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2006/12/09

モーリス・ルブラン「戯曲アルセーヌ・ルパン」入手のこと

e-hon 本/戯曲アルセーヌ・ルパン/モーリス・ルブラン/著 フランシス・ド・クロワッセ/著 小高美保/訳
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000031813905
図書出版 論創社
http://www.ronso.co.jp/

じっくり読もうと思っていたのに、結局全部読んでしまった。

□作品について
収録されている戯曲は3本。(戯曲というのは舞台の台本形式で書かれたもの。この本に収録されているうち2本は実際に上演されている)

  • 戯曲アルセーヌ・ルパン P1-213
  • アルセーヌ・ルパンの帰還 P251-322
  • アルセーヌ・ルパンの冒険 P322-358

前2つはフランシス・ド・クロワセと共作で、3つ目だけルブラン単独の執筆。

・戯曲アルセーヌ・ルパン
グルネイ=マルタンの屋敷からランバル王女の王冠を盗む話。「ルパンの冒険」や「リュパンの冒険」として翻訳されている作品の元の戯曲。戯曲の登場人物は過去にまとめたことがある。
戯曲版「ルパンの冒険」の登場人物

小説では変えられている部分もある。小説にある嫌いなシーンがなかったので良かった。戯曲のソニアは嫌いじゃない。

・アルセーヌ・ルパンの帰還
ジョルジュ・シャンドン=ジェロ家の昼食で、ルパンが新聞に出した手紙からルパンはいるかいないかの話しになって…という話。昼食に招かれた人がたくさん出てくるのでメモを取りながら読むのもいいかも。でもあまりオチらしきオチはないです。事件が終わる前に終わっているとも取れる。

この作品には「戯曲アルセーヌ・ルパン」に出てくるソニアとジェルメーヌという同じ名前の女性2人が出てきます。これが“ソニアとジェルメーヌ”なら、小説「リュパンの冒険」の2人は別人だと思ったのです。こういう舞台は楽しく見れないとね。「戯曲アルセーヌ・ルパン」の前に書かれたものらしいけれど、内容からも「奇岩城」の前にかかれたものだと思った。

・アルセーヌ・ルパンの冒険
本邦初訳。彫刻家ダンブルバルの屋敷からエメラルドの首飾りを盗む話。終始ドタバタ劇という感じがして3つの中ではちょっと落ちる。でも場面や状況設定が緻密で、想像すると楽しい。言葉遊びもいっぱいありそうだけど分からない。

なんというか戯曲はルパンシリーズのなかでは“まっとうな盗みの話”だなあと。


□解説について
戯曲3つだけでも十分なボリュームだけど、この本の見所は充実した資料。

  • 「戯曲アルセーヌ・ルパン」校異 P214-249
  • 解説(住田忠久) P359-430
    • 作品解説
    • 舞台のルパン―他作家による劇作の歴史
    • ルパン・ルブランの伝説とその真実
    • アルセーヌ・ルパン・シリーズの歴史
  • アルセーヌ・ルパン・シリーズ出版目録(住田忠久編) P431-490

・「戯曲アルセーヌ・ルパン」校異
1909年の初版と1927年の版で違う箇所をまとめたもの。長々としたセリフが削られていたり、動作が追加されていたり、場面のオチがちがうものもあったり面白い。

・解説
収録作品の解題から始まって、翻訳史など、怒涛のごとく綴られている。ルパンものが宝塚など過去に日本で舞台化されたことも触れられている。邦訳書に使用されたフランス語テキストのこととか、ルパンやルブランの伝説に関する誤りなども訂正されている。自分的にはプロヴァンス号はやっぱりプロヴァンス号だったとか、1906年3月号の「奇岩城」の予告のことが興味深かった。予告ページは確認していたけど、何月号か正確なところを調べようと思いつつ先延ばしにしていたので。最初からルパンで書くつもりだったのかそうでなかったのかはともかく2作目から意識して書いていたのだろうと思う。

訳本によって違いがあるのは底本の違いだとどこかで読んでいたけれど、どこか理解してなかった。リオン・ドールのくだりは、邦訳書の多くにはない。じゃあそれらが参照した底本にはなくて、保篠訳はより古いテキストを参照していたから含まれていたのか。ちなみに初出の「ジュ・セ・トゥ」には有る。他にも多分違うことがあるのだろう。元のテキストを知らないのではっきりしたことは言えないけど、この文章があるならここは削っちゃダメだろうというのが欠けてたりするから、無茶をする。こういう無茶は今でもあったりするが。例はぜんぜん違うけど「鉄人28号」も単行本はかなり無謀な目にあっている。

ルパンシリーズがどのように発表されたかを年を追って紹介されていてそれ自体も興味深いのだが何よりサプライズなのが未発表の作品がまだあるということである。しかも「アルセーヌ・ルパン最後の愛」と題された作品は長編らしく、読者の出刃亀根性をくすぐるような情報が盛り込まれているようだ。読みたい!

・アルセーヌ・ルパン・シリーズ出版目録
アルセーヌ・ルパンシリーズ全作品について、初出や刊行情報の詳細な目録。未発表作品もあり。

解説も出版目録も殆どの情報がルブラン生前の頃までなので、その後の情報も知りたい。実在の事件がモデルとなっているというアンベール夫人は知っているけれど、黒真珠のモデルは何かとかも気になる。ぜひぜひ公表して欲しい。出版界がアルセーヌ・ルパンに冷たいというのはうすうす感じる。Webで徘徊しているだけで過去にぽしゃった企画2件見つけたことがある。それでも私、ルパンシリーズは恵まれていると思う。…不幸だけどね。

古い作品が朽ちていくのは仕方がないとは思う。でもアルセーヌ・ルパンシリーズはまだちゃんと紹介されていない魅力があると思う。どこの何とはいわないがイメージ先行でガタガタの紹介をするのはやめて欲しい。結果的に興味を持ってくれるはずの人の読む気をなくする(私も危うく読む気が失せるところだった)。中学生以降図書館で見かけるのはほぼ偕成社アルセーヌ=ルパン全集だったけど、30冊という冊数を目の前にしてどれをどう読んでいいのか良く分からない部分があった(実は順番に読めばよかったんだけど)。そのときに案内書のようなものがあれば私の読書暦も少しは違っただろうか。

ちょうどよい折なので、解説で紹介されていない舞台に関する情報を投稿しておこう。


□2006/12/12更新

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