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2007/04/14

不思議な手紙の内容は? - 王妃の首飾り(1-5)

※以下の文章は「王妃の首飾り(1-5)」の内容に触れています。※


ルパンシリーズには史実を基にした「王妃の首飾り」という作品がある。改めて読んだとき、私はあることに非常に驚いたのだけれど、それがなくても謎が解けるにつれ変わっていく雰囲気や、浮かび上がる探偵役の怪人ぶりなど魅力的な一篇である。それに、謎が多くて一筋縄ではいかないところも魅力的。


読んでいて分からないものの一つは「一昨日新聞各紙に掲載された不思議な手紙」とは何かということである。それを考える前に、なぜフロリアニはドルー=スビーズ伯爵家を訪れたかを考えたい。

単純に考えれば伯爵夫妻を嘲るためだろう。「奴隷風首飾り」(ハヤカワ文庫)通常こういう表現するのだろうか。奴隷の首飾り(岩波少年文庫)、囚われの首飾り(創元推理文庫)、束縛の首飾り(新潮文庫)などとも訳されている。偕成社版では首輪状の首飾りとなっていて、否定的意味がない。「奴隷風首飾り」というのは形状的に分かりやすい表現でもあるが、虚栄心でがちがちになっている様を表すものではないか。「偽物にせよ、本物にせよ、首飾りは人に見せびらかすもの、つまり看板だ」この言葉は痛烈だ。

伯爵夫妻は何も変わっていないのだ。追い出した親子の心中など永久に理解できない。ならせめて一矢報いたい。それにせっかくの王妃の首飾り、ただでは返さない。「この男は誰だ」「何のつもりで現れたのだ」「何をするつもりなのか」「首飾りは本当に返ってくるのか」と暫く悶々とさせておきたいと思わないだろうか。


なんでこういうことをつらつら考えたかというと、ハヤカワ文庫では首飾りが「翌日」返されたことになっているから。原文では「4日後」。この短編はある人物が書いていることになっている。その文章というのを“手記”とすると、この手記の5日前に、首飾り事件が解決されるドル=スビーズ伯爵家の昼食会があり、手記の2日前(一昨日)に新聞各社に掲載された手紙がある。そして最後に「4日後」の首飾り返却がある。さらに「4日後」の翌日に「エコー・ド・フランス」の記事というのが存在する。少し分かりやすくするために、この短編の構成を紹介すると、段落が4つに分けられていてる。

A. 過去の首飾り盗難
B. 「5日前」の昼食会前半
C. 「5日前」の昼食会後半
D. 「4日後」の首飾り返却、翌日「エコー・ド・フランス」の記事

ハヤカワ文庫版の「翌日」が単純な誤りでなくば、“手記”の内容をA~Dと捕らえているのじゃないかと思う。とすれば時系列は以下のようになる。
ドルー=スビーズ家の昼食会→(1日後)→首飾り返却→(1日後)→「エコー・ド・フランス」の記事→(1日後)→新聞各紙の手紙→(2日後)→“手記”
これだと“手記”の5日前に昼食会が催されたのだから数の上では辻褄が合う。または、ハヤカワ文庫版では「一昨日の新聞各紙の手紙」を「一昨日の新聞の記事」というように訳しているので、「一昨日の新聞の記事」は「エコー・ド・フランス」の記事を指すと考えているかも知れない。私も最初は「4日後」を昼食会からと考えていて日付があわないと思っていた。


でも、“手記”の内容はABCで、Dの返却話は後日談ではないかと思う。ということで次の時系列になる。
ドルー=スビーズ家の昼食会→(3日後)→新聞各紙の手紙→(2日後)→“手記”→(4日後)→首飾り返却→(1日後)→「エコー・ド・フランス」の記事

「エコー・ド・フランス」の記事は手紙ではなく短信であるし、「エコー・ド・フランス」と名前を出しているからには単独スクープだろう。それを踏まえた「新聞各紙の手紙」だとすると、センセーショナルなのはむしろ記事のほうなので、表現が合わない気がする。結局のところ「新聞各紙の手紙」という内容は不明だけれど、読者が知らないことをあたかも知っているように書いて注意を引くというのはルパンシリーズでしばしば使われる手なので、本当か嘘なのか見極めないといけない。

もう一つ、この“手記”の書き手は誰か? 昼食会の参加者しかありえない。だから、フロリアニだと思う。「アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)」のラストは単行本で加筆されたもので、「王妃の首飾り(1-5)」発表時には伝記作者たる「わたし」はまだ登場していない。このあたり「謎の旅行者(1-4)」と似ている。とするとおのずと「新聞各紙の手紙」の主も見えてくる気がする。

私の現時点での解釈としてはこう。ドルー=スビーズ家の夜会で起こった出来事は、参加者の間で内密にされていたものの、首飾りを盗んだ犯人が分かったらしい、いや盗まれた首飾りが戻ったらしいと虚実入れ混じった噂がじわじわ広がっていたのではないか。そこで新聞各紙に内容をぼかした手紙をだす。その後“手記”を発表し、さらに4日おいて返却する。すごくもったいぶっているとも感じる。それがこの男の手口なんです。


□補足
「奴隷風」という言葉は存在するようだ。
アンダースタンディング・ジュエリー 第1章 歴史背景
http://www.edicom.jp/und1a.html

アン・エスクラヴァージュ en esclavage:
「(奴隷のように)数珠繋ぎになった」の意味。「エスクラヴァージュ」はネックレスの名称で、「アン」は様態を表す前置詞。一般的に3本の長さの違うチェーンをオーヴァル(楕円)かレクタンギュラー(長方形)のメダイヨン(メダル型の装飾円盤)によって3箇所で連結し、フェストゥーン(垂れ綱飾り)状にしたタイプのもの。18世紀後半から北フランスを中心に広まり、結婚に際して夫から妻に贈られた。

□2007/04/15追記
偕成社版では「エコー・ド・フランス」の記事に向けての、何事も同一の目的にそって行わなければならないという文章が丸々抜けている。この文章があるからこそ、私は後日談だと判断したのだけど。


※以上の文章は「王妃の首飾り(1-5)」の内容に触れています。※

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