?という部分にクッションを設けている。ポプラ社版は書き直さなかった心情を記事発表の前に置いている。ボートルレを読者の味方にしようと思えばポプラ社版のようにすべきなのだ。約束を破ること、嘘をつくこと、してはいけないことは子供向けならとくに気を配って欲しい。後からいくら書いても見苦しい言い訳にしかならないし、(附録4)で書いたように理解しがたい内容だから訳が分からない。少年の登場シーンからして、この人物はどこか信用できないと思わせるには十分な演出で、それが覆されることがない。


作品だけなら目をつぶることができる。しかしあのあとがきは見過ごせない。自分は悪くないと言わんばかりで醜悪。ああいうことを書く前に改作者も企画者も省みるべきところはあるはず。原作がどうであれこの場合、選ぶほうの選定眼が問われることにも気づいてない。原文が読めない、レファレンスになる本がない、そんな原作を担当するのは気の毒だけど、読まされるほうはもっと堪らない。暗号の解読すら儘ならないのだから。私はあの文章を読んでショックを受けたし、作品内容にも振り回されて散々な思いをした。

ルパンシリーズは著作権保護機関が満了している。ということは誰もが自由に利用できるということだ。でもそれはオリジナルありきであることを忘れてはいけないと思う。パブリック・ドメインこそ、オリジナルとその同一性の保持が課題になる。ルパンシリーズは読んでいて分からないところも多い。10人が10人それを享受する必要はないし、それぞれの楽しみ方で楽しめばいいと思うけど、レファレンスになるような本が欲しいと私は思う。


愚痴おしまい。


前→「奇岩城」探求(附録4)

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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