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2006/08/03

レイモンドはなぜ発砲したか? - 奇岩城(4)

「奇岩城」はレイモンドが怪しい物音に気づいたことから物語が始まっている。人が襲われている音を聞きつけて階下に走ったレイモンドは不審な男を発見しる。その男が立ち去った後には倒れた2人の男。目の前に死体と気絶した伯爵と、悠々と立ち去った男がいて、伯爵はダヴァルが刺されたと証言した。その状況で直感的に去った男が刺したと考えても当然だ。伯爵が自分の部下を理由もなく刺すはずがないのだから。だからレイモンドは銃に走ったのだ。敵を討つというよりも、とにかく殺人犯を捕まえなければ、という気持ちで。

もし、強盗だけで済んでいれば、怪我人の手当てをし盗まれたものを調査し戸締りを確認し、命は助かったことに安堵していただろう。つまり、強盗だったら発砲していない。強盗は犯罪者だけど素朴な貴族や女性なら荒事は好まず、警察沙汰にもしたくなかったはずだ。現に伯爵はあとで警察に黙って盗品を買い戻そうとしたのだから。

この発砲動機は文章として明記されているわけではないけれど、重要な点だ。なぜなら後になって刺した男が別にいることが分かってしまうからだ。とすると人違いで男性に大怪我を負わせたことになり、そんな女性の名誉にかかわることは配慮して書く、それがルパンシリーズだと思う。この作品はかの怪盗紳士(紳士強盗)はどんな体格をしているか?という命題に、当の主人公と同じくちょっと捻くれた方法で解を与えている。そのためにも冒頭の女性2人の心理は直接に描写していない。このあたりかなり腐心して書いていると思う。

レイモンドは追いかけた先で発見する。犯罪者を。でも人殺しはしていない…なら自分が撃たなければ無事逃げおおせていたはずの人間を。その状況でどういう態度を取るだろうか。人違いということに対する動揺もあったろうし、怪我をしたことに対する同情もあったろう。


ここからは逢坂版「奇巌城」の話になる。逢坂氏の読みがそのまま作品に反映されていると考えるのは早急だと思うけれど、作品を見ても、後書きを見ても、この事情がわかっていないのではないかと思う。レイモンドが犯人を助けた理由に説得力がないというのは、相手を強盗だから発砲したと考えたのではないだろうか?

逢坂版「奇巌城」ではレイモンドが不審者を見つけるといつのまにか姿を消して拳銃を取りに走っている。でも、逃げた男が何をしたか分かっていたのだろうか。翌日警察が調査して盗んだものが発見できないのだから、見ただけでは盗んだか分からなかったはずだし、いざ捕まえて盗まれたものがリボンの切れ端や鍵穴の蓋だったら? 何か荷物を持ち出したのは目撃しているけれど、それが何の価値もない模写絵だったら? その場合相手を負傷させる必要があっただろうか? 相手は怪我を負っていても反撃を加えてくるかもしれないのに、近づく危険を犯してまで追いかける必要はあっただろうか? 私には逢坂版のレイモンドの動機が分からないので、相手が何者か、何をしたか見極めずに追いかけることは軽率と言うよりさらに愚かしい行為だと思う。

また、より満足が行くとして変えた結果の理由は自己中心的な匂いがして受け入れがたいかったけれど(原作より先に読んだのに関わらず)、最も受け入れがたいのはその理由を新聞で発表したことだ。かの令嬢は犯罪者を愛してその逃亡を助けましたと新聞発表することは女性の名誉を傷つける行為で、それをボートルレやルパンが行うとは思えない。

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