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2006/07/29

宿屋の屋号と言えば? - 奇岩城(4)

※以下の文章は「奇岩城(4)」のネタバレを含みます。※


「奇岩城」で父がルパンの一味にさらわれてしまったことを知ったボートルレがシェルブールに赴き、父の部屋に残されていた写真を見て、これを通行証代わりに父を連れ去ったのだと推理する場面で一つ分からない点があった。それの意味が分かったので紹介する。引用はハヤカワ文庫平岡敦訳。

写真を裏返すと、なるほどボートルレ自身の筆跡で、R・ド・ヴァル、三-四、リオンとメモがしてある。 ……A

ボートルレはこの父の部屋から見つかった写真を見つめて黙り込み、しばらくして

町から四キロほどのところに、<金の獅子亭(リオン・ドール)>という名前の宿屋はありませんか? ……B

と切り出し、ヴァローニュ街道であることも見抜く。というシーン。ボートルレが悟ったサインの意味は次の通り。

あれはヴァローニュ街道、三キロ四百メートル、<金の獅子亭(リオン・ドール)>という意味だったんです。 ……C

原文(フランス語)では次の通り

A:R. de Val - 3-4 - Lion.
B:Est-ce qu'il existe, a une petite lieue en dehors de la ville, une auberge du Lion d'Or?
C:Route de Valognes, 3 km 400, auberge du Lion.


ヴァローニュ街道、3.4キロというのは分かる。でもなぜ宿屋で、<金の獅子亭(リオン・ドール)>なのか? 作中には書いていない。それで調べていてこれはシャレ言葉によるものだということが分かった。

So-net blogGALIMATIAS言葉遊びその3
http://blog.so-net.ne.jp/galimatias/2005-01-11

Calembour(洒落)
同音異義語や意味をたくさんもつ単語、全体としては似たような発音になるものかける遊びです。洒落ですね。たとえば「Lion d'or(金獅子)」という宿泊施設をよくみかけますが、ほとんど同じ発音で「Au lit on dort(ベッドで人は眠る)」とも理解できます。

音数をあわせるならオ・リオン・ドールで
 Au Lion d'or:“金獅子”で
 Au lit on dort:ベッドで眠る
となるのだろう。

そういう訳だったかとすっきりした。「奇岩城」は探偵役はいてもその推理と読者とをつなぐ解説役が不在なので、しばしばこういう推理の説明が省かれてる。でもシャレに慣れたフランス人なら、「街道沿い」と「リオン」というキーワードから「宿屋(旅館)」「リオン・ドール」を導いたのだと言うことが説明されなくとも分かるわけなのだ(旅人は街道を行き来するから街道沿いに宿屋が集まる)。少なくとも作者はそれを要求している。

でも私は何度読んでも分からなくて、建物の名前にリオンがつくならリオン・ドールがよく使われるとか、宿屋と言えばリオン・ドールとかそういう法則があるのかと思っていた(そうでないと辻褄が合わないから)。フローベールの「ボヴァリー夫人」にも「金獅子」という旅館が出てくるので、関係があるのかと一時思ったりもした(余談ながら「ボヴァリー夫人」には「つばめ」という名前の乗り物も出てくる。こちらは馬車で、ルパンシリーズでは船だけど)。フランス語でリオン・ドールを検索するとホテルの名前がいっぱい引っかかるのも伝統ということで納得。

なお、このリオン・ドールの下りは創元推理文庫、新潮文庫、集英社文庫にはなく、日本人には理解できないため省略されたと考えられる。偕成社文庫、岩波少年文庫では3-4が「4・3」となっていて、4.3キロと解釈している。これはフロベルヴァルが4月3日(3 avril)と誤解することを分かりやすくするためだと思うけれど、ハヤカワ文庫で初めて正しく翻訳されたことになる。


誰の文章でもそうだけれど、「知ってて当然のこと」の説明がないのは当たり前にあります。ルブランは職業作家なので「読者が知ってて当然のこと」のラインを考えて意図的に説明を省いていると考えられます。でも日本語オンリーの日本人にゃあそんなん分かるか!!な世界です。想定外なのでしょうがないですね(悲しい)。

□2006/09/25追記
新学社文庫の保篠龍緒訳ではリオン・ドールの箇所がちゃんと訳されていました。さすがはルパンの紹介者ですね。

□2006/12/17追記
このシーンの有無は翻訳における底本のちがいらしい。


※以上の文章は「奇岩城(4)」のネタバレを含みます。※

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