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2007/02/15

「奇岩城」探求(その4) 城館の概要

※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※


「奇岩城」の中盤に出てくる建物に、シャトー・ド・レギーユ(le chateau de l'Aiguille)と名づけられている城がある。ボートルレがこれがエギーユだと騙されたこの城館はいったいどのような建物だったのだろう。わざわざこの城を設定して罠にかけたということは、作中においてそれなりの価値や意味のあることだと考える。城の名前は針の城、エイギュイユ城館などいろいろ訳語はあるけれど、ここではエギーユの城館とする。

エギーユには尖塔という意味があり、そこから名づけられた城であることは「奇岩城の大嘘」でも述べられている。まず、この城の描写は3箇所ある。

 ボートルレは、(略)まわりの木立のてっぺんと同じくらいの高さの小さな丘の頂上にたどりついた。城壁はそこよりさらに高くそびえていた。それでも、城壁にかこまれた城館の屋根を見わけることができた。ルイ十三世様式の古い屋根で、その上には、ひときわするどく、いちだんと高い尖塔のまわりに、非常にほっそりした鐘楼が何本も、花かごを置いたように配置されていた。(岩波P200-202) …A

月の光がさしこんだので、ほっそりした尖塔のまわりにするどくとがった小鐘楼が並んでいる城館のすがたが見えた。おそらく、針(エギーユ)という名前はこの尖塔のために名付けられたものにちがいない。(岩波P211) …B

この城館がクルーズ川のほとりにあって、エギーユの城館と呼ばれていること、これらがルイ十四世によって建てられ、かように命名されたこと、また、王の特命によって,針(エギーユ)を象る尖塔といくつかの小鐘楼でかざられていること、などを知りました。(岩波P236) …C

Les murailles etaient plus elevees encore. Cependant il discerna le toit du chateau qu'elles ceignaient, un vieux toit Louis XIII que surmontaient des clochetons tres fins disposes en corbeille autour d'une fleche plus aigue et plus haute. …A

Au meme moment, un rayon de lune filtra, et ils apercurent le chateau avec ses clochetons pointus disposes autour de cette fleche effilee a laquelle, sans doute, il devait son nom. …B

Et il apprit coup sur coup en causant avec le vieillard que ce chateau, situe au bord de la Creuse, s'appelait le chateau de l'Aiguille, qu'il avait ete construit et baptise par Louis XIV, et que, sur son ordre expres, il avait ete orne de clochetons et d'une fleche qui figurait l'aiguille. …C


フランス語は分からないので細かいところは抜きにすると、いずれも同じ言葉が用いられている。すなわち複数のクロシュト(clocheton) と1つのフレシュ(fleche)だ。そこでクロシュトとフレシュについて辞書を引いてみる。小学館ロベール仏和大辞典(1988年初版)によると、

fleche
4【建築】(鐘楼、塔などの)尖塔;(アーチの)迫高.

clocheton
【建築】小尖塔:教会の控え壁や小塔などの頂部に置かれる四角錐や八角錐の鐘楼型の建築装飾.


私は建築しかも西洋建築についてはさっぱり知らないので、いろいろと調べてみると、西洋建築には屋根をいろいろと飾り立てる建物があって、ゴチック建築に多いらしいと言うのを知った。私が最初に知ったフレシュ(尖塔)はアミアン大聖堂(ゴチック建築)の尖塔であった。

アミアン大聖堂
http://orion.fken.ise.osaka-sandai.ac.jp/orion/jap/hst/gothic/amiens03.html
建物のほぼ真ん中に垂直に長く伸びている、鋭い物が尖塔である。エギーユ、もしくは針と形容しても頷ける。


エギーユの城館は尖塔(エギーユ)を持つゆえにそう呼ばれるのである。だからボートルレは農婦から城の名前を聞いたとき即座に納得したのだろう。もう一つ注目すべきは場面Aの原文に用いられているaigu(aigue)という言葉。エギーユという言葉は、エギュ(鋭い、先がとがった)という形容詞から派生したと「奇岩城の大嘘」に書いてあった。語源を知らなくともaiguilleと同じ意味仲間の言葉であることは推測がつく。読者は、この尖塔(エギーユ)を意味するフレシュと、エギュ(鋭い)という言葉から、同様にエギーユの城館の語源を知ることができる。だけどこれは架空の城館なので、念のため場面Bにおいて、お察しのとおりこの城館の語源は尖塔にありますよ、と示唆しているわけである。

エギーユが伴っているクロシュトは、clocher(クロシェ=鐘楼)の仲間の言葉なので小さな鐘楼と訳されていることもあるが、必ずしも鐘を有するわけではない。私は鐘が有っても鳴らされるわけがないと思われるので、屋根を飾る小さめの飾りと考える。例えば以下の写真にあるような、屋根の上に生えている小さな塔のことを指す(検索して出てきたものなので年代も様式も適当だが)。
http://www.chambord-archeo.org/page1.htm
http://vialandis.reservit.com/fr/details/hotel_chateau-desclimont_5178.html


前→「奇岩城」探求(その3) サヴォワ地方
次→「奇岩城」探求(その5) 城館の様式

※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※

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