「奇岩城」探求(その6) 城館の塀
※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※
エギーユの城館が建てられたのは、エギーユの存在を知った人々の目を欺くため。だから、ただ建てるのではなくて、ルイ14世が仕掛けた一つはエギーユ(尖塔)を持つ城館にすること、そして建築様式による年代のごまかし(衛兵が城館が建った時期について誤魔化されていなかったのは、エギーユの謎を知らぬ者に余計な詮索をされたくなかったからとしておく)。でもまだ仕掛けがあるのではと思う。
それは塀(城壁)の高さ。これってトリックじゃないの?と。エギーユに目を向けさせるための装置というか。
エギーユの城館の城壁はかなり高い。高い壁を支えるため控え壁を備えているほどだ。だからボートルレは、城館に近づかず小高い丘に登った。しかしそれでも城壁は高く、ようやく屋根が見えるほどだった。つまり、屋根から上しか見えない、城館の様子を殆ど見ることができないのだ。そして同時に、丘に登ったのは城壁の中を見るためだったことが分かる。
ここで確認としてエギーユ城館が持つフレシュ(尖塔)とクロシュト(小鐘楼、小尖塔)というのは地面に建っているのではなく、建物の上にあるものだと言うことが分かっていないといけない。
そして城館の描写をよく見ると、高い壁(murailles)、ルイ13世様式の屋根(toit)、細い小鐘楼(clochetons)、そして高い尖塔(fleche)のてっぺんへとだんだん空に向かっていく形になっている。これはそのままボートルレの視線の動きをあらわしていると思う。だから意識的に尖塔というのが最後に残る。それを効果的にするため怪しい男を尾行させ、城に近づくまで上を向かせないという周到ぶりである。
→該当箇所の引用は「奇岩城」探求(その4)のa。
この城壁の高さによって城壁の中を見るという行為がエギーユを見るという行為に、父を探すという行為がエギーユを探すという行為にずらされてしまう。しかもそれと気づかぬうちに。単純で原始的だけど、人目を騙すのには十分な仕掛けだ。誰が見てもエギーユだというしるしのために尖塔(エギーユ)を付け、その上で塀は屋根と尖塔しか見えないくらい高くした。そうすれば皆まず屋根を見、その上の尖塔を見る。だから人は尖塔の館だよ、と言われたら納得するし、ボートルレも即座にエギーユ=尖塔と思ってしまったのだ。屋根が赤ければ赤屋根の城館、風見鶏があれば風見鶏の城館となるだろう。それと同じく尖塔があるから尖塔(エギーユ)の城館という単純な命名だったから。
少し脱線するけれど、このエギーユが偽者であったときにボートルレは涙を流してしまう。ボートルレは感じやすいところがあるけれど、決して人目をはばからず泣くような少年ではない。衆目の前で泣くと言う醜態をさらけ出してしまうには、よほどのショックがあったということだ。そのショックというのは自分がとった行動が相手の思う壺、相手に行動を取らされていたからだと悟ったからだと思う。
前→「奇岩城」探求(その5) 城館の様式
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※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※
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