映画「ルパン」:ルパン
映画「ルパン」の見納め行ってきました。最後に見に行ったのは川崎チネチッタだったけど、スクリーンが近くて一番見やすかったかも。おかげでルパンが堪能できた。
アルセーヌ・ルパンは若い。昔読んでたときは大人の人だと思ったと思うけど、いざルパンの年齢に追いついてみると若くて溌剌としてて圧倒されてしまう。ルパンはもろくて泥臭いところもあって、そしていつまでも大人になれない子供のような人だと思う。不幸が訪れてもおまえが悪いんだ。おまえが泥棒なんてやってるからだ、と責めてしまいそうになる。でもあまりに打ちひしがれているので強くは思えず…。そういうルパンが好き。大人になれていたら泥棒なんてやっていないし、あれだけの活躍が出来ないもん。
怪盗紳士といわれるのは貴族のたしなみを持つからじゃなくて、お説教泥棒?とかそういう変わった泥棒を賞賛する形容詞なんだと思う。ルパンは庶民でずっと貧しく育った。その中でも己を失わない自尊心や気品ををもって生きてたからこそ完全に悪に染まりきらず紳士的強盗と呼ばれるようになったんだな、と映画を見て原作読んで思った。偕成社をはじめて読んだ頃、それまでのポプラ社と違い悪人のイメージで訳されていてショックだったのは覚えている。でも今は悪の面を内包しているところや、泥棒であることから抜け出せないルパンのほうが興味を惹かれる。
色々思い返していると、映画と原作のルパンへの思い入れが混じってちょっと泣けてしまった。ルパンは馬鹿だ。
映画は原作とは設定が違うんだけど、原作を大切にしていると思う。「カリオストロ伯爵夫人」を読んでみたら今まで気づかなかった点にいろいろ気づいて本当に面白い。原作の再発見をさせてくれたと言う点で高く評価をしている。私の中でルパンの人物像というのは固まっていないけど、この映画がずいぶん影響しそうだ。
映画でもルパンの悲しみがはっきりと伝わってきて、ああ、この近く(ではないけど、同じノルマンディーのはず)で愛の涙を流したんだ、そして…と思うと余計辛かった(愛の涙の下りは岩波版か偕成社版の「奇岩城」でしか読めない。あの結末も悪いのはルパンだと思う)。ルパンを襲う悲しみは、あの土地が影響をしているのかもしれない。映画の中のノルマンディーは常に冷たい風が吹いていた。
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