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2006/08/07

「奇巌城」逢坂剛

講談社文庫、2004年8月初版
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2748436
ボートルレの一人称視点で改作した作品。

この作品はもとは「痛快・世界の冒険文学」シリーズの一冊として刊行された。そのあとがきを読んだけど、良くなかった(講談社文庫の解説はこのハードカバー版のあとがきを踏襲している)。読者が分かりやすいように辻褄合わせを変えたので、結果原作とは違う形になったという事実は書いていいけど、あとがきでネガティブな書き方をする必要は無かった。それを載せてしまうことは子供たちに読書に慣れ親しんでもらうという意図(多分)にそぐわないのではないだろうか。企画者・編集者にもう少し考えて欲しかった。映画化や漫画化の際でも、あとがき等で原作を軽んじる発言をするのは反則だし、児童書でそれをやる意味は更にない。

おそらく逢坂氏は原作を正確には理解できていない。企画した人は子供時代に読んだからと思ったかもしれないけれど、「奇巌城」の原作を正確に理解することは案外難しい。フランス語の知識がないと理解できない点があるし、ルパンシリーズの他の作品に比べても癖のある作品じゃないかと思う。そういう点でも企画ミスだ。暗号自体がフランス語を利用しているのだから、フォローが必要だということは企画時に調査しておくべきだった。


作品内容についてはところどころ南洋一郎版を参考にしている節があるけれど、あれは完全に日本の子供が分かるように作り直しているので、参考にするのは良くない。どうせならまえがきを使ってまでその世界に入り込めるようにしている手腕も見習って欲しかったよ。(ハードカバー版のあとがきに新潮文庫堀口大学訳の名前が挙がっているけれど、その他に最低限偕成社長島良三訳、ポプラ社南洋一郎訳を読んでいると思う)

いくら論理が合わないからといって原作者が仕掛けた趣向は尊重すべきだと思う。荒唐無稽の設定だからこそ雰囲気作りが重要なのに。何気なく書いてあることにも設定や意味がある可能性があるのに、それを意味なく変更して満足することこそ苦笑ものだ。だけどこの小説は何かというのが捉えられていない。残す必要のあるもの、重要でないものの選別が出来なかったからイベントの枠を残すしかなかった。イベントをこなしていくという見かけ上は同じように見えても、中は原作とは別物となり、登場人物は駒と化してしまう。その作業は改作者にとって面白くなかっただろうし、何のよいことも無かったと思う。だからそれがあとがきに(作品にも)出てしまったのだろう。だからあとがきや解説を飲んでしまったのは失敗だった。一度刷り込まれてしまうと払拭するのは難しいからこうやって足掻いてるわけで…。改作するほどなのだから中味が分かってると思ってしまうよ普通は。

逢坂版は読みやすいし、面白いという意見はそれでいい。けれど、原作の魅力が削ぎ落とされてしまっていることも確か。


□関連記事
「奇巌城」逢坂剛感想
レイモンドはなぜ発砲したか? - 奇岩城(4)
…説得力がないと言っている時点で、この原作と感性が合わないと言ってるようなものなのに。理解できないヒロインを遠ざけるように改作したとしか思えない。
宿屋の屋号と言えば? - 奇岩城(4)
…逢坂版ではこのシーンの前後を含めかなり手が加えられている(宿屋の名前も変わっている)。

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