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2006/06/26

「奇岩城」平岡敦訳

ハヤカワ文庫、2006年5月初版、解説:長谷部史親
奇岩城 ハヤカワ・オンライン
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/431203.html

去年から「奇岩城」については翻訳翻案含めて10数回は読んでいるのに、読んでいくとこういう表現あったかな?と感じる箇所があって、原文や他の訳で確認してみると今までの自分の読みが足りなかった面もあるし、ハヤカワ版が日本語の文章としてこなれている面もあるのが分かる。他の役と比べても読解しやすいのではないだろうか。

そうやってすいすい読んでいたら「夕闇の屍衣が~」という下りで一気にゆり戻されてしまった。一気に感情が流れ込んできたというか…やっぱり愚かしくて人間的なルパンが好き。このときショルメスは利き手じゃない左手で銃を持っているので、とっさに引き金を止められたかと言うと難しいかも知れない。その少し前のところなぜショルメスが目をそらしてしまったと言うところは岩波少年文庫版より意味がとりやすくなっていた。ここを読む限りショルメスはルパンの本当の正体を知っているようだ。


ところで偕成社文庫版「奇岩城」をふと確かめてみたらこの箇所ショルメス、悪者じゃん!っていう書き方でショックだった。ルパンから目を離すべきじゃなかったのに、ついレイモンドを見てしまった。だけど、悪意を持ってとか意地悪く見たとか少なくとも自分の持っているフランス語の原文にはそういうニュアンスがない。

偕成社文庫は完訳と謳っているけれど時々疑わしいところがあるみたいで、「カリオストロ伯爵夫人」の前書きには「モーリス・ルブラン」と署名がある。これを見たときショックだった。一般に前書きは著者が恩ある人物に献辞を送ったり現実との結びつきが強い場合もあるけれど、ルパンシリーズはルパンが面白がって出張する場所(「カリオストロの復讐」)なので、前書きは作中と結びつきが強く、あくまで「わたし」が書いたものなのだ。再読したときに原作では「わたし」はルブランだと明言していないんだなと思っていたのに、ここに名前があるということはわたし=ルブランということになってしまう。本屋で原文探して書名がないことを確かめるまで不安だった。多少の誤訳や訳の脱落や解釈の違いがあるのは仕方がないけれど、こういういうのは恣意的な改変というべきでは…。

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